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よろしくお願いします
オリバー様と一緒に実家を訪ねたら両親がほっとしたのが分かった。虐げられていると思ってた?
「オリバー様よくおいでくださいました。ソフィアおかえり。元気そうで安心したよ。夕食を皆で食べながら話をしよう。ゆっくりしていってくれ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えます」
「嬉しいわ、お父様お母様。お久しぶりです」
二人に抱きしめられ胸が温かさで満たされた。
「顔が見たかったわソフィア。結婚式以来ね。オリバー様顔を見せに来てくださってありがとうございます。さあ応接室へどうぞ。紅茶でも飲んでゆっくりしてくださいませね。後で長男夫婦も来ますので挨拶をさせますわ」
娘夫婦を見送りながら
「本当に上手く行っているのだろうか?どうも雰囲気が硬いな」
「オリバー様が学生だから手を出さないようにしているのでしょうか?」
「後継のためにはどうでもいいことじゃないか。自分が産むわけでもあるまい」
「やはり諜報は付けておきましょう。ソフィアが不幸になるなんて許せないですわ」
「そうだな」
と両親が話し合っていることなどソフィアは知らない。
「君の家族は温かいのだな」
「ええ、自慢の家族ですわ。オリバー様のご両親も仲がよろしいではありませんか」
「うちは貴族らしく堅苦しいというか…君のところのように温かではないと思う」
何と言っていいのか分からなかった私は話題を変えた。
「あの、今度のお休みに一緒に美術館に行きませんか?予定がおありですか?」
「特にないが見たい絵があるのか?」
「はい、絵ではないのですがレース展が開かれるのです。素晴らしく綺麗だそうです」
「工房を作ったのだったか。好きなのだな」
「はいそれはもう。綺麗な物は大好きですわ」
「では午後から行こうか」
「楽しみにしておきますね。嬉しいです。初めてのデートですわね」
「初めてか……すまない気が利かなかった。夫婦もデートをするのだったな」
「気にしませんわ」
婚約期間も短く、あっという間の結婚式だった。
その上期間限定ですからねというのは今更なので口には出さないでおいた。
「その時の為にデイドレスを贈ろう。希望はあるか?」
「そうですわね、水色が良いですわ。ターコイズブルーのネックレスを持っていますので合わせようかと思ってます」
「一緒にドレスを誂えに行き食事をするのだった。普通の夫婦はそうだと聞いた。アクセサリーも買うつもりだったのだ」
しゅんとした夫が俯いて言った。
仲の良い夫婦を演じる契約に気がついたというところだろうか。
頑張ってくださいませ、オリバー様。
「良いのですよ。レース展の後でカフェかお食事に行きましょうか」
「そうだな、どちらも行こう」
元気を取り戻した夫がぱあっとした明るい表情になった。
「今日は実家に行ってくださりありがとうございました。お休みなさいませ、よい夢を」
「当たり前のことだ。楽しかった。お休みよい夢を。じゃあまた明日」
もっと話していたくて一人の部屋に帰るのが寂しいと思ったオリバーは、自分の気持ちに気づいてはいなかった。
妻は思ったよりも知的で社交的な性格だった。マナーやダンスもすばらしくそこはかとない上品さがあった。
初夜で自分はなんて失礼なことを言ったのだろう。金持ちだから傲慢だと思い込んで自分の方が上だと思い知らせたかった。それこそが傲慢だったというのに。
見た目と地位だけで寄ってきた令嬢たちは家が斜陽だと知ると蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
だから妻も心の中で自分を馬鹿にしているのだろうと思いあんなことを口にしてしまった。
妻は穏やかで傍にいるのが心地いい人だった。完全な八つ当たりだ。情けなくて胸のうちが恥ずかしさでゾワゾワした。
明日の朝謝ろう。許してくれとは言わないが誠意を見せよう。
ベッドの中で無理やり目を瞑った。
誰にも聞かれまいと朝早く妻の部屋に行くことにした。扉をノックすると
「メリーなの?入って」という妻の声がした。
オリバーは身の置きどころがないような気がしたが勇気を出してドアを開けた。
「あら、オリバー様ではありませんか。どうされました?今朝は早いのですね」
「おはよう、あ、あの初夜に失礼なことを言って悪かった。許さなくてもいい」
オリバー様はそれだけ言うと真っ赤になり急いで立ち去った。
「えっ??」
今の何だったのかしら。謝りに来たのよね。
あっ私寝間着のままだった。紳士としては失格よね。女性の寝間着姿を見るなんて。
いくら小説の世界のセリフと知っていても実際に言われると堪えるものがあったわ。
反省して謝りに来たということね。
少しは大人になったのねと姉のような気持ちになってしまったソフィアだった。
読んでくださってありがとうございます!楽しんでいただければ嬉しいです。




