二度と戻らない旅路へ
2008年12月14日
大阪新幹線運転所に俺はいつも通り出勤した。しかし俺がこれから乗務する列車は、もう二度と走らない。
44年間、姿を変えずに走りつづけ、ガキの頃から俺のヒーローでいてくれた0系新幹線。そのヒーローが線路の上を走るのも今日が最後だ。
国鉄時代に3216両も作られた0系も、今日まで残れたのはR61編成、R67編成、R68編成の6両編成3本のたったの18両だけだ。
俺は点呼所で出発点呼を行い、新大阪駅の20番のりばに向かった。
すでにどのホームも最後の0系を一目見ようとする人、カメラに収めようとする鉄道ファン、取材にきたマスコミでごった返していた。やがて0系R61編成のひかり347号が入線し、出発セレモニーが始まった。こだま659号の時同様、運転士、車掌への花束贈呈が行われたのち、運転室に乗り込み、出発準備をすませた。
そしてついに出発の時が来てしまった。駅長の出発合図と共に俺はブレーキを解除し、警笛を鳴らしてマスコンを動かした。
0系の大きな車体がゆっくりと動き始めた。周りから拍手が沸き起こり、ありがとうやさよならの言葉が飛び交う。
14時56分、ついに0系新幹線、ひかり347号は新大阪を出発し、二度と戻らない旅に出た。