屋上で
「どこでこれを!?」僕はすぐに彼女に聞いた。
「放課後に教室を清掃してたの。そしたら、たまたま見つけちゃって・・・。」
「メモの内容は?」続けて聞いた。
「もう読んだわ・・・。それって、犯人についての未確認情報でしょ?本当に高橋君が書いたの?」萩原さんが聞いてきた。
「ああ。これは確かに僕の字だ。証明できる。」僕は自信を持って答えた。
萩原さんはメモを拾い、E組の誰かが事件を本格的に調べている事を知った。字体を見て、書いたのが男子である事も知ったようだ。そして、今日E組の男子である僕が萩原さんを呼び出した。偶然にしてはできすぎているので、萩原さんはすぐに事件について調べている男子が自分の噂を聞いて呼び出した事に気づいた。
僕はある提案を萩原さんにすることにした。
「このメモあげるよ。メモの内容はもう写してあるんだ。」僕はメモを萩原さんに手渡した。
「分かった。じゃあ、もらっておくわね。」萩原さんはメモを受け取った。
「それで、本題に入ろう。」僕は萩原さんを見据えた。萩原さんは授業中のような真剣なまなざしをしている。
「僕と一緒に、この事件を調べてくれないか?」萩原さんが黙っているので、僕は続ける事にする。
「僕はこの数日、白石先生が殺された日から事件について調べている。だけど、どうしても行き詰まっていて、誰かの助けが必要なんだ。萩原さんも、この事件に興味があるんだろう?悪い話じゃないと思うんだけど・・・。」萩原さんは考えているようだ。
「質問しても、いい?」萩原さんが聞いてきた。
「いいよ。」僕は承諾した。
「高橋くんはどうして、この事件を調べているの?」一番肝心な質問だろう。
「僕は、単純に女性を狙った卑劣な犯行が許せないだけだ。」こう答えると、萩原さんが笑ってこう聞いてきた。
「それって、あくまでも建前じゃないの?本当はもっと違う理由でしょ?」
「はははっ。」僕は笑った。
すると、萩原さんは何がおかしいの?という表情で見つめてきたので、僕は正直に答える事にした。
「友達からどういう風に僕の事を聞いたのか知らないけど、僕はこの事件の事をきっかけにして君と親しくなろうとかそういうつもりは一切無い。君が嫌なら、メアドとか電話番号も教えてくれなくていい。だけど、僕の電話番号とケータイ、パソコンのメアドは教えておくよ。不便だからね。連絡したくないならしなければいいだけの事だし。」
僕は、ルーズリーフの端っこに暗記しているケータイの番号とメアド、パソコンのメアドをメモって萩原さんに渡した。萩原さんは渋々受け取った。
「あの・・・。」萩原さんは受け取ったあと、こういった。
「別にそういうつもりがあって言った訳じゃないの。だから、何か分かった事があったらすぐに電話する。」
「ああ。ありがとう。別に登録してもいいよね?」萩原さんは頷いたあと、メモをポケットにしまった。
そして、僕たちは屋上から出ることにした。ドアを閉めると、萩原さんのポケットから鍵が出てきた。僕がどうしたんだ?って聞くと、萩原さんは、
「企業秘密。」とだけ言ってウィンクした。生で見るウインクは初めてだったが、僕の頭は疑問でいっぱいだったからそこまでカワイイとかそういう事は思わなかった。
かっぱらって来たのだろうか?それとも嘘を付いて?いずれにせよ、萩原さんらしく無かった。このとき、パートナーについてもっと深く考える必要があったのかもしれない・・・。
放課後、美術部に行き、萩原さんと会った事を会わせてくれた張本人、三橋に報告した。すると、三橋は聞いてきた。
「んで、萩原さんとはどこまで行ったんだ?」
「何を!?いきなり・・・。」僕は動揺した。
「まさか?動揺してるって事は!?」三橋ははしゃいだ。こいつはこういう話が好きなのだ。
「いやいやいや、そういうつもりで付き合う訳じゃないって言ってるだろ?少なくとも連絡用にメアドとケータイの番号は渡したけど、連絡があるかどうか分からないし。」
「番号とメアド渡せしたのか?意外に進んでるなあ・・・。」三橋が変なので、話を終わらせる事にする。
「とにかく、そういうつもりじゃないって彼女本人にも断ってきたから、お前の期待してるような話は全くないよ。」
「そうなのか・・・。」
その後も三橋と他愛もない話をして盛り上がったが、三橋は萩原さんにどうやって話つけてくれたのか、本当のところは謎のままだった。
家に帰って、着替えをすませ、録画しておいたワイドショーのビデオを見る。内容は被害にあった白石先生を特集したものだった。
白石加世子さんは、享年32歳で独身だったとのこと。東京都在住だが、新潟に転勤になったため、新潟の実家から通勤していた。犯行当日、東京に大事な物を忘れたとのことでいつもより早めに帰宅し、東京に新幹線で戻った。次の日は午後から通勤する、と僕の学校に断りを入れた後、日課である世田谷区でランニングをしていたところを犯行に遭ってしまったようだ。
ふと、僕はある点に気がついた。萩原さんに連絡したいところだが、あいにく彼女の番号を教えてもらっていない。
仕方ない。明日にしよう・・・。
次の日、僕は萩原さんがトイレから出てくるのを待ち伏せした。
「急に悪いんだけど、話したいことがある。他人に聞かれるとまずいんだ。だから、また屋上に行こう。鍵をまた持ってきてくれるかい?」
「ええ。何か大事なことが分かったのね?」
僕は頷いた。
「ああ。とにかく、弁当を持って、屋上に行こう。さも一緒に食事に行くようなふりをしてね。」