第1話 おにいさんがきた
いきなり過去です。現代早く書きたいんですけど、先に過去入れとかないと訳わかんなくなるんで・・・(汗)
これからの話で、タイトルが全部平仮名の場合は大体過去話だと思ってください。
私は、愛を知らないんだろう。
昔、まだ親に甘えっぱなしで許され、人よりも鬼に近かったあの頃。私は両親に捨てられた。
毎日毎日パチンコや競馬に行っていた両親のことは、うっすらとした後姿しか覚えていない。
私が当時のことで覚えているのは、電気を止められ薄暗いままの四畳の殺風景な唯一の部屋と、窓の外を通る白色の新幹線だけだ。
当時、両親は五日に一度くらい食料を置いていくくらいしか家に帰らなかった。それを私は当然のこととして記憶していた。
そのときも既に一週間ほど帰ってこなかったが、まあいつものことだと思っていた。
「邪魔するぞ。」
鍵もかかっていないおんぼろの扉を乱暴に開けて入ってきたおにいさんは、明らかにヤの付く職業の人。幼い私はぼんやりとした頭で両親の犯した罪を考えていた。
「お前ここの家のガキか。」
あの時私はなんと答えたっけ。確か何も言わずに頷くだけだったと思う。
「ふん……つーか汚ぇガキだな。お前何日風呂入ってないんだ。」
風呂。今では日課のように入っているそれすら、私は知らなかった。
「フロってなに。」
「風呂って何かって聞かれても……。おい、父さん母さんは何日帰ってねえんだ。」
「なんにち?」
「あー……父さん母さんが帰ってこなくなってから何回太陽が沈んだ?」
太陽、と言われても、我が家は丁度太陽が当たらない最悪の立地条件で最安の物件だったので、私は太陽を数えるなんて発想はなかった。ただ、太陽が沈むと暗くなるということだけは知っていた。
「じゅっかい暗くなったよ。」
「十日……お前飯は。」
あれ、と指差した先にはカビの生えた菓子パンが一個。そういえば、あれが最後の食料だったんだ。
「……そうか。普段父さんと母さんはどれくらいで帰ってくる?」
「ばくちとかきゃばくらに飽きたら。」
「……。」
今思えば、私はなんという発言をしていたんだろう。どんなに情に厚くない冷血人間でも、こんな放っておいたら衰弱死してそうな子供は見過ごせないだろう。
更に言えば、このおにいさんは実は情に厚い人間であり、子供好きでもあった。
「じゃあ父さんと母さんはしばらく帰ってこねえか。」
確認された事実に、私は悲しいともさびしいとも思わずに頷いた。むしろ、おにいさんの方が悲しそうで苦しそうで、私はとても不思議だった。
しばらくお兄さんは悲しい目で私を見た後、狭い部屋の中を数回うろうろした後、決意したようにして私のほうを向いた。
「おい、お前銭湯とか知ってるか。」
「せんとう。しらない。」
「広いぞー気持ちいいぞー」
「ふーん。」
我ながら感動の少なすぎるガキである。私だったらそこで嫌になる。
「お前着替え……持ってねぇよなぁ……。」
しばらく悩んだおにいさんは、やがて何かを思いついたように立ち上がると、私を置いて家を出て行った。
私はこれを悲しいともさびしいとも思わずに、新幹線を眺める作業に戻った。
『帰ってこない』それは当時の私にとってただの真理であり、特別な感情を抱くに値しないものだった。
それなのに、
「よし、銭湯行くぞ!」
おにいさんは帰ってきた。可愛らしいウサギがプリントされた、おにいさんに世界一似合わないだろう子供服の袋を両手に持って。
こんな暗いガキは嫌だ\(^0^)/
えーと、過去話基本暗いです。何故なら主人公も作者も根暗だから!←
頼みの綱のおにいさんも今はただのチンピラです。