2
よろしくお願いします!
「オリバー様私鯛の塩釜焼きとタルトタタンが食べたいです」
「何だ?その鯛の塩釜焼きとやらは」
「東方の国の料理です。書庫にある十年くらい前の晩餐会のメニューに書いてありましたの。真っ白な塩のドームに覆われて中には大きな赤い魚。華やかだそうです。きっと公爵家のシェフなら作れると思いますわ」
「言っておこう」
公爵家は東の海で獲れる鯛という珍しい魚やイカや蟹を力に物を言わせて輸入するようになり、港は賑わうようになった。
「今度王城で夜会がある。どんなドレスが欲しい?」
「期間があればオリバー様の色の金糸を織り込んだシルクサテンの生地で作られたドレスが良いですわ」
「シルクサテン?そんな生地があったか?」
「ウエルズ地方で昔盛んだった織物だと書物庫の資料で見つけました。今は衰退しているようですが、細々とは作られているそうです。大層綺麗だと書いてありましたの。せっかく公爵家に嫁いで来ましたので欲しいですわ。取り寄せてくださいませ」
「急いで注文しよう」
「そのドレスにチュールレースを着けてくださいませ」
「それも領地で作られていたのか?」
「はい、よくお分かりになりましたね」
「流れからな……それも注文しておこう」
衰退一方だった地方は狂喜乱舞して若奥様のためにとやる気を出し、届いた生地で領地のメゾンは張り切ってドレスを作った。工房でこつこつと生地を織っていた職人達は涙を流し漸く時代が戻って来たと喜んだ。
届いた最高級の生地で作られたドレスを見てソフィアは微笑んだ。
「こんなに素晴らしい技術がある領地って最高ですわね」
「………」
「どうされました?」
「…知らずにいた。無知は罪だな…」
いい子だな、これからだよ、オリバー様。私なんて本で調べて欲しいと言っただけだよ。作らせたのはオリバー様だ。交渉もしてくれたじゃないの。
あれっ、仕事の出来る男に育っている?ちょっと悔しいかも。育てたのに取られるって。
でも「愛することはない」って言われたし、縋るのは好きじゃないので良しとしよう。
「オリバー様」
「今度は何が欲しいのだ?何でも言っていいぞ。ソフィアのお陰で領地の者が喜んでいる」
「アクセサリーをお義母様にお借りしたいですわ。持っておりますがお義母様からというのが大切なのです。オリバー様の正装も作りましたのよ。お揃いですわ。二人で広告塔になりましょうね」
「家宝の宝石があるからそれを贈ろうと思っていた。きっと似合うと思う。私の分もあるのか。そうか…ありがとう」
心配しなくても家宝の宝石は離縁の際にはお返ししますよ。オリバー様の正装も注文してありますわ。自分の分がないから不安だったのかしら。貴族の愛情表現の定番ですもの。見せつけますわ。
二人で夜会に着て行って自慢するのだ。公爵家という権力を使ってアピールしてやる。
次期公爵の美男夫を持つ妻として侮られないようにおめかししなければ。
お化粧の上手な侍女っているのかしら。いなければ自分でしてもいいわ。
前世では結構上手だったと思う。ネットでやり方を勉強したものだ。
楽しもう、期間限定だからね。
いたわ、お化粧やマッサージの上手な侍女たち。さすが公爵家。良かった、やってもらう気持ちの良さは格別。うっとりしたわ。
夜会の会場は王宮の広間だ。壁や天井に金箔が施され豪華絢爛。天使や女神が色彩豊かに描かれていて圧倒された。シャンデリアは水晶。綺羅びやか過ぎる。
そこへドレスの花たちと貴族然とした紳士たち。香水が混ざり合って苦しいくらいの熱気だ。
私達の登場は終わりの方。皆の注目を集めてやった。エスコートされ微笑み合う。お約束だからね。頭頂部にキスをされたわ。オリバー様演技が上手。
王族に挨拶をした。
「結婚おめでとう。ハワード公爵令息。夫人のドレスは綺麗な生地が使われているのね。素敵だわ」
と王妃様からのお言葉をいただいた。
「これは我が領地で昔から作られておりましたシルクサテンでございます。妻が再発見いたしました」
オリバー様が丁寧にお答えした。
「ふふっ仲がいいのね。詳しいお話が聞きたいわ。ご夫婦で後で来てくれるかしら」
「もちろん喜んでお伺いいたします」
こうして王妃様の目にとまったシルクサテンは飛躍的に人気を伸ばし注文に生産が追いつかない程になった。
名誉ある仕事に職人は涙を流し、工房は数を増やして対応した。
お読みくださいましてありがとうございます♡
シルクサテンはフランスで13世紀からあったようですが、職人がイギリスに移り住み1840年のイギリスのヴィクトリア女王のウエディングドレスで使われ人気が出たそうです。
異世界なので緩くお読みくださると嬉しいです。




