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タイトルが一文字 其の弐「墓」

作者: 永谷健三郎

    「墓」

 ある山奥に、ひっそりとした寺が建っていた。どこの寺にも共通していそうな、どことなく漂う暗さ。寺への参拝者はあまりいなくなっていた。住職もそのせいかやる気を失くし、さらにそれによって参拝者は少なくなる一方であった。

 このような寺でも昔はなかなか人気のある、地方の名所だったのだ。それが、今ではこのありさま。そこにはある逸話が関係していた。


 百年ほども昔ではない、わりと最近の話。一人の若者がこの山をさ迷い歩いた末、その寺にたどりついたという。その若者はだれかがいないかを確かめようと裏へまわった。探索に来ていたその若者は、寺の表札を見るでもして名所だと分かり、安心したからだろう。しかし、裏に回ってその光景を見た若者は腰を抜かし、挙句には気絶をしてしまったという。なぜなら、その若者が寺の裏で見たのは、数人の僧が墓を掘り返して死体を食べていたかららしい。その時は、やはりさすがにだれも信じることはなかった。だが……。


 いまだにその寺は以前のように栄えることがない。しかし、寺はいつまでもなくならないだろう。それはその寺を恐れて、寺を破壊するものがいないから。だが、よく考えるとおかしな事がある。それはわずかでも寺への参拝者がいること…。その参拝者はみな、一人暮らしの老人に限る。そのため、村の者からは恐れられている。いったい何をしているのか……。


 都会。その郊外に割合高いビルが一つ建っていた。その中ほどの階に、若い女性が一人住んでいる。

「あら、なにかしら」娘はつぶやき、窓に張り付いたそれを見ようと、窓に近寄る。

「手紙だわ…」

 娘があけると、その紙は部屋の中に入り込んできた。風が強かったのだ。娘は窓を閉め、紙を拾う。

「なにかしら」

 娘が開いたとたん、娘は苦痛に苛まれ、容姿は若いそれから老人のものとなった。

「わあ、たすけて……」

 娘は一人暮らしだったため、助けも呼べない。そして、ここは高いビル。下に降りることも難しく、みなはその悲鳴に気付きすらしないだろう。

 老人となった娘は部屋を出、どこかへと歩いて行った。近所の者はその人物を始めてみるため、疑問に思いながらも不気味がる。


 風が強い日。それは、一か月に一度くらいはあるだろう。あなたは好奇心がお強い。ましてや、窓に張り付いた謎の手紙なんぞ、すぐに開いてしまうだろう。そして……。

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