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Anomalyの世界旅路:異変に魅せられた探索者  作者: 夏衒
異変に魅せられた少年
15/27

お祈り様

「何を食べようか……」


食堂の看板やメニュー表には人気メニュー、看板メニュー、オススメメニュー……和・洋・中と幅広い種類の料理と数多くのメニューの中にいろいろな言い回しを使った食堂の推しメニューがあった。


「人気ナンバーワンメニューが三つ、他のも……」


いくら何でも多すぎる食堂の推しメニューにジンやそのほかの初めて探索協会の食堂を利用する多くの受験者が悩んでいた。

「多すぎだろ……」「おい!しかもめちゃくちゃ安いぞ!」

多くの受験者が頭を抱えて悩んでいるとき、一人の探索者が食堂に入ってきた。


「うーん……」


その探索者も悩んでいるのか大きいモニターに映し出されたメニューを前に足を止めた。おそらくは朝から探索に出ていたのか、身に着けていたであろう装備には汚れがまったくなく、新品のようにきれいで男からはジンと同じ香りがしている。そして持っているバックは大きく膨らんでおり、おそらくは探索の成果だろう。


男は少し考えてから食べるのが決まったのか受付のところに歩いて行った。だが何やら男は交渉しているようで、男が食堂側に頼み込んでいるようだ。すると厨房から見るからに料理長というオーラを漂わせた人物が出てきた。

その人物は速くよこせというように手を出し、探索者はお礼を言ってすぐにバックから仕留めた獲物を取り出した。取り出した獲物は「異獣スノーラビット」だった。

食堂では探索者が持ち込んだ食材を使って料理を作ってくれることがあり、多くの探索者がこれを利用している。


探索者「スノーラビットでかつ丼一つお願いします!!」

料理長「スノーラビットだぁ?……はぁ、腕によりをかけて作ってやる!」


料理長はそう言って、スノーラビットを受け取り、厨房へと戻っていった。探索者は満足そうに微笑み、受付でかつ丼を注文した。

受付のスタッフは笑顔で応じ、注文を受け付けた。探索者は席に着き、料理が運ばれてくるのを待った。やがて、香ばしい香りが漂い、料理が運ばれてきた。


「お待たせしました。かつ丼です。」


探索者は目の前に置かれたかつ丼を見て、満足そうに頷いた。ジンや他の受験者たちもその様子を見て、次々と自分たちの注文を決めていった。食堂は賑やかになり、皆が美味しい料理を楽しんでいた。


美味しいかつ丼にありついて生気を養えた後、ジンたち受験者は午前の試験の結果を見にロビーエントランスに向かった。

試験結果の発表は12時50分で筆記と身体測定のそれぞれで合否が出るため、科目合格が存在する。科目合格の有効期間は2年間だ。両方の合格を持って課題試験を受けることができる。


もうすでにエントランスには、結果が張り出されておりそこには多くの受験者が群がっていた。ジンも少しの緊張を抱きながら結果を見に行った。

そこには……


輪凪ジン 筆記試験「合格」 身体測定「合格」


と書かれていた。


(「よかった……」)

身体測定で約6分超過したことに少し心配をしていたが心の中で安堵した。


ジンは試験結果を確認し、合格の文字を見てほっとした。次のステップは課題試験だ。彼は受付に向かい、課題を受け取るための手続きを始めた。


受付のスタッフはにこやかに迎え、ジンに課題の詳細を説明した。


「おめでとうございます、ジンさん。次のステップは課題試験です。こちらが課題の内容です。」


ジンは課題の書類を受け取った。


「そしてもう一つ、課題中はこちらの札を見えるように首にかけてください。試験ではありますが扱いは正式な依頼という形になります。つまり探索者達が受注するものと同じになりますので探索者の証明書を持っていない受験者の方にはこれが証明者になります」


渡されたのは木の板のようなもので板の下の部分が少し変わっている。見覚えがあると思ったら外食したときにたまにある下駄箱のカギに似ている。


「それでは、ただいまより課題試験が始まりす。明日の10時30分が課題の締め切り時間になりますのでお気を付けください。それでは頑張ってください!」


ジンは受付の人に送り出され、課題試験が始まった。明日の10時30分が締め切り時間であることを心に留め、まずは探索の準備を整えることにした。


課題の内容は、ある神社に生霊石を納めることだった。本来は宮司や神主が自ら生霊石を手に入れるのだが、宮司以外全員で払っているうえに、その宮司さんも歳で体が思うように動かないとのことだ。つまり、今回の課題は霊石を手に入れて、それを神社側に渡すこと。報酬は祈りをしてもらえるらしい。


生霊石は、神社に奉納することで、その神社の守護力を高めるとされている。また、個人が持ち歩くことで霊的な守護を受けることができ、特に重要な儀式や祈祷の際に使用されることが多い。

主な入手場所は古代の遺跡だ。遺跡には数々の罠や謎が仕掛けられている。探索者はそれらを解き明かしながら進む必要がある。


「生霊石と言えば、師匠が遺跡にあるって言ってたな……。とりあえず、明かりと地図、それにあそこは異虫のモンスターが出るから……」


ジンは協会の直営店に行き、光石を4個と遺跡の地図を一つ、そして解毒薬に明晰ポーションを3個ずつ購入した。準備が終わったジンは、最初に依頼元である神社に向かった。


探索協会から少し迷って車で約30分かけて神社に到着した。協会を出るとき事前に連絡をしていたため駐車場に車を止め神社の方に歩いていくと、鳥井の奥に宮司が待っていたがそこから見える神社の様子にジンは驚いた。


「お待ちしておりました。協会からは話は聞いています、初めての依頼だそうですね。わざわざありがとうございます」


宮司に礼儀正しくお辞儀されジンもすぐにお辞儀を返した。


「こちらこそ、よろしくお願いします……」


依頼主とのコミュニケーションは依頼達成において大事な要素だ。特に代役を任される依頼においては依頼主から得られる情報は何物にも代えがたい価値を持つ場合もあるからだ。


ジン「あの……少しお聞きしたいのですが……」

宮司「この神社の有様にございますか?」

ジン「そうです……」


ジンがこんな質問をしたのは、神社の状態がほぼ半壊状態だったからだ。


宮司「ここは遠い昔に廃神社となった場所です。今となっては主神の名前すらわからない状態にまですたれてしまいましたが、周辺の人達からはお祈り様と呼ばれていたそうです」

ジン「廃神社ですか……そんな場所なのにどうして依頼を?」

宮司「廃神社といえど元は立派な神社です、神聖な場所、神秘なモノ、それらがまだ残っているのです。ですので今回の依頼で生霊石を一つ手に入れてほしいのです。生霊石を奉納することで、この神社、この地の守護力を高めることができ土地が安定するのです」


宮司は壊れている社の前に置いてある木箱から小さな生霊石を取り出した。


宮司「生霊石は生エネルギーと霊エネルギーの両方に干渉することができる珍しい特性を持つ石で石自体は永久に使うことができますが、現実的に見れば長くて50年、早くて10年、平均的には30年に一度取り換える必要があるのです」

ジン「ちなみに今の生霊石は何年なんですか?」

宮司「今で27年になります。少し前の祭事に使用したことによって効力がほとんどなくなってしまいました」

ジン「なるほど……分かりました。それでは生霊石と遺跡の簡単な情報をいただけますか?」

宮司「かしこまりました。こちらへ」


案内された場所は社から右奥の方にある小さな倉庫のようなものと洞窟の入り口がある場所だった。


ジン「ここは?」

宮司「ここは古くに生霊石を採りに行く者が使っていた部屋を新しくしたモノです。と言ってもあるのは神社や遺跡の資料といくつかの道具だけですが」


宮司は「少しお待ちを」と言って建物の中に入っていった。その時、一瞬見えた中の空間は、外から見れば単なる倉庫に見えたが床には畳が敷き詰められており書斎のような空間が広がっていた。


「これを」


ジンは宮司から小さな笛のようなモノを渡された。古いものであることは、見た目からすぐに伝わってくる。


ジン「これは?」

宮司「これは霊音を出すことができる特別な笛となっております。生霊石は霊音に共鳴して綺麗な音を鳴らし発光します。我々はこの霊笛(れいふえ)を使い昔から生霊石を自ら手に入れてきました」

「そして遺跡ですが、遺跡にいる生き物にはわからない我々だけの目印が施してありそれを頼りに進めば迷うことはないでしょう」


笛を渡した宮司は洞窟の入り口の前に立つと、ろうそくに火をつけ洞窟の方へとろうそくの火を向けた。するとボワッ!と洞窟全体に光がともった。


「ここから先、向こう側はアルラドの古遺跡へと続いています。本来ならば双幻森林を通り遺跡へと向かわなければなりませんが、この洞窟を通れば双幻森林を無視できます」

「それともう一つ、アルラドの古遺跡にある王の間に近づくのはおやめください。あそこには強力な異虫が住んでいますから」


そうしてジンの課題試験が始まった。


そんなジンと宮司を見つめる視線があった。双幻森林にほとんど隣接しているこの廃神社は半壊しているせいか草木が神社を侵食していた。森林から注がれる視線は遠くから二人に気づかれない距離から注がれ続けた。まるで監視をしているように……

ここまで読んでくださりありがとうございます!


次もぜひ読んでください。

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