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心につけるお薬

イタリアについてから、ずっと夜の蒼さに感動している。ラピスラズリの夜とか、サファイア色とか、日本でみる夜空の色や明度とは明らかに異なっている。


ポテポテと歩くタムくんにどうやって言葉を掛けようか。特徴的な柱の路地を抜けながら、街の中央にある、赤茶色の四角い広場に戻ってきた。ここからバスに乗って、車を置いてある駐車場に戻って、ホテルに向かう予定なんだけど、どうしよう?


「あ、タムくん、お腹空いてるよね?さっき空っぽになっちゃたから」

「すいません。ご迷惑をお掛けしてます」

「こっちこそ、気がつかずにごめんね。大丈夫?」

「あ、はい。」

「なら、さっきのお店でお茶だけでもしてこうか?バスは24時間?」

「はい。パークアンドライドは自動運転バスで街と駐車場を結んでいるので」

「ハイテクだよね、この世界」

「街の中央部は歴史や建物を維持するために徒歩なので、ハイテクと言われると悩ましいです」


角が丸い石畳の上にはアーチが張り出していて、日差しを遮っている。如何にも昔から変わってなさそうな感じの赤茶色に、明るい蒼い空にお店の電球の光が混じっている。


「Hello!ボローニャ1のタリアテッレは如何?」

「いい匂いだね、ここにする?」

「ここ、たぶんレストランです。タベルナの方が」

「Non!ここはタベルナだよ、大丈夫だよ若い人。ちょっとぐらい、いいお店に入るのも経験さ、ね?サービスするよ」

「とりあえず入ろうか」


タムくんに聞いたところ、レストランはドレスコードがあったり、東洋人差別で席がトイレの前になったり、配膳が遅かったり、お釣りを返さなかったりとやられてしまうらしい。


「満席だね、ここ」

「そうですね。」

「初めてかい、可愛い人?ここはボローニャ料理の店だけど、ラヴェンナ直送のシュリンプもあればおすすめだよ」


常連ぽい人たちに話しかけられてあれこれおすすめを教えてもらう。ボローニャの観光用のお店だとかなりぼったくりもあるらしく、いい店に来たね!と褒められた。


お茶だけでもいいけど、この匂いはずるい。


「タムくん、ちょっと食べて行こうか?」

「あ、はい。ならスープとか」

「お兄さん、ならボローニャ伝統のスープパスタにするかい?うちのはタリアテッレを纏めたパスタかカルガレッティか選べるよ」

「他におすすめあります?あ、ボロネーゼは食べました」

「うちのボロネーゼは絶品なんだけど?まあ、みんなのおすすめが、おすすめなんだけどね」

「みなさんのおすすめはアンティパスト(前菜)にシュリンプ、ラザニアにステーキとドライトマトのサラダでしたか」

「うーん、ねえ、タリアテッレをなぜ勧めてくれないんだい、ジョン?「はは、忘れていたんだ」まあ、ならアンティパストにドライトマトはサービスするよ。ラザニアよりはスープパスタの方が旅行者には珍しいかもね。シュリンプはステーキにちょっとだけサービスしてあげる。」

「あ、ならワインください。おすすめのやつ」

「Non!未成年者に飲ませるお酒はないよ!」

「え?あ、違います。僕らもう大人です」

「「え?」」


IDを見せて、驚かれる。日本人は若く見られるらしいけど、まさか、未成年に間違われるとは、ちょっと嬉しい。


「来訪者様とか、本当にびっくりだね!」

「いや、お店に天使が来るとは、気合いが入るね!」

「一番いいおさ」「大丈夫です!気にしないで!」


こんなに賑やかになっているのに、タムくんは黙ったまま。どうしよう。

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