一欠片の温かさ
お昼寝から目を覚ましたとき、これはもううだうだしてはいられないのだと、わかってしまったんだ。
「あれ?起きられました。おはようございます。もうすぐボローニャですよ」
「あ、ごめん。うたた寝してた」
「結構ハードスケジュールかもしれませんね。もう少し間空けましょうか?」
「いや、逆に詰めて欲しいかも。俺さ、こっちにいられるの一年しかないんだ。だから行きたいとことかやりたいことを全部やりたい」
「世界征服とかですか?」
「いや、やらない。そうじゃない。俺さ、向こうだと、ほんとしがないサラリーマンでしかないのね。だからさ、ほんとは全然全くこんな優雅な旅なんかできないんだ。だから、一生分の綺麗なものとか美味しいものを持って帰りたい」
「向こうに持っていけるんですかね」
「あ、それは違うかな。説明不足でごめん。あのね、いっぱいの思い出が欲しいんだ。つらいこととか嫌なことがあっても、でもいいこともあった、だから、俺の人生は捨てたもんじゃなかったって」
「思い出なら、これから一年、俺含めたナビ達も絶対後悔させないんで」
「頼りにさせて」
「もちろんです。さあ、いにしえから続く大学の街、赤煉瓦色のボローニャが見えてきました」
ババーンって楽しげに効果音を口にしてくれるナビゲーター
目が覚めた時、手の中には、チーズケーキの一切れがラップに包まれていた。
そっとアイテムボックスに入れた。




