3
「これはボクのッ!!誰にもあげないッッ」
玩具を取り上げられそうな子供の言葉で、目つきは
親の仇のように吊り上げぎゅうううっとシノを締める。
「っちょ、ロコ・・・」
シノが小さく名を呼ぶ。苦しさからだろう。
「シノはボクだけを見てくれればいいの・・!ボクも
シノだけを見るから・・・」
「話が飛躍すぎだよ・・あとこれ以上痩せたら僕、布になる」
手慣れた感じで腕をてしてし叩く。これが彼らにとっての
通常運転なのか。そうなのか。
「それでドレイクさん、仕事の流れを聞きたいんだが・・」
足が宙に浮いている抱っこ状態で尋ねる。
「あ、あぁ、そうだな。えぇと、大まかな仕事は寿命間近の
人間のお迎えとまだ死期が遠い奴の死の回避。
あとは、点数がゼロになった奴の始末、だな」
「向こうと全く同じだね」
「うむ。ちなみに二人の成績はどんなんなんだ?」
「成績?あ、この紙のこと?」
ポケットに小さく折り畳まれた長方形のそれを差し出す。
「お、用意周到だな。えーと・・・・う?」
ぺらり、B5サイズの二枚の紙に目を通す。
そこに書かれた評価に疑問の声を上げる。
この評価表は人間の学校という機関と似た5段階表示。
S・A・B・C・Dランクで付けられる。
無論、右に行くごとに低ランクで悪いという意味だ。
シノの評価欄は空欄が殆どで、辛うじて評価してある欄が
SとDしかないという極端振りだ。
しかもその欄は『始末』が全てS。『説得』がDである。
ロコに至っては全部空欄といういっそ清清しいほどだ。
「シノにロコ・・・もしかして最近死んだのか?」
それならばこの真っ白さには納得できる。
「・・・死んでから9年は経ったと思うけど・・・?」
「ボクは8年位経ってるけど」
「・・・・・・・・・・・・!?」
いや、おかしい。おかしいおかしいおかしい。
だったらこの白紙具合は何なんだ。サボりすぎ・極端すぎ・
似すぎだろう。しかもロコ、シノより下、シヅキと2年差(シヅキのが上)だと。
「これは・・・色んな意味ですげぇなぁ・・」
これには死神歴何百年のドレイクも苦笑するしかない。
ここまで両極端な奴らは今まで見たことない。
「とりあえず、二人の実力を見たいからオレらと一緒の区画に
きてくれ」
「了承」
「シノが行くならボクも行くよ」
「じゃ、アイテム保管庫に案内するよ」
シヅキが手招きする。その間にドレイクが今日のスケジュールを
他の者に配る。
「おー、ドレイク。今から下りるのか」
上官が紫煙を吐きつつ訊いた。
「あ、はい」
「・・・気を付けろよ?特にあのちっこい方」
「シノですか?」
「あぁ。ちょいと・・・いや、かなり訳アリでな」
「え、まさか・・・この評価に関係が・・?」
上官がこくりと頷いた。神妙な顔で。
「詳しくは知らねぇが今までの配属先でもその評価だ。
そのせいで他の機関でたらい回しに転属させられてる」
「うぅん・・・少し気になりますね」
「後で、奴らのプロフィールを渡しておく。まぁ、注意を
払ってくれ」
「分かりました。あ、そろそろ時間なので行きますね」
「おぅ。行って来い」
軽く会釈してその場を後にした。