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Anomalyの世界旅路:異変に魅せられた探索者  作者: 夏衒
異変に魅せられた少年
21/29

追い込み漁

「あーもう! 多すぎだろマジで!」


「それな、どんだけいるんだよ。ダンジョンに初めて来たけどやばいわ。気が抜けない!」


翔太の叫びにジンも同意した。


廃城の廊下を駆け抜けながら戦闘をする二人は無数に迫ってくる異虫の大軍に手を焼いていた。翡翠色の瞳を持つジンと鋭い眼差しの翔太は、互いに背中を預け、モンスターを倒しながら進んでいった。


翔太「また前から来たぞ!」


翔太が前方に見える骨蜘蛛(ボーンスパイダー)を指差した。前から壁をカサカサと移動しこちらに向かって来る骨蜘蛛(ボーンスパイダー)が二体いた。異虫型のモンスターがほとんどを占めているこの城でそこに生息する骨蜘蛛(ボーンスパイダー)は一体何の骨でできているのだろうか。


ジン「翔太後ろからも三体来てるぞ。あれは……透明蜂(クリアビ―)!」


ジンが焦り気味に言うと「了解! さっきと同じで前張るから援護よろしく」と翔太は即座に答えジンも「わかった」と返した。


骨蜘蛛(ボーンスパイダー)透明蜂(クリアビ―)も一般的な蜘蛛や蜂よりも大きく生命力も強い。骨蜘蛛(ボーンスパイダー)透明蜂(クリアビ―)は両方、小型犬並みの大きさだ。それでも大きくなった分、まだ攻撃が当てやすく強くなった生命力も異虫種のためこちらの攻撃力が上回ることが多い。

それでも蜂は蜂、当てるのは難しい。


翔太は俊敏な動きで剣を振り、モンスターの攻撃をかわしながら確実に反撃しジンも合わせるように主に醒力の火で援護しつつ戦った。まだまだ一心同体! とはいかないが息が合った連携が取れている。学生時代にバスケ部で一緒だったことが大きいだろう。


ジン「”火想・剣”」


最初に二本の火剣(かけん)を飛ばし前方の三体の骨蜘蛛(ボーンスパイダー)に放った。翔太にヘイトがあったこともあり二体には命中、それを見届けることなく視線を透明蜂(クリアビ―)に移し追加で三本の火剣を放った。しかし、骨蜘蛛(ボーンスパイダー)とは違い三体の透明蜂(クリアビ―)のヘイトはジンなため回避された。

しかしそれで充分だった。一気に五体相手にするより二体と三体に分けて戦う方が戦いやすいからだ。


翔太「ナイスだジン!」

  「”震斬(しんざん)”」


剣に振動を加え切れ味を強化した二連撃で骨蜘蛛(ボーンスパイダー)を確実に倒し、すぐに透明蜂(クリアビー)を標的に変えた。ジンも醒力を使いながら透明蜂(クリアビー)の飛びまわる場所をなくしつつ戦う。


ジン「”火想(かそう)短剣(たんけん)”」


次にジンは”火想・剣”よりも小さく短剣を模した小さくが数を増やした技を放った。9本の火の短剣が透明蜂(クリアビ―)の上下左右に飛んでいく。その内の一体に命中し撃破。もう一体には倒せなかったが羽根に当たり落とすことに成功。最後の一体には当たらなかったが、それで充分だった。


ジンが続けて「”火想・剣”」を放ち地面に落ちた透明蜂(クリアビ―)に確実にとどめを刺した。これで後は一体の透明蜂(クリアビ―)だけとなり、それと同時にジンの隣を翔太が颯爽と駆け抜けていき最後の透明蜂(クリアビ―)に突っ込んでいった。


翔太「クリアビーってこんなやりづらいモンスターだったのかよ、うっとうしいな! それにいつまでたっても羽音が慣れん!」


ジン「やばい! 奴が消えるぞ!!」


透明蜂(クリアビ―)、その名の通りこの蜂は姿を消し透明になることができる異虫モンスター。基本は姿を現しているため戦闘を避けることは可能だが一度戦闘になると厄介な相手として知られている。そして何よりこの蜂の厄介なところが視界外からの鋭利な針による………


ジン「翔太、右だ!!」


翔太「っ!!」


ジンの叫びに翔太が反応するも、鋭利な針に右腕を差されてしまう。


ズブッ! 視界外からの鋭利な針による奇襲攻撃。針には毒があり蜂特有の激しい痛みや赤い腫れが起こる。しかし透明蜂(クリアビ―)の毒はそこからさらに刺された箇所が腐食するというオマケつきだ。


翔太「痛ってぇ! ふざけんな」


翔太が痛みをこらえながら叫び翔太は強く腕を振り離させた後、剣で追撃を行うが躱されてしまう。さらに追撃したくても腕の強烈な痛みで追撃できない。だが、翔太の代わりにジンが追撃を行なった。


「”火想・短剣”!」


ジンは透明蜂(クリアビー)に近づき、短剣の山狼牙での追撃の斬撃を躱されたところに”火想・短剣”を集中砲火し、その策が見事に成功して透明蜂(クリアビー)を倒すことができた。


ジン「翔太、これ毒消し!!」


ジンはすぐに解毒薬を取り出して翔太に手渡した。


翔太「ありがとうジン、助かった」


翔太は感謝しながら解毒薬を開け右腕に振りかけた。


ジン「高いの買ってよかったよ。備えあれば憂いなしだな。少し休もう、どこかよさげな……あそこだ!」


タイミングが良いことに近くに安全地帯(セーフティーゾーン)を発見しそこで腰を下ろすことにした。ジンは翔太を支えて移動した。そこは誰かお偉い様の部屋だったのかどことなく綺麗で神聖な雰囲気が漂っている。


翔太「マジでやばいなダンジョンって、ここまで休みなく戦うことになるとは思ってなかったよ」


ジン「にしても多すぎるだろ……やっぱり言ってた異常異変ってやつが関係してるのか? 」


翔太「わからない……」

  「もともと異虫モンスターは出るところだと数が多いって聞くし」


ジン「そうだよな。まっ俺たちが考えても意味ないか、それよりここはどこの部屋なんだろうな」

  「協会によるとテルト城内には永続の安全地帯(セーフティーゾーン)は存在しなくて何時間か何日かバラバラだけどランダムに構築されるらしいけど」


この部屋だけなぜか遠い昔、まだ城が使われていた時のままのようになっている。机やテーブルも誇りがかぶっておらず暖炉にも火がある。壁も窓も崩れてなければ割れてもいない。


翔太「もうわかんないな、最初はしっかりと地図で進んでたけど戦いながら進んだから。何回か階段を通ったよな? 上って降りてを何回か、今は二階か?」


翔太が休んでいる間にジンは部屋を探索したが特にこれといったものはなくわかったのはここは騎士や兵士たちの休憩場所のようなところのようだ。


ジン「そろそろ行くか……」

  「………まぁ仕方ない。翔太、今から知ることは他言無用だぞ」


翔太「ん? どういうこと?」


安全地帯(セーフティーゾーン)で休憩をはさんでから重い腰を上げて二人は探索を再開した。部屋を出てから外には休憩前のような無数の異虫モンスターはおらず静かだった。

闇雲に進んだ結果、今ここがどこかわからないためジンは霊笛を取り出した。


翔太「なんだよそれ?」


ジン「ヒューーー」


ジンが霊笛を強く吹くと壁に埋め込まれた生霊石の欠片が明るく光り出した。


翔太「おいおいなんだこれ!? 光り出したぞ!」


翔太は興味津々にジンに質問するが「これは秘密。誰にも言うなよ?」と答えずにさらに釘を刺した。


本来ならば神社側しか知らないことで今回は特別に外に依頼をした結果俺が知ることになったわけだ。

むやみに他人に教えることではないはず。しかしさっきのように多くのモンスターに襲われれば自分一人ではどうしよもない。ここは翔太と一緒に進むのが安全だ。それに霊笛が無いと使い物にならないから大丈夫だろう。


光に沿って歩いて進んでいったがまったくと言っていいほどモンスターと出会わなくなった。


翔太「さっきよりも落ち着いたか?」


周囲を観察しながら話す翔太にジンも頷いた。


ジン「確かに、あれだけいたモンスターがすっかり出てこなくなったな」

  「ありがたいけどね」


翔太「そらそうだ」


ほどなくして二人は光が導く場所にたどり着いた。そこは他の部屋や廊下、テルト城内のどことも違う場所だった。例えるならばその場所だけ生態系が違うようなものだ。双幻森林とその中にあるアルラドの古遺跡では生態系が違いさらにそのアルラドの古遺跡とこの部屋は生態系が違う。


なぜそう思ったのか、それは部屋の中心で静かに眠る一匹の犬がいた。いや、それが本当に犬なのかどうかは分からないが見た目は狼や犬と同じだった。


二人は夜中に階段を音を立てずに降りるときのように歩きその動物に近づいた。


ジン「まだ生きてるみたいだけど目覚めそうにもないな」


翔太「あぁそれにしても思ってた場所と違うな。ここが隊の皆が言ってた”鉱宮(こうきゅう)”か」

  「なるほど、なんで生霊石の場所が(みや)って呼ばれてるのか不思議だったけど」


ジン「テルギアット王の家族だったんだろうな」


二人はとりあえず部屋に生成された生霊石を一つずつ採掘した。流石に採掘中は気を付けてはいたが少しばかり大きな音が出たが起きる気配はなさそうだった。


ジン「翔太、そっちはどうだ」


翔太「こっちも採掘できたよ」


目標の生霊石を手に入れ二人は部屋からでて城の外に出るため歩きだそうとしたとき部屋の外から多数の音が聞こえてきた。カサカサ、ヌルヌル、ブーンブーン、聞こえてくる音は全てモンスターがこっちに向かって来る音だった。


ジン「やばいぞこの音! 数がありえない!!」


翔太「嘘だろ? ありえないだろ!」

  「とりあえずここから離れるぞ! ここは流石にダメだ」


ジン「そうだな」


部屋から顔を出し音がする方へと向けると廊下を埋め尽くすほどのモンスターの大軍がこっちに向かってきていた。

それを見た瞬間二人は声も出せずに反対側に走り出した。ありえない数の異虫モンスターが向かってくる恐怖と単なるデカい虫の大軍に追われる恐怖の両方が二人の体を襲っていた。


ジン「”火想・短剣”」


走りながら後ろに火の短剣を放ち様子を見た。大半の異虫モンスターは火が弱点であることが多く案の定迫りくる大軍の先頭にいたモンスターたちは焼き尽くされた。しかし、そのほのを気にすることなく後ろにいたモンスターがそれを飲み込み何事もなかったかのように追って来る。


ジン「全然無理だ!! どうするよ!」


翔太「どうするって……そうだ! さっきの安全地帯(セーフティーゾーン)に行こう!」


ジンと翔太は全力疾走していた。先ほど少し休んだ安全地帯(セーフティーゾーン)に向かって、無我夢中で足を動かしていた。


「もう少しだ、頑張れ!」翔太が叫んだ。 「分かってる!」ジンは”火想”を使いながら答えた。意味があるかどうかは分からなかったが、攻撃を続けることでモンスターたちを牽制していた。


モンスターの大軍が二人を追い続ける中、ようやく安全地帯(セーフティーゾーン)が見えてきた。しかし、その前に異虫モンスターたちが立ちふさがっていた。


翔太「ダメだ、前にもいる!」


少し焦りが含まれたように翔太は言った。


ジン「脇道にそれるしかない!」


ジンはとっさに判断を下した。


二人は安全地帯(セーフティーゾーン)を諦め、脇道へと駆け込んだ。モンスターから逃げ続け、心臓が破裂しそうなほどにドクドクと振動し焦りと緊張が全身を支配していた。それでも二人は逃げ続けたすると、いつの間にかモンスターの大軍の姿は消えていた。


ジン「なんとか逃げ切れたか?」


息を切らしながら言ったジンに翔太も少し呼吸を整えてから答えた。


翔太「そうみたいだ...でも、ここはどこだ?」


翔太が周囲を見渡した。そこはとても広く天井も見えない。さらに奥には見慣れない椅子が並んでいた。ひと際大きい椅子が二つありそれらの隣に一回り小さい椅子が三つあった。


それを見た瞬間翔太の背筋は凍った。


翔太「おい、ジン……あれを見ろ……」


振るえた声で話す翔太に言われジンも奥の椅子を見た。


ジン「あれって……嘘だろ。まさか、王座……?」


ブーン! ブーン! ブーン! 部屋中に大きな羽音が響き渡り二人は音が聞こえてくる方向をすぐに振り向いた。二人が向いたのは天井が見えない上だった。


羽音はどんどん大きく近くなり羽音の主が姿を現した。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


次もぜひ読んでください。

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