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よろしくお願いします
大きな危機を乗り越えたせいだろうか。オリバー様がさらに甘くなった。
もはや溺愛だと思う。ことあるごとに口説いてくる。
「今日も可愛いね、私のソフィア。亜麻色の髪が美しいよ」
ひと掬いして口付けを落とされ、覗き込まれた。その顔の近さに飛び上がらんばかりに驚いた。絶対自分の顔の良さを分かってやっている。
「からかわないでください」
「本気なのに分かってくれないんだ」情けなそうにしゅんとしている。イケメンは何をしても格好いい。ずるい。
茶色の髪ですよ、恋愛補正がかかっているのかな。以前と変わっていないと思う。
この幸せを受け止めても良いのだろうかと冷静な私が立ち止まっている。
「庭を散歩しよう」
伸ばされた手が温かかった。信じてもいいのだろうか。もう誰も邪魔して来ないのかな?物語は終わったのだろうか。愛しても良いの?物語の中の私が呟く。
もっと強気だった私は何処に行ったの。
顔が赤くなったのが分かる。胸が苦しい。恋に落ちたの?私。
胸の奥が焼け付くように熱い。
オリバー様の顔が近づき柔らかな唇が重なった。
離れた瞬間思った。もっとして欲しいと。
「そんな顔をすると部屋に閉じ込めたくなる」
色気だだ漏れのオリバー様が呟いた。息が止まりそうになった。
「かあたま、だっこ」
二歳になった息子のレオがぷくぷくの手を出しておねだりをしてくる。ほわ~天使がいる。レオはオリバー様そっくりに生まれた。
「いらっしゃいな、可愛いレオ。母様の宝物」
抱き上げるとミルクと陽向の匂いがした。
「お外で遊んできたの?手を洗って一緒におやつを食べましょうね」
「うん、これをかあたまにあげゆ」
ちっちゃな手のひらにあったのは四つ葉のクローバーだった。
「まあありがとう。見つけると幸せになると言われている珍しい葉ね。メリーこれで栞を作りたいわ。その前におやつの用意をお願いね」
レオに付けているメリーに声をかけた。信用が出来るメリーはレオの専属にした。乳母はメリーの知り合いのリナに頼んだ。私に付いているのはジャックと侍女が三人だ。
暖かな陽射しの入り込むリビングで膝に抱っこをしておやつを食べさせているとオリバー様がやって来た。
レオが手を伸ばした。
「とうたまだっこ。いまね、おやつなの。いっしょにたべよ」
「いいね、父様も混ぜてくれるのかい」
我が子を見る瞳が蕩けている。そのまま私の方へ視線が移った。さらに甘く蕩けた。
「今日も美しいねソフィア。君の周りは空気まで清らかだ」
と言うと唇にチュッとキスが落とされた。
結婚して六年も経ったのに愛情は減らないらしい。
「レオにも〜」
「ははっレオにはこれだな」腕のなかの息子の頬にキスをした。レオもお返しをした。可愛い。逞しくなった夫と天使。カメラが欲しい。
今度の魔導具はこれだわ。お兄様にお願いしないとね!
あの言葉から始まった結婚がまさかこんな幸福を呼ぶとは思ってもみなかった。ソフィアは今ある幸せをじっくりと噛み締めた。
私の馬鹿な考え違いで始まった結婚は気立ての良い美しい妻の力で上手くいくようになった。傾きかけていた公爵家の財政を立て直し本当の愛に気付かせてくれた妻を私は一生かけて愛していく。
愚物だった私の目を覚まさせてくれた妻は宝物だ。危機にも毅然と立ち向かってくれた姿は忘れられないものになっている。
今日も私は二人きりの寝室で妻に愛を囁く。
「私の愛するソフィア、君の姿をずっと目にしていたい。声を聞いていたい。未だに胸が焦がれるように君を求めてしまう。愛しているよ」
「嬉しいです。いつまでもそう言っていただけるように努力しますわ。
今度は念写機を作って貰うつもりですの。可愛いレオと貴方との姿を残しておきたいのです」
「それは絵の様なものなのかな?そこにはソフィアも入っていないと悲しいな」
「私もですか?では性能のいい魔石を使って貰うようにお願いしましょう。女性にとって綺麗に写るのは大切ですもの」
「このままで充分綺麗だよ」
「オリバー様にそう見えていれば嬉しいですわ」
「ソフィアが美しいのは事実だよ。私が言うのだから間違いはない」
完全なバカップルの会話だと頭の中の私が囁く。良いのよ幸せなのだから。
そう言って押し倒され深い大人の口付けをされた私はオリバー様の沼にはまっていった。
ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました。お楽しみいただけましたら嬉しいです。
これで完結です。次作「伝説の王妃、愛しき孫娘として目覚める(仮)」を執筆中です。良ければ読んでください。よろしくお願いします。またお会い出来ますように。




