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星に願いを

別に、何がある訳でもなかった。

ただ、ただ、暇だった。昨日も今日も明日も。


単なるパチンコ帰り。勝ちもしなけりゃ、負けもしない。俺の人生はそんなのばかり。


高専出て、仕事探して東京に出てきたけど、学卒じゃないからと、関東平野の端に飛ばされて、今や趣味はパチンコ。


東京のライブハウスとかで仕事を片手間に、ミュージシャンになってやりたかったけど、日々の生活に埋没して辞めてしまった。埃を被っているギターは夢の残骸。


クルマに乗り込んで、どっかり座る。景品を後ろに投げ込んで、タバコを咥える。


それなりにモテたけど、好きになった奴を口説き落として、子供達もいる。家もあるし、仕事もある。役職もあるし、部下もいる。


不満はそれなりだが、まあ、別にいい。

そんなありふれた俺は、運転席でハンドルにのし掛かりながら、フロントガラスから星を見ていた。


俺の顔が少し反射して、それを透過して、星が見える。今日は牡牛座の流星群だっけ。


パチンコ屋も不景気なのか、駐車場に灯りはない。俺がみたのは、ど田舎屋外の駐車場のだだっ広い視界が開けた場所で展示された、Aピラーとルーフが額縁となった「絵」だった。


願いごと。今なら誰もいない。誰かの目を気にして格好つけなくていい。素直になりたい。


「っ、自由がほしい。強くなりたい。俺は、諦めたくない!!」


悔しかった。冷たい目を向けてくる部下も、理不尽な上司も、俺を立ててくれない配偶者も、騒がしい子供達も。壊れないように立ち振る舞い続けるのに、疲れていた。


空が涼やかで透き通った青白い光で満たされた。星が目一杯に光っている。


最期に見たのは。

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