表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/50

第39話 王女奪取と尊い犠牲

「花咲け‼ 囲え‼」


 私は壁とトゲトゲの四辺でマナ様を囲むように、トゲトゲを発動させた。



(ズドドドッ)



 轟音と共に天井を突き破って、トゲトゲが上に伸びていく。


「アシュリー‼ 王城の屋根までトゲトゲが抜けました」


 外で観測していたティボーの声が聞こえる。


「止め‼ 停止確認良し‼ 続いて第2フェーズ。マナ第1王女、柱にくっついて動かないでくださいよ~」


 私はマナ第1王女に注意喚起を入れてから唱える。


「枝木よ伸びろ‼ 壁を突き破れ‼」


 ここで、私も王城の外へ出る。


 マナ王女の部屋の壁から細いトゲトゲが突き破って出てくる。


「停止良し‼ アルベルト閣下、準備はいいですか⁉」


「やってくれアシュリー!」


「行きますよ~。花咲け‼ ハエ取り草‼」


 ハエ取り草は花なんて咲かせないけど、細かいことは気にしない気にしない。


 ハエ取り草が口を開けているようなトゲトゲの中に中腰で座ったアルベルト閣下が、私の号令で上空へ打ちあがる。


 座標はぴったり。マナ第1王女の壁から伸びたトゲトゲにピタッと重なる位置にハエ取り草は止まった。


 これぞ2人の愛の逃避行のための懸け橋と昇降機です。


 あ、デザインへの苦情は受け付けません。


 この形状が最も安全性の高いデザインなんですから。


 懸け橋の部分は、ちゃんとアルベルト閣下たちが渡りやすいように平らに馴らしてますし、もしものための手すりまで完備。


 ハエ取り草型の昇降機は、内側のトゲに獲物が触れると自動的に閉じて獲物を捕らえる仕組みから、トゲトゲとの共通点を見出して作ってみました。


 お、そうこうしている間に、アルベルトさんが姫様を抱えて昇降機に乗り込みました。


「花散れ、ゆっくりと」


 私が唱えると、ハエ取り草型の昇降機がゆっくりと下降してきました。


「マナ様、御当主様。御無事で何よりです」


 ティボーが安堵の声で2人のもとへ駆けよる。


 私は先に、他のトゲトゲも元に戻す。証拠隠滅完了っと。


 さてさて、2人の感動的な再会の様子をこの目に焼き付けるとしましょうかね。


 と、私がアルベルト閣下とマナ第1王女の元へ向かうと、


「へぇ…… この女が例のトゲトゲ聖女様ね」


 あ、あれ? 何だか私が期待していた甘い雰囲気じゃないです。


 というか、脱出が成功したというのに、マナ第1王女の意識が即座に私に向いているのは何故でしょう?


「マナ…… だから彼女は」


「あなたは黙ってらっしゃい。これは女同士の問題です」


「はい……」


 アルベルト閣下がシオシオと引き下がる。


 あれ? アルベルト閣下の方がマナ王女より大分、年上のはずですが、さっそく尻に敷かれていますね。


 マナ第1王女は私の正面に相対する。


 ふわぁ…… 初めてお姿を拝見しましたが綺麗な人だな。

 アルベルト閣下が一目ぼれしたというのも頷けます。


「……そうやって媚びてアルベルトに取り入ったの?」


「は、はい?」


 私は本当に訳が分からず、間抜けな声を上げた。


「あの……マナ様。すぐに逃げねばなりませんのでその……」


 ティボーが助け舟を出してくれるが、キッ! と目線だけでマナ第1王女にティボーが黙らされます。

 男性陣が役に立たない……


「私はアルベルトの婚約者です。あなたの入る隙間なんてありませんよ」


 そう言って、私に見せつけるようにグイッとアルベルト閣下の腕にしがみつくマナ第1王女は、ちょっと無理をしているのか恥ずかしそうに頬を赤らめています。


 可愛い。


 うんうん、これぞ私が求めていたものですよ。


「ん……? あなた……」


 あ、そう言えばアルベルト閣下に聞きましたが、マナ第1王女は人の心が読めると聞きました。


もしかして……


 マナ第1王女がなぜ不機嫌で私に敵意のような物を向けているのか、ある仮説が浮かびました。


『あの…… もしかして私がアルベルト閣下と懇意にしていると思われてます?』


 私が心の中で、マナ第1王女に問いかけると、マナ第1王女は大きく頷いた。


『やっぱり…… 安心してください。私にそんな気持ちはありませんから』


「信用できないわ」


 アルベルト閣下とティボーは、マナ第1王女が声に出して問いかけている部分だけが聞こえているので、私の内心での言葉は当然聞こえていない。


 故に、会話の内容は2人には解らないが、何やら緊迫した状況というのは解るようで、ハラハラとした顔で見ている。


『えっと…… 私、他に好きな人がいるので……』


「誰?」


「え?」


「誰なの?」


「えっと…… その……」


 もう時間もない。早く逃げないといけないんだから、早くマナ第1王女の不安を払拭させてあげなくては。


 な、なんで……


2人の愛の逃避行をニヤニヤ間近で見てやろうと思っていた私が、なんでこんな辱めを受けることに……



『い……今、私の隣にいる人です』



 私は恥ずかしさからプルプルしながら、隣にいるティボーをこっそり指差しながら、心の中でマナ第1王女に白状した。


 心が読めるんなら、私が正直に答えたってわかりますよね?


 マナ第1王女は私の方をジッと見る。


「「「 ………… 」」」


 と、フッとプレッシャーが和らいだ。


「……私の誤解だったみたいね。本当にごめんなさい」



「「「 はぁ…… 」」」



 思わず、息を吐きだす私とアルベルト閣下とティボー。

 私の尊い犠牲により何とかなりました。


「本当にごめんなさい。あなたのおかげで助けてもらったのに私……」


「いいんですよマナ第1王女」


「でも……」


「あ、じゃあ今度、アルベルト閣下との馴れ初めと、さっきの感動の再会時について教えてください。それでチャラです」


「おい⁉」


「アハハッ! いいですよアシュリー。後でいくらでも聞かせてあげるわ」


「マナ…… さっきまで随分、アシュリーを敵視していたのに急に仲良くなって……2人でこっそり何の話をしていたんだ?」


「それは乙女の秘密です。ね? アシュリー」


「はは……そうですね」


 マナ様はフフッと笑った。

 私の秘密を握ったが故の余裕ですかね。

 帰ったら、エレナも交えて恋バナして、同じようにマナ第1王女の秘密も握り合うしかないですね。これは


「さて、逃走路についてですが。アシュリー、手筈通りにお願いできますか?」


「はい。このまま最短距離でゼネバルの森へ突っ込みます」


「え⁉ ゼネバルの森に入るのですか?」


 何だか久しぶりの反応ですね。


「大丈夫だマナ。アシュリーがいれば問題ない。俺を信じろ」


「アルベルト……」


 お、ようやくイチャイチャが始まりますかね。


 うんうん、これぞ私が求めていたものですよ。


「アシュリー、恥ずかしいからあんまり見ないで」


 おっと、心の中が読めるの忘れてました。

 これからは心を無にして愛でないと。


「アシュリィ~~」


「それでは参りましょう。私が先導します」


 これ以上、心を読まれては適いません。


 色んな意味で、早い所逃げた方が良いですね。


「ちょっと待っ! あ……ごめん、何でもないわ」


「マナ、どうかしたか?」


 何でもないという事はないとう様子のマナ第1王女に、私たちは歩を止めました。


「その…… これは私の我儘なんだけど…… 妹を助けてあげられないかしら」


「妹君というとポーラ第2王女ですか? しかし、あの方は……」


「実は、ポーラは婚約者に裏切られていたの。その婚約者のフェルナンドは実は帝国のスパイで、この反乱も奴が仕組んだことなの」


「え⁉ そんな陰謀が隠れていたのか⁉」


 アルベルト閣下も驚いてマナ王女を見ています。


「私も、ついさっき全貌を知ったの。おそらく王家は私も含めて根絶やしにするのが目的ね」


「恐らくお父様はすでに…… けど、ポーラだけはまだ助かるかもしれない。さっき、心の声が微かに聞こえたから」


「では救助に」


「いいえ、なりません。この場合、帝国側が一番困るのが王族の生き残りがいることです。フェルナンドは、王族を根絶やしにして王族は国を捨てたと喧伝し、フェルナンドが実験を握って、アルバート王国を帝国の傀儡とすることでしょう。だから、私は生き残ることが王族としての務めです。よって、今、危険を冒して妹を助けに戻る訳にはいかないのです」


「マナ……」


 そう言いながら、震えて拳を握りしめているマナ第1王女の肩を、アルベルト閣下が抱く。


「妹さんの事、大事に思ってるんですね」


「そんな事ない…… あの子は私の事を嫌ってるわ。私は務めから逃げて、そのせいであの子に全てを背負わせてしまった。だからこれは私のちょっとした罪滅ぼしみたいなもので…… それに貴方たちを巻き込む訳には……」


「マナ第1王女は、他人の心が読めるけど、ご自身の心を隠すのは下手くそですね」


「な……⁉」


「僭越ながら私もそう思いました」


 ティボーも察しが良くて助かりますね。

 もう少し、その察しの良さを私に向けてくれてもいいと思うんですけどね。


「ティボー、やってくれるか?」


「はい。御当主様の未来の花嫁の願いとあれば、否やはありません」


「頼んだ」


「イエス マイロード」


 むむ……


相変わらず2人の世界にすぐ入る……


『マナ様。真の恋のライバルは私なんかじゃなくて、こ奴ですよ。こ奴』


 そう心の中で毒づきながら、私はこっそりマナ第1王女にしか見えないようにティボーを指さした。


「あ、ありがとうティボー。私の我儘を聞いてくれて……よろしく頼みます」


 私の心の声を聞いたせいか、泣き笑いのような表情で、マナ第1王女はティボーに礼を言った。


「それで、第2王女はどこに?」


「王族しか知らない地下通路です。入り口はちょうど、私の部屋の階下の地下室です。隠し扉のダイヤルの番号は5394です」


「わかりました。必ず助け出します」


「ティボー、気を付けてください。これ、持って行ってください」


 私は、先ほど使った金属棒で槍型のトゲトゲを作ってティボーに渡した。


「御当主様とマナ様のこと頼みます」


 そう言って、ティボーはトゲトゲの槍を背負って笑った。


「城の東側にゼネバルの森を突っ切るトゲトゲの道を作ります。そこが無理なら私たちが往路に通った道を。天幕を置いたままの最後のキャンプ地を合流ポイントにしましょう」


「はい、それでは」


「後で」


 私たちは、それぞれの目的地へ動き出した。










引き続きお付き合い頂ける方はブックマーク評価等よろしくお願いいたします。


執筆の励みになっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ