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月日は流れ二年半が過ぎようとしていた。
「あと半年ね」
ソフィアはふうっと息を吐いた。公爵家は経営を立て直し黒字になった。
オリバーともいい関係を築けている。仲のいい友達くらいにはになれたと思っている。
レース工房も順調で王都に店を構えるまでになった。貴族女性や裕福な平民の女性に人気が出て売り上げは順調に伸びている。
次期公爵夫人としての名前を使い王妃様から注文もいただいている。王女様のドレスを作りたいと注文をいただいた。シフォンを何枚も重ねた上にボビンレースで襟に飾り付けをするつもりだ。愛らしい三才のお姫様にはピンク色のドレスがお似合いだろう。
一度王城にご挨拶に伺わなくてはと思っている。身分のあるうちが良いだろう。
相談したいと思っているのにこの頃オリバーの帰りが遅い。中々顔を合わせることが少なくなった。
頼りなかった夫も王宮で魔術師になっていた。火と水魔法は国にとって重要な役割を果たす。
規則正しい事務職ではないので仕方がないなと思いつつ、姉のような気持ちで身体は大丈夫かなと心配をしていたが、ヒロインに出会ってしまったのかもしれない。
そろそろそういう時期だった。妻と離婚してヒロインの手を取るのだった。
確か金髪で赤い瞳の美少女が小説の表紙に描かれていた様な気がする。
離婚前に出会って付き合い始め、妻と別れた後で婚約をする。なんだか胸が苦しくなった。
きっと慣れ親しんだ屋敷から去る寂しさだ。義両親も使用人も良い人達だった。
オリバーも失言を謝ってくれた。気が合うことも沢山あった。結構楽しい生活だった。だから…少し辛い様な気がするだけだ。
オリバーにはその旨を書いた手紙を使用人に渡してもらおう。
事後報告でいい。会えないのだから。
ーーー 恋 ーーー 縁がないものだった。
十代前半学院で裏庭で男の子たちが
「地味でも金があるなら結婚してもいいな」
「俺は可愛い感じの女の子が良い。行ってらっしゃいませやお帰りなさいませを大好きな子に言ってもらえたら幸せだ。胸が大きいともっといいな」
と話しているのを偶然通りかかったソフィアは聞いてしまった。
多感な時期の男子の本音は聞いていて嬉しいものではなかった。
急いで引き返したのを今でも覚えている。
声からして同学年の貴族男子たちだったと思う。箱入り娘のソフィアにとってそれは衝撃だった。
「男の子ってくだらない。私は自分の好きなことをして暮らしていくわ」
と思った。
ーーーーなのに政略結婚をする羽目になった。将来浮気をして自分を捨てるらしい相手とーーーー。
◇◇◇
小さな頃に自分に前世の記憶があると気づいたソフィアは前世の家電を作りたいと思うようになっていた。転生チートは満遍なく使えるがほどほどの魔法の力だ。
持って生まれた魔力と前世の科学社会の記憶がソフィアを助けてくれた。
ノーフォーク伯爵家は暮らしに困るほど貧乏ではなかったが、これといった産業のある領地を持っていたわけでもなかった。
でもソフィアは思い出した。北にあるうちの山ミケルニア山に金鉱が埋まっていることを。急いで父に知らせに行った。六歳の時だった。
「夢で見たの、ミケルニア山からキラキラした物が沢山出てきて父様やみんなが喜んでた」
「ミケルニア山といえばうちの領地の北の方にある山の名前じゃないか。ソフィアよく知っていたね」
あわわ、具体的すぎたか?
「だって夢の中で父様が叫んでたの、ミケルニア山で金が採れるなんてなあって」思い切り子供らしく首を傾け上目遣いで可愛く告げた。
「そうか、叫んでたのか。ただの夢かもしれないが念のためだ。行ってみるとしよう」
グッジョブ父様!
そうして父は三人ほど護衛を連れ金鉱山を見つけて帰って来た。
王家には正直に報告した。但し偶然に発見したことにした。
ソフィアの夢の話は両親と兄とあの時連れて行った護衛たちだけの秘密となった。
大切な娘が攫われるかもしれない。家族には屈強な護衛が付くようになった。
そこから大金持ちになった。
資金力を活かして保冷庫や魔風扇、冷風扇(エアコンの様な物)洗濯機等を作り次々と売り出した。ノーフォーク伯爵家魔道具部を立ち上げてもらった。
商会を作り代表には父がなった。爵位は強かった。貴族に売り込むのに力を発揮したのだ。
どうやら父は営業向きだったようだ。母も執務の力を付けていった。
兄は商会を受け継ぐために必死で食らいついていった。
ノーフォーク伯爵家の癒やしと光がソフィアだった。
何気なく口にした言葉を実現させるのは父と兄の役目になり、国内屈指の大商会へと変貌を遂げたのだった。
楽しんでいただければ嬉しいです。




