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第8話《再会》

「一日の滞在ですね、どうぞ」


(豊かな村のようだけど……活気がないな)


 髪や目色も変わってるのでものは試しにと容易に関門に近づいて軽い問答だけで通れたことにあっけを取られる。


 そして村全体を見ると、建物は新しい木で作られたものがまばらで牧歌的な美しさを感じさせる。村人たちの顔色も良い。 むしろ、服も整っていて村から悪臭が響かない。


 整っていてそれでいて全員の健康状態がいいというのは、つまるところ豊かな村だということだ。だが、だというのに村人たちはどことなく元気のない顔をしている。


『……なるほど、どうやらなんらかの厄介事を抱えていそうですね』


(早めに通過したほうがいいだろうか?)


『その厄介事がまつりごとならば去るべきですが、魔獣などが原因であれば討伐すべきでしょう。より強いものを狩り、魂を喰らえば力の回復も早まります』


 戦闘がしたいだけじゃないのか?と一瞬怪訝そうになるも、ため息を吐いてそのへんの椅子に座る。───どことなく座り心地が柔らかく、あたたかい。


 クッションだろうか?

そう思い後ろを向こうとした瞬間。


「ひゃっ!」

少女の声が響いた。


「す、すまない!すぐに……え?」

 反射的に謝罪を行いながら立ち上がり、声の方向を向くとそれは見知った顔だった。

 

「い、いえ!おきになさら……ず?」

 そして向こうもそうなのだろう。

茜色の髪、暗い蒼眼と明るい碧眼のオッドアイ、白い肌にぷるんとした唇。そして背丈に比べて豊かな胸と細い足。


 だが、その服装はまぎれもなくメイドが身にまとう使用人服であり───俺は目の前の少女を知っていた。



「シ、シルヴィア?」

 その声を聞いて、目の前の少女は顔を赤く染め。

そして涙袋から溢れんばかりの涙をぽろぽろとこぼしはじめた。


「わ、若様ぁぁぁああああ!!」







─────


 ひとまず村人たちの視線もあるので、村の端にあるまだ色の青い麦畑の近くに移る。


「ひぐっ、ひぐっ!うっ、うぅ!わ、若様!若様!生きておられたんですね!うぅ!……あれ?でもなんで髪の色と目が?」

 綺麗な顔だと言うのに鼻水をずるずる、涙をぼろぼろとこぼしながらシルヴィアは泣き腫らしていた。

 

「あ、あぁ。ちょっといろいろあったんだ……」


「うぅ!そうだったんですね……可哀想な若様!こんなボロボロになってぇ!」


 一応道中の川で血を洗い流したものの、ぼろぼろなのは変わりない。そしてシルヴィアは以前と変わらず実の姉のように心配してくれる。


『感動の再会は結構ですが、まずなぜここにいるのかを聞くべきでは?』


 リオンの声が響く。

だがやはり、シルヴィアのように他の人には聞こえていないようだ。確かにそれは聞くべきだと思っていた。


「でも、シルヴィア。なぜこんなところに?君は邸宅の付近からは基本出なかっただろう?」


「実は─────」

 シルヴィアはふきふきとハンカチで涙と鼻水を拭くと、赤く泣き腫らした目を俯かせ、話し始めた

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