第11話《村での祝宴》
その日、とある男の手で滅亡の危機を回避した村では祝宴が行われていた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
「あはは……」
『グスターヴ、次です。今度は向こうの肉を食べなさい。あなたの食べたものが私の魔力になるのですからね。しかし当世の食事とはなかなか美味ではないですか』
あの一件の後、できる限りバレないように努力してたんだが……どうやらシルヴィアが気づいて村の人間たちに教えてしまったようだ。
あまり目立ちたくはなかったんだが、リオンもどうやら数千年ぶりの食事のせいか乗り気なこともあり、ひとまずらここに滞在しつつある状況だ。
「若様、すごいです!やっぱり若様は私がずっと言ってたとおり、才能があったんですよ!」
赤髪を揺らしながら、なついた大型犬のように歩み寄ってくるシルヴィア。
(才能……か。俺の才能はリオンの力と人から盗んだものでしかないと知れば、シルヴィアは失望するだろうか)
『そう気に病む必要はありません、グスターヴ。あなたが私を見つけて封印を解いたのも運命であり、私が力を貸すのも対等な契約の上です』
(だといいけどさ)
「若様、どうかなさいましたか?」
「あぁ、いや……気にしないでくれ。それよりシルヴィア、他の二人はどこに?」
俺はふと、シルヴィアの他に庭師のワイズマンさんと料理人のヴァッフさんがいないことに気づく。
それを言うと、シルヴィアは下を俯き。
悲しげに話し始める。
「ワイズマンさんとヴァッフさんはいま、子爵様のお城の中でお仕事をされてます。前の旦那様のつてがあるからって……ど、どうしましょう……若様が生き返ったって知らせないと!で、でも若様は今危ない状態で……あわわ!」
そして徐々にヒートアップしていき、パニックになり始めるシルヴィア。俺はそれを見て、どうしようかと考え。ひとまず安心させることが先決だと判断する。
「シルヴィア、安心するんだ。お城に行く方法は今は考えず、ゆっくり考えよう」
「は、はいぃ……ありがとうございます、若様……」
ともあれど、どう行くべきか。
まず名前と身分を偽装する必要がある上に、城に入るには普通の身分だとほとんど不可能に近い。しかも城働きということは城内に住んでいるだろうし……。
(どうすれば……)
『簡単なことです、グスターヴ』
頭を悩ませていると、突如リオンの凛とした鈴のような声が響く。
『城に忍び込んでしまえばよいのですよ』




