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Anomalyの世界旅路:異変に魅せられた探索者  作者: 夏衒
異変に魅せられた少年
12/28

第二関門

「アタシと協力しないか?」


突如として投げかけられた言葉に、一瞬驚いたジン。しかし、話を聞けばどうやら彼女――彩だけではなく、フリーガという受験者を中心に、今ここにいる者たちが協力し合って試練を突破しようとしているらしい。個々の力では厳しいと判断した者たちが次々と賛同し、今やちょっとしたグループが形成されつつある。


「もちろんだ、こっちにとってもありがたい」


即答するジンに、彩は安堵の笑みを浮かべ「ありがとう!…ゴザイマス」と少したどたどしくお礼を述べた。


「はははは!」その様子に思わず笑ってしまったジンに少し恥ずかしいそうに「な、なに笑ってるんだ!」と怒った。


「もしかして、敬語あんまり得意じゃない?」


その言葉に芯を突かれたのか「うっ……はい…アタシ、孤児だから。綺麗な言葉っていうのは慣れなくて…」と彩は少したじろいだ。


「気にすることないさ。俺には敬語なんて使わなくていいよ。年齢は俺のほうが上かもしれないけど、探索者としては同期なんだし」


「っ!わかった!ありがとう!」


ジンの言葉に彩はぱっと顔を輝かせると、小さく頷いた。


「それじゃあ、ついてきて。みんながいるところに案内するから!」


こうしてジンは彩に導かれ、フリーガをはじめとする受験者たちの元へと足を運んだ。そこにはすでに七人の仲間が集まり、試練を突破するための作戦を練り始めていた――。


「皆、一人連れてきたよ」


彩の声に、一同が振り向く。ジンは軽く息を整え、一歩前へ。


「よろしくお願いします、ジンです」


「よろしく、俺はフリーガだ。協力、感謝する」


それぞれ簡単な挨拶を交わした後、フリーガが場を仕切り、自己紹介と自身の醒力について話し始める。


「イスカさんの話によると、アースドラゴン自体に機動力はない……が!それを補って余りある攻撃範囲の広さと、召喚する竜兵ゴーレムの厄介さがある。正直、さくろうしてどうにかできる相手とは思えない」


言葉に重みがあり、皆が慎重に耳を傾ける。


「意見、いいか?」不意に、浩二が口を開いた。


「もちろんだ」


「浩二だ。俺は醒力を持たないノーマルだが、こいつを媒体に氷を扱える。召喚されたゴーレムなら、一時的に足止めできると思う」


その言葉に、イスカがすぐさま反応する。


「なら、ここは分かりやすく、本体とゴーレムを相手するメンバーを分けて突破を目指すのはどうだ? 今の位置は、先につながる道の前に居座っている。なら、数人でアースドラゴンに仕掛けて、移動させれば突破できるんじゃないか?」


「……それでいくか……」


フリーガが考え込みながら頷く。作戦は固まった――が、問題は人数不足だった。


それでも、やるしかない。


そう覚悟を決めたその時、森の奥から新たな影が現れる。


「それ、俺たちも参加していいか?」


突如として響いた声に、一同が振り返った。そこには五人の受験者が立っていた。その中でも、黒いローブを身にまとった男が一歩前へ。


人数が増えるのはありがたい。成功の確率もぐっと上がる。


「こっちも助かる。俺はフリーガだ、よろしく。これなら上手くいきそうだ」


フリーガはローブの男に近づき、手を差し出す。


「こちらこそ。俺は滋田游河しだゆうが。呼び方は游河でいい、よろしく頼む」 「あぁ!」


游河は差し出された手をしっかりと握り、それを皮切りに、他の受験者たちも軽く挨拶を交わした。そして作戦をより明確にするための話し合いが始まり――その後、彼らは静かに散開した。


作戦はシンプル。


フリーガ、イスカ、游河、そして後から合流した秀太しゅうたの四人がアースドラゴンの足止めを担当。他の八人は二人一組で散らばり、フリーガの合図と同時に一斉に飛び出す。


ジンたちもアースドラゴンへの攻撃を行い、意識を分散させる。しかし、もし竜兵ゴーレムを召喚された場合、フリーガら四人以外がそれを対処し、個別に集中攻撃されないように立ち回る――最終的に、関門を突破する。


ジンは誘いをくれた彩とペアを組み、もともと身を隠していた岩陰へと戻った。


「それじゃあジン、合図が出たらすぐに飛び出るよ」 「もちろん」


二人は息を潜め、静かにフリーガの合図を待つ。軽く周囲を見回せば、游河たちのさらに後から森を抜けてきた受験者たちが身を潜めていた。彼らもまた、アースドラゴンをどう突破するかを考えていたのだろう。


戦いの火蓋が、切って落とされる時は近い。


「良い判断だな。機動力の無いアースドラゴンに対して、多方面からの突破を試みるのは有効的な作戦だ。今回の受験者は、協調性がある奴らが多いんだな」


制御室で試験の様子をモニターしていた大晴は、画面に映るフリーガたちを見ながら感心するように呟いた。


「協調性は探索者としてやっていくには必要な能力だからね。広大なAnomalyの中では、知らない探索者と突発的に協力することが多い」 トーレが肩をすくめながら言う。


「ガロちゃんも久しぶりの参戦だから気合入ってるね!」 ミノが陽気に笑う。


「流石に加減をしろとは言ったから大丈夫だろ。バランス感覚には優れてるからな」 大晴は苦笑しながら答えた。


「ちゃんとご褒美は用意してありますよ」 ルウが自信満々に言うと、トーレがすぐに反応する。


「あー!それ見た!倉庫に山積みになってるの。食いしん坊だからな」


「まったくだ……おっ!」


その時、画面の中で動きがあった。試験場ではフリーガが慎重にアースドラゴン――ガイロスへと接近していたのだ。


静かに、しかし確実に間合いのギリギリまで歩を進める。フリーガの手はすでに剣と盾を構え、いつでも動ける体勢を整えている。


しかし、未だガイロスは彼に視線を向けていない。


まるで、眼中にないかのように――。


静寂が支配する。その緊張に耐えきれず、先に仕掛けたのはフリーガだった――。


フリーガは一瞬の迷いもなく、アースドラゴンへと飛び出した。猛然と距離を詰める彼に対し、アースドラゴンは吠え声と共に巨大な岩を勢いよく投げつける。


しかし、フリーガの動きはまるで風をまとったかのように軽やかだ。迫りくる岩の弾幕を華麗に躱し、さらに踏み込む。


だが、アースドラゴンの猛攻は止まらない。地面から鋭い円錐の岩が槍のように突き上がり、フリーガを襲った。


(これも飛び越える!)


大きく跳躍し、鋭い岩の罠を飛び越える。そして、その勢いのままアースドラゴンへと迫る。風を切るような速度で、一気に間合いへと飛び込んだフリーガは、力強く地面を踏みしめ――


その瞬間、地面が割れた。


「なっ!?落とし……!!」


足元が崩れ、バランスを崩したフリーガは、迫りくる地の罠に対応しきれず、宙へと投げ出された。


(俺の動きを読んでいたのか!?)


彼は思考を巡らせる。岩の投石、地面から触手のように迫り上がる土柱――これは、イスカが言っていた"土柱つちばしら"の一つか。まだゴーレムの召喚はない……ならば――


(やるしかない!)


フリーガは何とか体勢を立て直し、空中で構えを取った。しかし、空中では逃げ場もなく無防備。そこに、アースドラゴンは容赦なく追撃を放つ。


左右から迫る二本の土柱。その鋭い突端が、一直線に彼を狙い、伸びてくる。


(今だ……!)


「”風刃ふうじん”!!」


刹那、フリーガの声が響き渡った――。


ズバッ!! 伸びてくる土柱を真っ二つに切り裂いた風の斬撃は、勢いを落とすことなくアースドラゴンへと迫る。しかし、その巨体は即座に反応し、分厚い土の壁を作り出す――。


ドガンッ!! 激しくぶつかり合った二つの力。風刃はアースドラゴンには届かずとも、土の壁は砕け散り、大量の土埃が舞い上がった。


「合図だ!」 彩が声を上げる。


「――あぁ、行くぞっ!」 ジンは即座に返し、一気に飛び出した。


フリーガが出す合図は、アースドラゴンへの初撃ファーストアタック。それこそが、敵の意識が最もフリーガに向く瞬間――そのタイミングこそが、受験者たちが動き出す合図。


その刹那、多方面から一斉に飛び出す受験者たち。その中には、作戦を知らない者たちもいたが、絶好のタイミングを逃すまいと、ジンたちの動きに続いた。


「ガァァァァ!!!」 突如として響く咆哮。


視界を塞ぐ土埃の中から、アースドラゴンが咆哮を放つ。それと同時に、舞い散る砂塵の奥から、多くの人型の岩が姿を現した――。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フリーガ・トロス


種族:人間 醒者


性別 男

年齢 25歳


醒力 「嵐風」


使用武器

風流石の直剣——疾風の一閃が宿る刃


風流石の中盾——防御と瞬発力を両立する風の守り


風流石(ふうりゅうせき)とは風の力が宿る特異な石。その神秘は、熟練の鍛造師によって武器や鎧へと編み込まれる。風流石には絶えず風の力が巡り続け、その力はまるで生きているかのように持ち主へと馴染んでいくという。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


次もぜひ読んでください。

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