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よろしくお願いします
まだ暗い内に三人は山へ転移した。
「ここに大穴を開けます。そのうえで岩を埋め込みます」
「そんなことまで出来るのか、素晴らしいな」オリバー様が感心したように言った。
「魔力は普通ですので完璧ではありません。では離れていてください」
ソフィアが両手から術を出すとゴゴゴという地鳴りのような音と共に穴が開き、大穴が出現した。伯爵邸くらいはある。土の中に埋もれていた大きな岩や石がごろごろと転がっていた。
「無理をするな」と心配そうな四つの目が告げていた。
「後は石を壁に埋め込むだけです」
残りの魔力で周りに貼り付けた。それを見て安心したソフィアは目の前が暗くなるのを感じた。「…っソフィア」という声が聞こえた気がした。
気を失ったソフィアを抱きながら、急いで水をせき止めたオリバーと公爵は転移魔法を使い屋敷へ戻った。
ソフィアの意識は三日経ち漸く戻った。
心配でソフィアから離れなかったのだろう、オリバーの目は赤かった。
「私お役に立ちましたか?」
「ああとても役に立った。あそこで水を止めたせいで水の流れが僅かずつ減ってきている。
困った民衆や貴族が王家に不満を漏らし始めている。
魔力を枯渇するまで使っては駄目じゃないか。このまま目を覚まさないのではないかと生きた心地がしなかった。ソフィアに何かあったら私は生きていけない」
そう言ったオリバー様の顔はくしゃくしゃで今にも泣きそうだった。
「久しぶりに使ったので加減を忘れたのですわ。心配をかけてごめんなさい」
「落ち着いたら魔術を勉強し直そう。私が教える」
「ありがとうございます。楽しみにしていますね」
「水を飲むかい?それともスープが良い?」
「どちらも欲しいです」
ベッドサイドのベルを鳴らすとメリーがワゴンを押して入って来た。
よく冷えた水と野菜をじっくり煮込んだスープだった。
言わなくても分かったようだ。
「ありがとう。さすが気がきくわね」
「意識を取り戻されて良かったです」瞳には涙の膜が張っていた。
「言われた通り若奥様の商会とノーフォーク伯爵家には知らせを出しておきました。早速外国へ拠点を移されたようです。ジャックに探らせましたが王家はさほど騒いではいないようです。認識が甘いですね」
「不敬よメリー。ありがとう、もう少し休むわ」遠慮のない言葉に思わず笑いが込み上げた。
「旦那様と奥様がお見舞いに来たいと仰せです」
「もう少ししたらで良いでしょうか?申し訳ありませんオリバー様。まだ怠く休みたいです」
「ああ、休んでくれ。添い寝をしてもいいだろうか?もちろん抱きしめるだけだ。君がいなくなりそうで不安なんだ」
「良いですけど…。メリーお義母様達にそうお伝えして」
恥ずかしいが仕方がない。不安にさせたのは私だ。
頷くとメリーはさっと退出していった。
次に目が覚めたのは陽が高く昇った頃だった。後ろから抱き込むようにぴったりと貼り付かれていた。
身体の向きをくるっと変えると整いすぎた顔が目に飛び込んできた。目の下に隈があった。
こんなに近くで見たことなど初めてだ。毛穴一つない滑らかな肌に長い睫毛、高い鼻と薄い唇。
神様は不公平だ。この半分でも私に分けてくださっていれば、美女だっただろうに。
そんなことを思いまじまじと見続けていたらオリバー様が目を覚ました。
「具合はどうだ。良くなったか?お腹は空いていないか?メリーを呼ぼう」
この人の綺麗さに見とれていて気が付かなかった。普通の女性は寝起きがブスになることを。目がむくんで酷い顔に違いないわ。
「寝顔も寝起きも可愛いな。食事を二人で食べよう」
「へっ!?可愛い?」淑女らしくない声が出た。
「うん可愛いよ、私のソフィア。愛してるよ」
髪をひと掬いして口付けられた。甘い。オリバー様が可怪しくなってる。どうしたの?
ローブを羽織らされメリーを呼んだ。
直ぐに食事が用意された。
ワゴンの上にはかぼちゃのポタージュスープとローストビーフにレタスを挟んだサンドイッチと卵サンドイッチ。
ワインにデザートの苺が乗っていた。それをせっせとテーブルに並べてくれる。
「お二人とも食事が終られましたらお風呂になさってくださいませ。浄化魔法では疲れが取れませんので」
「うん、そうするわ、ありがとうメリー」
気を利かせたのかメリーがさっと退室した。
二人で食べた夕食は美味しいものだった。
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