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situation1 ゲーセンデート ソフィアside

(とても面白そう…)

今私は図書室にいる。以前から予約をしていた本が図書室に戻ってきたという連絡を受けて予約した本を借りに来た。内容はミステリー。まだかなり序盤だけれどとても面白そうな雰囲気をしている。かなり期待が大きい。家に帰ったらもっとこの作家さんの本を調べてみよう。そう思って私は図書室を後にした。

図書室から出た後、廊下の突き当りで何やら荷物を運んでいる人物が目に入った。

(あれは…ハル君?)

そういえばさっき先生と何か話していた気がする。頼まれごとかな。

普段の私なら気にせず帰る、けど少しくらい挨拶はした方がいい気がする。それに今日はたくさん課題が出ているわけでもないしそこまで急いで家に帰る理由はない。

多分教室に行ったと思うから少し寄っていこうかな。


   ※


教室に着くと読み通りハル君が居た。ハル君はまだ私に気づいていないようだ。

「ふぅー…やっと終わった…」

「お疲れ様、ハル君」

「おわっ!ソフィア!?」

ただ労いの言葉をかけただけなのにここまで驚かれるとは、心外である。

「お化けでも見たような声…」

「悪い、ソフィアがまだいるとは思ってなかった。何か用事でもあった?」

「別に、図書室から帰ろうとしたときにたまたま見かけたから」

用事があったわけではない、かといって明確な理由が私の中であったわけではない。なんとなくだ。

「なるほどね」

ハル君は特に疑問も持たず納得してくれた。ここまで信頼してくれているのに実際はなんとなくですなんて言うのは気が引けるので

「ハル君この後は何もない?せっかくだから一緒に帰ろう」

と言ってみた。

「それは全然いいよ。あ、でも今日俺ゲーセンに寄るつもりなんだよな…」

ゲーセンかぁ…お金はあるし時間もある。たまには行ってもいいかな。

「ん、じゃあゲーセンもついてく」

「⁉」

なぜかハル君は鳩が豆鉄砲を食ったような反応をした。確かに私は普段ゲーセンとかは行かないけれどそれにしたって驚きすぎだ。

「ソフィア、今日なんかいいことあった?」

良いこと、といえば例の本だけど別に伝えるほどのものでもない。

「別に、特に変わらない一日だった」

特に面白みがある返答をしたわけではないのにハル君はニヤニヤしている。

(何がそんなに面白いのかな…)

「じゃあ行くか、あまり遅くなるといけないし」

「れっつご~」


   ※


ゲーセンが見えてきた。なんでハル君は今日ゲーセンに行きたかったのか聞いてないな、と思って聞いてみる。

「そういえば…今日はゲーセンに何をしに来たの」

「ああ、言ってなかったな。今日は俺がやってるゲームのプライズフィギュアの入荷日なんだよ」

なるほど。あまり覚えてはいないけど確かに少し前ハル君が犬伏君と一緒にゲームの話をしていた気がする。普段ゲームをしない私にはよく分からなかった。

「へー」

「いくらでとるの」

「目標は1500円以内かな。高くても3000円」

普段こういうところには来ないので相場が分からない。けどハル君が言うなら大体そのあたりが適正価格なんだろう。

「おー、がんばれ」

やる気に満ち溢れる幼馴染をよそに私は違う景品を見つめていた。


   ※


結局、ハル君は目標金額を超えてしまった。きっとよくあることではあるのだろうけどあまりに落ち込んでいたので慰めることにした。

「まぁ…そういうことも、ある。次はきっとうまくとれるよ」

そう言ったけれどハル君は落ち込んだままだ。どうしようかと困っていると急に紳士風の男の人がハル君に話しかけてきた。普通の人なら別に何とも思わない、でもこの人は少し異質だったので思わず警戒してしまった。

「やぁ、少年。君もコレを取りに来たんだろう?」

「どーも、そうですね確かに俺はこのフィギュアを取りに来ましたがあなたと出会ってしまうつもりは全くありませんでしたよ」

どうやら口ぶり的に二人は知り合いのようだ。

「つれないことを言うじゃないか少年。おや、そちらのお嬢さんは?」

細くキリッとした目がこちらを見る。やっぱり少し異質で、怖い。

「幼馴染ですよ。たまたま都合が合ったんで一緒に来たんです」

「なるほど、ということはこの子が例の…」

「それ以上は何も言わないでください」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それでは二人とも楽しんでいくといい」

「ええ、また」

幸いなことにハル君が説明してくれたおかげで私は言葉を交わさずに済んだ。でもあの人が纏う雰囲気の正体が気になるので尋ねてみた。

「誰なの?」

「シュルガットさんって言ってね。もともとは俺の父さんの知り合いなんだ。今は同じ趣味を持つ友達、みたいなものだけど」

「あの人、見た目は人間だけどきっと違う…でも亜人なら見た目でわかる。何者なの」

「まぁ話せば長くなるけど、簡潔にいうと悪魔だね」

「悪魔⁉ほとんどいないのにこんなところで会うなんて…」

多少特別な人ではあるだろうと思っていたけれど悪魔だとは思いもしなかった。というか、幻想種に会ったのは今回が初めてだ。

その後、ハル君にシュルガットさんは面倒な人だと説明された。

「ちょっとそれは困る、かも」

「その時は俺に連絡してくれたらまぁ何とかするよ」

「ん、お願い」

いくら正体が分かっているとはいえあの人と一対一はさすがに怖い…


   ※


シュルガットさんもいなくなり目的を達成したハル君は帰りの支度を始めていた。

「そろそろ帰ろうか」

と言われたが、私にはまだやりのしたことがある。

「待って、あれが欲しい」

私がハル君に示したのは大きなアザラシのぬいぐるみ。あんなに大きかったらきっと抱き着いて寝るのもできるだろう。何よりアザラシが大好きなので絶対に欲しい。

けれどハル君は

「あー、あれはちょっと無理があるかなあなんて…いくらかかるか分からないしオススメはしないなぁー」

とあまり乗り気ではないらしい。それでも私はどうしても欲しいのでハル君のアドバイスを無視してアザラシのもとへ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全然取れない…」

まさかクレーンゲームがここまで難しいものだとは思わなかった。見かねたハル君が心配そうに聞いてくる。

「そろそろやめといたほうがいいんじゃ?」

「嫌、あと5000円はある。普段出かけないからお金はいっぱいある。絶対にこれでとる」

ここまで来たんだ、絶対に取る以外の選択肢は私の中にはない。

でもハル君は我慢ならないらしく

「ソフィア替わってくれ、俺が1000円以内でとる」

「分かった、任せたよハル君」

ここまで強く言われてしまっては私も断ることはできない。大人しく任せることにした。しかも任せたら一回でとれてしまった。さすがはハル君だ。

「おぉーさすがはハル君。ありがとう」

絶対に欲しかったので取ってくれたからにはしっかりお礼をしないとね。


   ※


私の目的も達成したので今日はお開きにしよう、ということになった。帰り道、やけにハル君は嬉しそうにしていたのは少し気になった。フィギュアを取った直後はあんなに落ち込んでいたのに。そのあと家に帰ってからアザラシを撫でまわしていたらハル君から連絡がきた。

『ソフィア、今日はありがとう』

(別に感謝されることはしてない、というかむしろ私が感謝する方なのにな)

『こちらこそありがとう(._.)』

『アザラシ、大切にする』

『気に入ってくれたようで何より。またどっか一緒に行こう』

(あんまり出かけるのは好きじゃないんだけどな…)

『気が向いたら、行く』

『じゃあまた明日学校でな』

『うん、また』

まぁでも今日の帰りの寄り道は意外に悪くなかった。また誘われたら行ってみるのもいいかもしれない…

こちらの話は前回のゲーセンデート回の答え合わせ回になっています。

別に読まなくても困りはしないだろうけど読むと晴翔とソフィアのすれ違いなどに気づくことができるのではないかと思います。気を付けている点はやっぱりソフィア視点と晴翔視点の書き分けですね。油断すると晴翔成分が入りまくるので怖いですね。ではまた次回。

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