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虚像の王子  作者: 進藤
7/9

自分を見つめ直す旅

 次のシーンでは、蓮が演じる登場人物が、愛する人を失い、自分を責め続ける場面だった。監督からも「ここが作品のハイライトになる」と告げられ、蓮にとってプレッシャーは一層増していた。



 撮影が始まる前、詩織が蓮のそばに来てそっと手を握った。



 「蓮くん、このシーンはね、ただ悲しむだけじゃなくて、もっと深いものが必要なの。失った人への思い、自分を許せない気持ち、そのすべてを解き放って」



 蓮は深く息を吸い込み、撮影に臨んだ。カメラの前に立ち、セリフを口にするたび、彼の中にある封じ込めていた感情が溢れ出した。これまで蓮が経験してきた孤独、愛されたいという渇望、そして周囲からの期待に応えられなかった罪悪感が一つに重なり、役に完全に同化していった。



 シーンが終わった瞬間、スタジオには静寂が訪れた。監督やスタッフは、しばらく言葉を失っていた。詩織は涙を浮かべながら、蓮にそっと微笑んだ。



 「おめでとう、蓮くん。あなたは本当に役者になったわ」



 撮影が全て終了し、蓮はひとつの節目を迎えた。作品の完成が近づくにつれ、彼の中にはある決意が芽生えていた。それは、自分をもっと知り、役者としての道を極めることだった。



 蓮は健吾や詩織に別れを告げ、一人で旅に出ることを決めた。表面的な魅力に頼ることなく、人生の経験を通じて本当の自分と向き合うための旅だった。



 「俺は、もっと強くなりたい。もっと、本当の自分を見つけたいんだ」



 新たな決意を胸に、蓮は自分の歩むべき道を一歩一歩、踏みしめていった。そして、その先に何が待っているのかはわからなかったが、彼は確信していた——本物の役者への道が、今ようやく開かれたのだと。



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