表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

ヒカリとサトミの誕生日事情

12月、1年と言うのは早く過ぎ去っていくものだ。今月は我らが鷺宮家のお母さん、サトミさんの誕生日がある月だ。智美さんの誕生日は、ダーカルの住民をすべて巻き込み、豪華絢爛にやらせていただきました。てへっ!

2日間にわたって行われた幸巳さんの誕生日イベント。1日目は、ダーカル近郊の別荘で行われた。別荘の時は、家族だけの普通?のパーティーを開きました。鷺宮家の関係者だけで行ったので、普通と言えば普通だろう。2日目は、別荘からダーカルへと船で移動したのですが、その船にお金をかけてしまいました。

外装も内装も豪華絢爛、所謂『御座船』とでも言いましょうか。総黒漆塗りの船体には、所々に金細工を施しています。全長10メートル、全幅2メートル、龍神をイメージした形状の船体の上に乗っかる建物は、柱と梁にすべてに金箔を張り、数少ない壁は、白漆喰塗り。屋根は入母屋造りの純和風。朱色に塗ったヒノキの瓦が隙間なく葺かれている。柱の間には、幾重にも重ねた薄いシルク製のカーテンが引かれています。部屋の中は、テーブルを囲むように、コの字型に配置された革張りの椅子が設置されている。これを見た時、さすがにサトミさんは顔面をヒクヒクさせて引いていた。こんなんでおどいていては困るんですけど。

ダーカルには、『水の大神殿』がある。つまり、『水の神子』であるサトミさんのお膝元。私がカランで一番大事にされているように、ここダーカルでは、サトミさんが誰よりも大事にされている。私が、「12月10日はサトミさんの誕生日です。ダーカルで誕生日会をしたいので協力してください」と伝えたところ、ダーカルの町総出で祝ってくれることになりました。カランもそうですけど、皆さんノリがすごくいいですね。きっと他の町でもそうなんだろう。たかが龍神の神子1人の誕生日に、そこまでしなくてもいいと、さすがの私でも少し引いてしまいました。

「ヒカリちゃん、何なの、この船は?」

「水の神子様が、ダーカルの『水の大神殿』にお渡りになるから、頑張って作ってみました。今までなかったでしょ。これからサトミさんが、ここダーカルの水の大神殿で神事を行う際に、利用してもらえるととても嬉しいです。と言うか、そのための船です。」

「そのための船って、ヒカリちゃん、いくら私でも、こんな船に毎回乗れないわよ。」

「船の構想と製作資金を出したのは私ですが、この船を丹精込めて作ったのは、ダーカルの住民ですよ。その住民の血と汗の結晶を、サトミさんは無下に扱うんですね。」

ヒカリのしょんぼりとした態度に、サトミは、大きなため息を吐き、仕方なく御座船に乗り込んだ。まあ、年に数回乗るだけだ。ヒカリちゃんの言う通り、ダーカルの住民の意向を無下に扱う事は、さすがに出来ない。しかし、それは甘い見解だった。この日の僥倖が、思いの他受けがよく水の神子の”お渡り”を見れなかったダーカル周辺の住民からの要請があり、月3回の神事の際には、必ず御座船に乗らなければいけなくなる。

ダーカルの町に到着したサトミさんは、住民総出で歓待を受ける事になった。一番大きな運河を、ゆったりと進む御座船。高さも考えて作ってあるらしく、干潮時を狙えば、余裕で橋の下を通過することが出来た。

御座船は、ダーカルの中心に建つ『水の大神殿』の前に横付けされた。御座船から降り立つサトミさん。本日の衣装は、超優秀な鷺宮家侍女隊によって、強制的に豪華絢爛の衣装に着替えさせられたモノ。何故か、タキシード姿のお父様に手を引かれて、一度神殿の中に入っていきます。

神殿で簡単な神事を行った後、これまた豪華な馬車に乗り込みます。そのまま訳も分からずに、領主の館までパレードをしていきました。たかが誕生日にパレードをする事になろうとは、さすがのサトミさんでも思ってもみなかったでしょう。この辺は、ダーカルの皆さんにお任せしていたんで、私も、ここまでの演出は、想像の範囲外でしたが…。

領主の館に付いたサトミさんをさらに驚かせたのが、ホールの中央に鎮座している謎の物体だった。2メートル四方の土台に、まるで龍神が水面から天空へと昇る様を形作った氷の彫刻。其処には、34個の皿が龍神の鱗でできたように氷で作られている。その上には、大小34個のホールケーキ。そのすべてのホールケーキには、色とりどりのフルーツでデコレーションされており、どれもおいしそうだ。一際目立つのが、一番上に置かれたケーキだろう。氷の龍神に咥えられた皿には、飴細工が乗っかったデコレーションケーキが鎮座している。飴細工で形作られているのは、掌サイズの小さな小さな水の妖精。サトミに『アクア』と名付けられ、いつも傍らに寄り添う『水龍ウンディーネ』だ。

「ヒカリちゃん。このケーキは何?」

「これですか、もちろんサトミさんのために、頑張って作った誕生日ケーキですよ。今回は、氷細工と飴細工に挑戦してみました。台座の氷像は、サトミさんの守護神である水龍ウンディーネをモチーフにしています。魔法で作った氷なので、ちょっとやそっとでは溶ける事はありません。一番上にあるケーキの飴細工は、アクアちゃんですよ。本人をモデルに、寸分違わず作るのに苦労しました。ちなみにケーキの数は34個、サトミさんの年齢分作りました。」

ニコリと微笑んで、ケーキの説明をするヒカリ。

「最近アクアちゃんの様子が、少し変だと思っていたけど、あれのモデルをやっていたのね。まあいいわ、かわいいアクアちゃんが、飴細工になっているのなら。でも、あれを食べるのは、少し勇気がいるねえ。」

「そんな事はありませんよ。アクアちゃんの形をした飴細工には、アクアちゃん自らが加護を与えているので、カケラでも食べれば、無病息災の元気な体が手に入るらしいです。あれをどうするかは、サトミさん次第ですね。」

ヒカリとサトミの会話を、傍らで聞いていた者たちは、羨望の眼差しで飴細工を見つめた。

「それから、サトミさん、飴細工のアクアちゃんが両手で抱えている青い球があるでしょう。」

サトミは、ヒカリに言われて、飴細工を見ると、確かに両手で大事そうに青い球を抱えているのが解る。

「あの球は、アクアちゃんがと言うか、水龍ウンディーネが、サトミさんのために自身の涙を固めて作った『水龍涙石ウンディーネ・タアラストーン』と言います。アクアちゃんから、サトミさんへの誕生日プレゼントみたいですよ。」

サトミは、右肩に乗っかり頬ずりをしながら、サトミに甘えているアクアに「そうなの?」と聞いた。アクアは、サトミを見上げると、はにかんだ笑顔を振りまき、嬉しそうに頷いた。

「ありがとね、アクアちゃん。

それよりもヒカリちゃんの時は、どんなケーキを作ろうかしら。これと同等の物を作ってあげないと、ヒカリちゃんが恥をかく事になるから、頑張って作るわね。…まあ、とりあえずは、フレアちゃんにも同じものを作ってもらうのは確定として…。」

サトミは、ヒカリの誕生日ケーキの構想を、今から練り始める。こうしてサトミの誕生日は、ダーカルの住民総出によるにぎやかで、豪華絢爛に執り行われた。


サトミの誕生日から4か月後の4月15日。今日は、ヒカリの誕生日である。去年同様、カランの住民が、1人ずつプレゼントを渡していく行事から幕が上がった。何故か知らないが、鷺宮商会の建つ大通りには、城門から光の大神殿まで、びっしりと露店が立ち並び、一種のお祭り状態だ。「たかが私の誕生日名だけなのに、何故お祭り騒ぎになっているのだろう」と、私は、頭を抱えていた。何故か知らないが、私の誕生日は、カランでは休日扱いとなっている。領主を含め、町の住民のノリがいいのも程がある。

私の誕生日パーティーだが、去年と同様、鷺宮家の庭園で行われている。庭の中央にある大きな池を囲むように咲き誇る花を見ながら、立食形式で行われている。そして、きれいな庭園にそぐわない物体が、池の中の小さな島に鎮座していた。そう、言わずと知れた『誕生日ケーキ』だ。

サトミさんの対抗心を掻き立てたのか、あれはケーキではなく、一種の芸術作品と化している。氷でできた御座船の中には、巨大なケーキが鎮座している。ケーキの前には、チョコレートと飴細工でできた等身大の私?と、フレア?が、花で彩られた玉座みたいな椅子に座っていた。御座船の仕返しをまさか、こんな形で行うとは、さすがサトミさん、侮れないデス。

ちなみに私の誕生日と、10日に1回の神事が重なっていまして、大神殿の方では、いつもの神事の他に、私の誕生日を祝う神事が行われた。『私、見世物じゃないんです!』と言いたくなるような内容でした。

ちなみにサトミさんは、御座船に乗る関係で、翌月から、10日に1回の神事が、毎月20~25日の連続5日間に日づけが変更されたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ