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三年後離縁予定の妻ですが夫が離してくれません。何故?  作者: もも


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よろしくお願いします

 「若奥様少しお休みください。酷い顔色です」メリーが気の毒そうな顔で言った。


「ありがとう、そうするわ」


気を強く持っていたが毒々しさにやられたようだ。




 オリバー様が引き返して来たのは直ぐだった。

「大丈夫か?気丈に追い返したと聞いたが。狂ってるとしか思えない。良ければ夕食後皆で話し合おう」


「まさかあのような方だとは思いませんでしたわ。どこで親密になられたのですか?」


「親密になどなっていない。一度護衛を任されただけだ。他国の魔術師に狙われているという情報が入ったので、魔力の高い私が選ばれた。皆知っていたので近づきたくなかったのもあるのだろう。

最初は可憐な王女を演じていたが、次第にべたべたと接触して来るようになった。それがこのザマだ」


吐き捨てるようにオリバー様が言ったが、次の瞬間私を見て表情が曇った。


「顔色が悪いのに迷惑をかけてすまない。夕食までゆっくり休んでくれ」


「あの、ハグをしてくださいませんか」

先ほどの動揺が収まっていなかった私はお願いをした。


「おいで。震えているじゃないか。可哀想に、怖かったんだな」


「あまりに強烈でしたので…。愛し合い、あなたが溺れているとまで言われましたわ。屋敷に帰らず何処にいらっしゃったのですか?」


「愛しあったなどと…そのようなことを言ったのか!?全部嘘だ。信じてくれ。身を隠すのに必死だったというのに。よくも…。

魔術師団の宿舎に空き部屋があるのだ。寝るだけの場所なのだが、隠蔽魔法を使ってそこにいた。

屋敷には必ず目を付けられると思っていたので帰れなかった。連絡もせずに悪かった。許して欲しい」


「ご自分に魔法をかけて帰られれば良かったですのに。使い魔を飛ばすこともできなかったのですか?困った人ですね」


「あっ!必死過ぎて思いつかなかった。面目ない」

身を縮めているオリバー様に苦笑する。


「よほど追い詰められていたのですね。分かりました、今回は許します。好きな人が出来て帰って来ないのだと思っていました。」


「…それで離婚するつもりだったのか……?」恐る恐る夫が口を開いた。


「ええ、期限が近付いていましたし」


抱きしめる腕に力が入った。


「好きなのも愛しているのも貴女だけだ。これからやり直させて欲しい。いや、ください。愛しているんだソフィア。期限は命尽きるまで」


肩に乗せられた唇から吐き出される吐息が熱かった。









 執務室に帰ったオリバーはあの女の暴言の全てをメリーから報告を受けた。

妻はあれでもオブラートに包んで言ったのだろうと思ったからだ。

正解だった。

妻を馬鹿にするなど万死に値すると歯ぎしりをし、拳は爪が食い込み血が滲むまで握り込んだ。







 夕食後談話室に集まった一家は行く先の見えない将来に昏い顔を突き合わせていた。


「陛下には話をして来た。我が家の婚姻を壊すのかと言ったがサマンサ様に甘い陛下のことだ。どれだけ理解していただけたのか分からない。さもないと我が家は水魔法を使わないと言ったのだがな」



「本当に水を止めるとは思っておられないのでしょう。王宮だけ水を止めましょう。あなた方なら出来ますわよね。他を止めると命の危険があります」とお義母様。


「それより一ヶ月王都を水不足にしましょう。水が足りなくなれば民が騒ぎ出します。そちらが効果的です。他の水魔術師にも頼みます」と過激な発言はオリバー様。


「他には漏らさぬ方が良い。信用がおける者とは限らぬ」


「では父上二人でやりましょう。溜め池を作り山からの水をせき止めれば良いのではないでしょうか。調整して流れを僅かにするのです。

民が飲み水に困るといけませんので少量は流すということで如何でしょう。特産の海産物とシルクサテンは王都に入れず隣国への輸出に切り替えましょう」



「穴を作るのは私が土魔法で出来ますわ。それと王宮への商会の出入り止めます。実家の商会もです」


「それではソフィアさんの商会にもノーフォーク伯爵家に申し訳ないわ」


「今日のようにオリバー様の伴侶を辞めないということで直ぐに圧力が掛かります。その前に動くのが商人ですわ。他国へ拠点を移しても構いません。それくらいの力はございます」


「頼もしいお嫁さんで嬉しいわ。ありがとうソフィアさん」

目を潤ませてお義母様が言った。


「降りかかった火の粉を払うだけですわ。人の家庭を壊すなどと思わないように動きませんと」


我儘王女と何もしない陛下なんてこっちから見限ってやるわ。








「君には助けられてばかりだ。ありがとう」

泣きそうな顔でそう言ったオリバー様の声は震えていた。


「まともな王女様ならお譲りしていましたがあれでは気の毒すぎます」


「譲るのか……」


「良い方であれば公爵家の為ですし、オリバー様にとって幸せだと思いますので。ですがせっかく立ち直った産業が潰れそうですし…」


「そんな結婚私は幸せではないぞ、ソフィアだから良かったと思っている」


「でも最初はこんな年上の地味女と結婚するなんて嫌だと思っておられたのでしょう?だからあのセリフを…」

言っていて自分が傷ついていたのが分かった。胸が痛い。


「あ〜っ、許して欲しい。昔の私は見る目のない大馬鹿者だった。穴を掘って埋まりたいくらい反省している。ソフィアは唯一無二の存在だ。美しい魂が外見に滲み出ている。隣にいると落ち着くしとても愛しい」


「今回は許しますが次はありませんからね」

そう、二度目は許さない。

あれは小説の世界の言葉だと思ったから余裕があったが、現実では耐えられそうにない。


「うん、分かった」と言うオリバー様が耳の垂れた大型犬に見えたのは幻覚だろうか。

読んでいただき、ありがとうございます!楽しんでいただければ嬉しいです。

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