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虚像の王子  作者: 進藤
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心の扉を開ける

 撮影が続く中で、蓮の表情からはいつもの余裕が少しずつ消えつつあった。何度テイクを重ねても監督から「違う」「表面的だ」と指摘されるばかりで、焦りと不安が彼の中で膨らんでいった。



 ある晩、蓮は部屋で一人、脚本を手に悩んでいた。セリフを何度も読み返し、登場人物の心情を想像しようとするが、どうしても腑に落ちない。思わずため息をつき、天井を見上げた。



 「俺は、本当にこの役を演じきれるのか……?」



 蓮はこれまで、自分が人より恵まれていると信じて疑わなかった。だが、今回の役を前にしたとき、初めて「自分には足りないものがある」という感覚が湧いてきたのだ。



 翌日、撮影の合間に蓮は街を一人で歩いていた。ふと気がつくと、自分の出身地の近くまで来ていた。地元の景色を眺めながら、彼の心は次第に過去の記憶へと引き戻されていった。



 高校時代、彼はいつも周囲から「かっこいい」「羨ましい」と言われる存在だった。その言葉に酔いしれ、自分が何者かを深く考えることもなかった。しかし、ある日のこと、親友の健吾が蓮に対してこう言ったことがあった。



 「蓮、お前さ、周りにちやほやされてるけど、それって本当にお前の本質を見てるわけじゃないんだよな」



 その時は気にも留めなかった言葉が、今になって蓮の胸に重く響いていた。見た目や表面的な魅力だけで評価されてきた自分にとって、本当の自分を見つめ直すことなど避けてきた。しかし、今回の役を演じるにあたり、それがどうしても必要だと感じ始めていた。


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