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第13話『冒険者ギルド』

 ───遺跡迷宮(ダンジョン)怪物(モンスター)……一度は誰しもが夢見るそれを探し当て、探求する自身の命を賭け金にしたギャンブラーたち。


 それが"冒険者"

……だが、実際はそうたいしたものではない。


 俺が生まれるほんの1年前……17年前の"大変動"によって、このハイダリアは大きく変わった。かつて残されていた宝の眠る遺跡や竜墓は大変動によって殆どが崩壊した。


 その結果、冒険者たちは夢を追うのではなく日雇い労働者へと落ちぶれたんだ。


『要するに身の程をわきまえない墓荒らし共が元の鞘に収まったということではないですか。よいことです』


(確かにそれは事実なんだけど、実際そのせいで冒険者の評判は大きく落ちた。今まではある程度危険な場所があることで短命な仕事だったぶん、ごろつきは淘汰されていて治安の均衡を守っていたけど───今はそれがない)



 ゴブリン狩り、凶暴化した獣の討伐、忘れ物探し、街の掃除、下水道に湧き出たネズミやアンデットの駆除。



 “ダンジョン探索"というものがなくなった時点で冒険者ギルドは大きく変わってしまったのだ。



 しかしそんな冒険者ギルドが一定の地位を未だ確立しているのは一つ理由がある。



「ここはガラが悪いからあの嬢ちゃんは城門のあたりで待ってもらってる。ほれ、入りな」

 

 守衛が冒険者ギルドの前に立ち止まって丁寧に説明してくれる。 上を見上げると、蔦の張った石造りのそこそこ大きな建物がそびえ立っていた。


 屋根色はこのあたりでは一般的な緑青色の青銅屋根。

窓枠は等間隔で並んでいて、古い建物であることが伺える。


「……本当に、ガラが悪いんですね」


 わかっていたことではあるけど、冒険者ギルドに初めて来た身だ。やはり聞くより何倍もガラの悪い連中が跋扈ばっこしている。


 床には捨てられた肉とか魚の骨なんかが転がり、なかでは筋骨隆々のごろつき同然の冒険者たちが大騒ぎしながらエールをがぶ飲みしている。


「まぁそう思うのも無理もない。朝っぱらから酒飲んで騒いでる連中がいるなんて娼館や奴隷市場でもありえないことだ」

 

『存外私は悪くありません。これが人間という生き物の獣としての本音でしょう。どれだけ綺麗に取り繕おうと結局はこんなものなのです』


 耳と脳内それぞれ別の声が響いて少しばかり気分が悪くなるものの、ため息を吐いてなんとか受付へと向かう。


「よう、ハンス。いつもの頼んでいいかい?」


「……守衛の旦那。ここ最近冒険者登録が減ってるんです、見てください。もう受付のとこにおいてますよ」


「おぉ、そりゃすまない。まぁお前らは〘冒険者登録〙がないといつでも潰されてもおかしくはないもんな」


 守衛は馴れ馴れしく受付……といっても可愛らしい少女ではなく筋骨隆々に褪せた茶髪のひげむくじゃらのチンピラ同然の男にそう話しかける。


『なるほど、そういうことですか』


(そう、冒険者ギルドがまだ残されてる理由……それは───)



 ”冒険者登録”が実質的な戸籍になるからだ。

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