第4話《魂喰〈ソウルイーター〉》
『先程の死の幻夢とは異なるもう一つのスキルとして魂喰というモノがあります』
グスターヴは静かに息を潜め、脳内に響く幻竜姫の声を聞きながら焚き火を囲むごろつきたちを見据える。
(人肉を食うわけではないのか?)
『そういった手法もありますが私は好みません。なにも下級の竜や亜竜如きならいざしらず、直接血まみれた肉を口に運ぶのは上品ではないでしょう?』
グスターヴは納得したような……そうではないかのような表情を浮かべ、梟の声が響く鬱蒼とした林の中から中腰で歩みを進める。
『このスキルを使うことは簡単です。心中で念じ、敵を殺すだけ……そうすれば魂を食らうことができます』
(簡単に言ってくれるな)
グスターヴはそう心中で愚痴を吐けば、先程崖に落ちて死んだ手下が付近に残していったナイフを手に構えた。
「ふわぁ……ちっとばかし小便に行ってくるぜ」
宴もたけなわ、ごろつきの1人が尿意を催しグスターヴの付近……少し奥の樺の木へと歩み始める。
心臓を一突きすれば確実に殺せる距離。
しかしあと2名が焚き火を囲み談笑していることがわかる。
酒に酔っているとはいえど、大きな疲労を背負ったグスターヴにとって相手取るのは現実的ではない。
だがそこで、グスターヴが唯一の活路として導きでした答え。──それは一人ずつ確実に殺すという、彼らしい几帳面な計画だった。
まずは一人。小便を出すために幾ばくか脱力した肉体の正面から一気に突っ込む。
(この男の魂を吸い取れ……!)
「ぎゃっ!?な、なん───」
そして室内用ナイフを抜くと、静かに余計な悲鳴がたたぬようごろつきの息の根を止める。
『識別完了……大した能力はありませんが、僅かな栄養摂取にはなります。この魂の大きさなら、この付近……キャンプ地程度の広さならば死の夢幻を使えば一網打尽にできるでしょう』
(……済まないが、せめてオレのことは恨むなよ……!)
そしてグスターヴはこの声を無視してそのまま他のごろつきがいる場所へと来ながらも、少なからず頭を悩ましてしまう。
『では、最後の処理と致しましょう』
(あぁ、これでひとまず最初のケジメは着けられる)