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魔法と性格

「ワイン飲んで、パスタ食べて、高い塔に登れば、まあ、そうなるよ」

「ずいまぜん」

「気にしないで、吐くだけ吐いちゃおう。そしたら薬飲んで軽い魔法を掛けるから。全部魔法で治すと、代わりにだいぶ体力使っちゃうんだって。だからもうちょっとだけ頑張って」


古色蒼然とした建物に、近代的なリノリウムの床と清潔な衝立の一室。


『救護室』


脂っこい食事して、ワイン飲んで、そのまま運動。いくら若くても無理だよね。アテンド中の緊張もあっただろうし。


塔の頂上で体調が悪くなったタムくん担いで急いで降りてきた。


「恥ずかしいんですが」

「ぐったりしているのになに言ってんの!?」


入口にある救護室に駆け込んで、看護師さんにタムくんを差し出す。


「パスポートと保険証を貸してください」

「はい」

「旅行者は治療費全額を今、お支払い頂き、後からお渡しする治療証明書で保険請求をしてください。もしヨーロッパ内に3ヶ月以上在住であればデポジットで130€をお支払い頂いて後日清算も可能です」

「あ、旅行者なんで全額支払います」


結果として、治療は吐気止めの薬と点滴3袋、応急処置で98€。魔法は俺がやるからOK。


見積もりのデポジットより安く済んだ。まあ、日本だと保険で3割、3500円ぐらいと考えると、ヨーロッパだからと劇的に高い訳じゃないし、緊急医療なんて同じだな。


子どもが小さい頃に熱を出して運びこんだ日を思い出した。懐かしいな。あのときもこんなふうに処置室で待ってた。子どもは突然体調が変わるから、その度に医者に駆け込んでた。


「お願いしまーす」

「あ、はい」


寝転がってるタムくんは、ステータスウインドを通して見れば、バッドステータスの吹き出しが付いている。


「じゃあ、魔法を掛けます」

うわ、ドキドキしてきた。初めて人に魔法を使う。


「タムくんが良くなりますように」


コマンド名「タムくんが良くなりますように」を選択。なんだよ、この魔法名、なんかかっこいい名前とか、ケアルとかホイミとか、あるじゃない?


「え?もう」


なんのエフェクトもなしに魔法が発動したらしく、タムくんのバッドステータスが消えて、顔色が良くなっていった。


「さすがですね、来訪者様の魔法は」

「いえ、なにもしてないです。あ、点滴とかエチケット袋とかの始末とか、ありがとうございます」

「いえいえ、仕事なので。看護師ですから。あと20分もすれば回復するでしょう。暑さもあります。長毛種の方は、猿種の方より暑さに弱いので散歩はほどほどになさってくださいね」

「春先ですが、確かにちょっと詰めすぎていました」

「観光は時間がないからと計画を詰めすぎになりがちです。まあ、私もやってしまいます」


看護師さんたちと会話しながら「観光あるある」と注意を話す。ついでに揚げたカルツォーネの店やイタリアならではのお菓子に日本の柿ピーの話をする。


イギリスのバーでわさび味の柿ピーが流行っていてイタリア北部、ミラノでも食べれるらしいが、バー自体が高級バーで行ってみたいが躊躇している、と。


味だけならと、Googleマップで日本食材店と柿ピーわさび味のパッケージを教えたら喜んでくれた。今回面倒を見てくれたアリクイのお姉さんは宅飲み派らしい。


よし、次から気をつけよう。しおりに「お酒を飲んだら高負荷な運動は控える」と書き込んでおいた。

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