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私達、『パーティ鷺宮』です。番外編  作者: ai-emu
ケイコの奴隷日記
4/13

奴隷としての日々③

〇月〇日

奴隷にされて何か月過ぎたのだろう。季節は移り変わり、冬から春、そして夏に変わっていた。子の屋敷で奴隷として働くようになってから、日課になってしまった、ヘドロの池へのダイブ。私と一緒にヘドロの池に落とされていた彼女は、今はここにはいない。彼女は、度重なる逃亡行為を行い、そのたびに行われる拷問の末、一月ほど前に死んでしまった。

彼女が逃げ出す度、ケイコたち奴隷は、連帯責任を取らされる。足枷の鎖の長さがさらに短くなり、今では10センチほどの長さしかなく、普通に歩くのも困難を極めていた。監視をする男は、よちよち歩きをするケイコの背中をわざと押して転倒させて弄ぶ。また手枷の鎖も短くされ、肩幅まで広げれた腕が、今では首輪と繋がっている場所を起点に、15センチほどしか動かすことが出来ない。転倒する際は、顔を防御することも出来ない。

また毎日の日課になっているヘドロの池へのダイブは、男が足枷の鎖を持ち、回転するように投げ入れられる。遠心力のついた体は、空中で何回も回転し、ヘドロの中に沈んでいく。頭から逆さにヘドロの中に入った時は、脱出するだけでも体力を使う。粘り気のあるヘドロの中で、態勢を下向きから上向きにするのだ。

何とかヘドロの中から顔を出した後、今度は岸までたどり着くのにも体力を使う。足枷の鎖が10センチしかないため、ヘドロの中で小刻みに歩くしかない。何度もヘドロに足を取られ、そのたびにヘドロの中に沈んでいく。

やっと岸にたどり着いても、今度は岸に上がるのにも重労働を強いられる。水深が1メートルほどあるのだ。そこをほとんど動かすことが出来ない腕でよじ登リ転がるように岸に這い上がるのだ。男に意地悪をされて、再びヘドロの中に投げ入れられることもある。

今では、体や服にこびりついたヘドロを落とすことが出来ないでいる。それは、手枷から延びる鎖が直に首輪に繋がれ動く範囲が上下左右10センチほどしかなく、体中に着いたヘドロを取り去ることが出来ないからだ。

私は相も変わらず、ヘドロでどす黒く汚れ、ぼろ切れ同然に成り果てたセーラー服を着ている。それも冬服だったものだ。さすがに真夏の炎天下の下、この服装で仕事をするのはきつい。しかし、奴隷に落とされた私にとって、唯一の持ち物であり、また、唯一の服でもあった。

さらに追い打ちをかけたのが、連日行われるヘドロの池へのダイブ。ヘドロの中を歩き、そのから上がる際、スカートがヘドロに引っ張られて破けてしまったのだ。岸に上がった時、私のスカートは、ベルト部分を腰に申し訳程度に残して、すべてヘドロの中に消えていった。セーラー服も、中に入り込んだヘドロの重さに耐えきれずに、所々破けてしまっている。

暫くは、セーラー服の上着と下着だけだったのが、とうとう下着も、ヘドロの重さで破れてしまい、今では、上部のゴムで腰にへばりついている。ブラジャーはさすがに原形を留めているが、ヘドロの重さでずれてしまってからは、直すことが出来ずそのまま放置されている。私の姿は、セーラー服だったどす黒く汚れたぼろ切れを纏い、下半身があらわになっている。手枷に繋がる鎖が、首輪に直接つながれ、さらに10センチほどしか動かすことが出来ない腕では、露出した下半身を隠すことが出来ない。

毎日行われる重労働のため既に日付の感覚はなく、1日1回の残飯を食べることも苦にならなくなっていた。毎日ヘドロの池に落とされるのも、すでに日課のようになっていた。そのため、私の体は異臭を放ち、着ている服は、他の奴隷よりも真っ黒に変色していた。下着もセーラー服だった服も、既に異臭を放つぼろ布同然と化しており、黒く艶のあった髪の毛は、ぼさぼさになって煤けてしまっていた。

さらにケイコにとっては、過酷ともいえる季節が訪れようとしていた。そう、夏の到来である。

ケイコがテラフォーリアに来た時、日本は冬だった。当然制服は冬服であり、制服は厚い生地で仕立てられている。しかし、体を拘束する枷は、すべてリベットで鉸められ取り外すことが出来ない。必然、服を着替えることが事実上不可能なケイコにとって、冬服を着たまま夏を迎えるのは過酷というほかなかった。さらにその服は、ヘドロによってどす黒く変色し、異臭を放っていた。

〇月〇日

今日は、昨日の夕方から雨が降っており、夜半過ぎには土砂降りになっていた。雨のため、鉄格子の中は泥の沼状態になり、ケイコたち奴隷は、泥水の中に体を沈めて寝ていた。雨の中でも、私の朝の日課であるヘドロ池へのダイブは行われている。雨の日にヘドロの中に入るのは悲惨だ。いつも以上にヘドロがぬかるみ、ヘドロの中でも足を滑らしてしまう。

さらに追い打ちをかけるのが、鉄格子の中の水はけが悪く、連日の雨で中は、田んぼのような状態になっていたのだ。体を泥の中に沈めて眠っていれば、突然の土砂降りで泥の池に変わり、ぼろ切れ同然に成り果てた制服の隙間から、泥水が侵入し体中を泥だらけにする。

〇月〇日

それでも過酷な毎日は否応なしにやってくる。いつものように、鉄格子を叩く音で目が覚め、仕事場へと向かう。体に付けられた枷のため、着替えることもできない。ついでに言うと、風呂など奴隷にされてから1度たりとも入ったことがなく、泥と汗と垢は、体中にこびりついていた。そうしてケイコは、日課になったヘドロの池に今日も落とされていった。

ケイコは、玄関のタイル磨きから、トイレ掃除へと仕事場を変えられていた。トイレ掃除もまた過酷を極めていた。屋敷中のトイレを一人で掃除しなければいけないのだ。10センチしかない短い鎖のついた手枷足枷は、掃除をするだけでも重労働にさせた。掃除道具は、雑巾一枚のみ。雑巾は、床を磨く時以外は使ってはいけないため、便器を掃除する時は、直接手に洗剤を付けて磨くしかない。手枷の鎖が首輪に直についており、腕の動かせる範囲が狭いため便器を掃除する時は、床に正座をして、便器の中に顔を埋めて磨くことになる。最後に水で洗い流すのだが、手桶に水を汲むのも一苦労である。

胸の上手桶をもって、手洗い用の蛇口まで行く。蛇口の下に手桶を置き蛇口を捻る。そこまでは簡単なのだ。水の張った手桶を蛇口の下から取り出す時、どうしても零れてしまう。零れずに持ち上げれても、今度は便器の場所まで持っていくのが大変なのだ。足枷により、歩幅が10センチしかなく、よちよち歩きで歩く。水の張った手桶は、ほぼ首の下あたりで不安定な形で持っている。それは首輪から延びる鎖が左右10センチしかなく、その先に手枷がつけられているからだ。

ここで嫌がらせを受けることがある。男がわざと足を出して転倒させるのだ。避けることも出来ずに転倒し、せっかく持ってきた水を床にぶちまける。そうなれば、また1からやり直さなくてはいけない。

食事をする際も、残飯の入った盥に顔を埋めて、動物のように直に口をつけて食べるようになった。手を使うのは、残飯を口の近くにかき集める時だけだ。

そうしてさらに月日が過ぎていった。

9月30日

その日の朝は、少し様子が違っていた。ケイコを監視している男の気まぐれで、朝早く牢を出されたケイコは、男に連れられて町の市場まで来ていた。毎日ヘドロの池に落とされ、全身から異臭の放つケイコ。身に纏っているぼろ布は、セーラー服だったものだが、全体的にどす黒く変色しており、異臭を放っていた。傍から見れば、どこかの浮浪者のような風貌だが、浮浪者と違っていたのは、躰に付けられた枷だろう。裸足で歩く足には、10センチほどの鎖が付いた足枷がはめられている。歩幅が10センチしかなく、よちよち歩きをし足がもつれるたびに転倒している。首輪からは、両手にはめれれた手枷に鎖が伸びていた。さらに長い鎖を首輪に付けて、男が鎖の端を持ち、ケイコをせかしながら市場に向かっていた。手枷に付けられた鎖は、左右10センチほどしかなく、手枷に固定された手首は常に、首と胸の真ん中あたりでぶらぶらと揺れている。

男は、ケイコの首輪から延びる鎖を、市場の入り口付近にある柱にからげて南京錠で固定した。ケイコをその場で正座させると男は、中に入っていき買い物を始めた。ケイコは、荷物持ちとして連れて来られたのだ。男が戻ってくるまでこの場から動くことが出来ない。

ケイコはふと周りを見渡して、懐かしい顔を見つけた。ヒカリの姿を確認すると、ケイコはいてもたってもいられなくなった。ケイコはその場で立ち上がると、ヒカリに声をかけた。

「もしかして、今宮さんではありませんか?」

その声にヒカリが後ろを振り向いた。ヒカリの視線の先には、どす黒く汚れた服を着たケイコが、手枷足枷を付けられて立っていた。

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