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妖魔の事情①


 結羅は太悟の部屋の座布団に座り、麦茶をいただいていた。


 朝から大学へ行っていた太悟は午後ニ時過ぎに帰ってきて、今から一緒におやつを食べるところだ。

 太悟の大学は今日から新学期が始まった。


 結羅は今日はずっと家にいた。下手に動くとまた妖魔に出会いそうな気がして怖かったからだ。


 太悟が揚げたてのドーナツを持って、リビングにやってきた。


「わぁ! 美味しそう!」


「冷凍のドーナツを揚げただけだけど、美味うまそうだな」


 太悟はドーナツをテーブルに置き、エプロン姿のまま結羅の向かいに座る。


 そして麦茶をズズッとすすると、今日の本題に入る。


「さて、昨日の河童の件だが」


 結羅はドーナツを食べかけていたが、ハッとして皿に戻す。


「食べていいぞ」


と笑いながら太悟に言われ、再び口に運んだ。


「河童が多摩川に突然現れだした理由····それは妖魔同士の縄張り争いが関係しているようだ」


 昨日河童に川に引きずり込まれた後、一瞬で川底まで連れて行かれたが、その時に神石を使った。水の中で河童に直接攻撃を当てることは出来なかったが、河童は驚き詩織を離した。その後河童は勝てないと踏んだのか降参する素振りを見せた。

 太悟はその時詩織を抱えて水面まで上がる体力が残っていなかったが、すぐ近くの川底に空気が溜まっている洞窟があり、そこで息を吸うことが出来た。そこには大量の河童がいた。


と、太悟は話した。


「その洞窟を根城にしているようだった。だからあの辺りに被害が集中していたのだろう」


 さらに太悟は続ける。


「その時河童と話した。妖魔とちゃんとした会話をしたのは初めてかもしれない。言葉はたどたどしかったが、人間の言葉を話していた。河童の話によると、急に力をつけだした種族に住処を追われたのだそうだ」


「その種族って?」


「妖狐族」


 結羅は驚き言葉を失う。


(妖狐族って····幻夜の種族?)


「住処を追われた腹いせに人間を襲っていたのだそうだ」


「八つ当たりってこと?」


「まあそうだ」


 結羅はどういうことなのかと考える。幻夜が現れたことと、妖狐族が河童の住処を奪ったことは関係があるのか。


「結羅、このことはアイツには言うな。話しておいてなんだが、こちらが何かに気づいていると悟られるな。アイツは敵か味方か分からないし、本当の目的も不明だ」


 結羅は昨日幻夜が言っていたことを思い出す。


『結羅は俺を解放してくれるからだ』


(『運命』····から? 幻夜の運命ってなに?)


 そして昨日幻夜が『河童の住処は多摩川ではなかったはずだが、変わったのか』という言葉も思い出した。あれは本音だったのか、それとも演技だったのか····。


 ますます幻夜が分からない、と結羅は思う。


「俺は妖狐族について詳しく調べてみる。河童には、人間にこれ以上手を出すと成敗しなければならなくなると言っておいたから、しばらくは大人しくしているだろう」


 結羅は頷くが、何か大きなことに巻き込まれていくような予感がして不安になった。

 しかし良い知らせもあった。河童に襲われて意識不明だった男性が目を覚ましたそうだ。これからも太悟は被害者たちのケアを続けていくと言った。




 今日は高校の入学式。あれから幻夜は全く姿を見せない。

 結羅は制服を着て、時間どおり家を出る。学校に着くと、校舎の近くで詩織に会った。


「結羅ちゃん、おはよう」


 にっこりと詩織は微笑む。


「おはよう!」


 詩織とはあれからほぼ毎日メッセージのやり取りをしている。結羅は詩織に近づくとやはり頭が痛い。しかしクラスは別になったので、ずっとではないし、詩織に気づかれないよう我慢しよう、と決意している。登校はお互い待たせるのが申し訳ないということで、下校のみ一緒にすることになった。


 御札のことは結局太悟には言えずじまいだ。あれから太悟は忙しそうだし、今の問題が解決してから話そう、と結羅は思っている。


 無事入学式を終え、それぞれのクラスに入る。今日は諸々の説明と自己紹介をして終わりらしい。

 

 担任は優しそうな女の先生だった。比較的偏差値の高い学校だからか校則は緩めだ。校風が自由というのがウリらしい。それでも大半の生徒が真面目そうな外見をしていた。


 全員が席につくまで待っている間に、結羅は後ろの席に座っている生徒にツンツンと肩をつつかれ、振り向く。


「ねぇ、名前教えてよ」


 見ると明るめの茶色のショートヘアの女子生徒が、結羅を見てニヤニヤ笑っていた。よく見るとうっすら化粧をしているようだ。目は切れ長で鼻筋も通っていて唇は薄く、整った顔に見える。ボーイッシュと表現するのがしっくりくるだろうか。


「あ、冷山 結羅です」


 結羅は少し緊張気味に答える。


「あたしは藤本 沙苗さなえ。あんた超美人だね。友達になってよ」


 ちょっと強引そうな感じがあるが、気さくで親しみやすそうだと結羅は思う。“超美人”はリアクションに困るが。社交辞令かなと結羅は判断する。


「もちろん。沙苗ちゃん、よろしくね」


「“沙苗”でいいよ。結羅」


 早速馴れ馴れしいが、結羅は嬉しかった。入学早々友達が出来た。太悟に報告しようと考えていると、担任からの話が始まる。


 全員の自己紹介を終え、最後に担任から明日について話があり、帰宅の時間になった。  

 結羅は自己紹介で、村出身であることはひとまず言わないでおいた。


 明日は部活動の紹介があるらしい。この学校は文武両道で、部活動にも力が入っている。結羅はそれも楽しみにしている。中学の時はバドミントン部に入っていた。


 沙苗と一緒に廊下を歩いていると、前の教室からちょうど詩織が出てくる。


「詩織ちゃん! 今迎えに行こうと思ってたとこ。一緒に帰ろ」


 結羅が声をかけると、詩織はにっこり笑って近寄ってきた。


「詩織ちゃん、同じクラスの沙苗だよ」


 結羅に紹介されると、沙苗はペコッと頭を下げて、


「ヨロシク。君も可愛いね。小動物的な可愛さがあるなぁ」


と、オヤジのようなセリフを言い喜ぶ。三人が並んで歩くと、ちょうど身長差で階段のようになる。170センチほどの長身の沙苗、160センチの結羅、150センチちょっとだろうという小さめの詩織。結羅を真ん中に、三人は校門に向かって談笑しながら歩く。


 沙苗の家もこの近所らしい。詩織の家とは別の方向なので、沙苗とは校門で別れた。


 結羅と詩織が並んで住宅街を歩いていると、突然詩織の歩きが少しゆっくりになる。


「結羅ちゃん····何か付いてきてる」


と小さく言って、少し青ざめている。


「何かって、妖魔?」


「うん。そうだと思う。まだ距離があるけど、狙われてる····」


 詩織は河童に会ってから、さらに妖魔に対する感度が上がったのだそうだ。


「でも狙ってきても、御札があるから近寄っては来れないと思う」


 詩織がそう言うと、結羅は頷く。念の為詩織を庇うようにすぐ後ろを歩く結羅。公園横の歩道を通り、入口近くの交差点を渡ろうとしたところで、突然死角から自転車が飛び出してくる。


「きゃっ!」


 詩織は驚いて後ろに下がると、結羅にぶつかって二人は後ろ向きに転倒した。


「転んだな····」


 背後から声がして、二人は恐る恐る振り向く。少し離れた木陰に黒い影が見えて、長く鋭い爪が数本の刃物のように木の間から飛び出していた。


 結羅は詩織に御札を出すように言う。万が一襲ってきた時、武器になるようなものはこの御札しかない。直接当てれば、ダメージを与えられるはずだと結羅は思う。


 御札を警戒しているのか、相手はなかなか襲って来ない。一定の間合いに入ると、御札の効力が発揮されるようだ。まだ妖魔は間合いに入ってきていない。


 根比べのように、結羅たちと影は睨み合う。数分間睨み合って、やがて影は突然姿を消した。


 結羅はふぅーっと長い息を吐いて、地面に手をつく。妖魔か御札かどちらのせいか、結羅は大量の冷や汗をかいていた。御札を手に持ったまま、詩織も安堵の溜め息をつく。


「行ったみたいだね」


 詩織がそう言うと、結羅は頷いて立ち上がる。その時目眩がして、倒れそうになるが何とか堪える。


 詩織に気づかれないよう、無理に笑顔を作り「帰ろっか」と言う。


 御札をお守りの中にしまい、二人は詩織の家へ向けて歩き出す。家の前で詩織と別れると、結羅は駅に向かう途中に座り込みしばらく動けなかった。心配した何人かの人に声をかけられた。やがて体調が戻り立ち上がると、電車に乗りアパートへ帰った。


 部屋に着く前に、スマートフォンにメッセージが入る。太悟からだ。


『入学おめでとう! 今夜はお祝いをしよう』というメッセージだった。


 太悟は昨日、キエの代わりに入学式に出ると言ったが、結羅は『高校の入学式だし誰も来ないよ』と言って断った。今は大学に行っているはずだ。時々太悟のことを本当の兄みたい、と結羅は思う。ほとんどシスコンとも言える兄。


 夕方まで家にいて、呼び出されると太悟の部屋へ向かった。

 太悟に『今日はご馳走させてくれ』と言われて、結羅はいつもご馳走になっているような····と思う。一応おかずを一品作って持ってきたものの、


(そろそろお母さんに怒られるな····)


と思いながらインターホンを押す。


「開いてるぞ」


 中から太悟の声がして、結羅がドアを開けると香ばしいチキンの香りがした。


 太悟がキッチンに立って調理しているのが見える。慣れた手付きでフライパンの中に調味料をふりかけ、フライパンを回している。中の食材が飛び上がり、またフライパンに戻る。

 チャーハンを作っているようだ。


「太悟兄ちゃん、すごい」


 見惚れるように結羅は太悟の手元に目をやっている。


「結羅。座ってていいぞ」


「太悟兄ちゃん、良い旦那さんになるね」


「········」


 無邪気に言い放った結羅の言葉に太悟の動きが少しぎこちなくなるが、気にせず結羅は「そうだ!」と持ってきたおかずをオズオズと差し出す。


「こ、これ····美味しいかわからないけど····」


 それを見て太悟は目を輝かせ


「作ってきてくれたのか!?」


と言う。


「うん。れんこんのきんぴら。ピリ辛だよ」


 太悟は手を止めてタッパーを受け取る。


「俺の好きなもの、覚えててくれたんだな」


「もちろんだよ。おばさんみたいに上手くはないと思うけど」


「旨いに決まってるだろ! 結羅が作ってくれたのが、俺にとっては一番だよ!」


 そう言った後で、太悟はハッとして結羅から目をそらす。

 慌ててフライパンを手にとり、「後で皿に盛り付けるよ」と言って台にタッパーを置く。


「盛り付けておくよ」と笑い結羅は青い深皿とタッパー、菜箸を持ってリビングへ行く。


 準備が出来て、二人で食卓につく。


 オーブンレンジから取り出したばかりの大きな骨付きのチキンは、まだじゅうじゅうと音を立てて、食卓の真ん中を堂々と陣取っている。

 チキンの周りには先程のチャーハンが盛り付けられており、赤や黄色のパプリカ、ピーマン、トマトなどのカラフルな野菜が皿を彩っている。


 大皿の脇には、サラダと結羅が作ったれんこんのきんぴらの皿が並んでいる。


「よし、食べよう! 結羅。改めて入学おめでとう!」


 オレンジジュースで乾杯する。


「ありがとう!」


 二人はジュースを一気飲みすると、プハーと言った。


「そういえば太悟兄ちゃん、お酒は飲まないの?」


 結羅はもうすぐ二十一歳になる太悟に聞く。


「飲むよ。結羅とは飲まないけど」


「一人で飲むの? 別に飲んでくれても構わないよ」


「いや、俺はわりと酒癖が悪いらしいから一緒にいる時は飲まない」


「それって飲み会とかで言われたの?」


「ああ。いろんなやつに絡んでたらしい。全く覚えてないんだが」


 それは大変そうだなと結羅は笑う。


「ところで、今日は学校どうだったんだ?」


 太悟がその話はやめようとばかりに唐突に話をふってきた。


「早速新しい友達が出来たよ! 沙苗って言うの! すごくカッコいい女の子なんだよ」


「へー! それは良かったな」


 太悟は嬉しそうに話す結羅を微笑ましく見ながら、れんこんのきんぴらに箸をのばす。


 旨い旨い! ときんぴらを食べる太悟を見て、結羅は「良かった」とへへっと笑った。


「それとね、帰り道に詩織ちゃんと歩いてると妖魔に狙われたの」  


 太悟は箸を止めて結羅を見る。


「まさか襲われたのか?」


「ううん、たぶん御札のおかげで近づいて来なかった。でもずっと近くにいて、私達が転んだ時に『転んだな』って姿を現して····」


 太悟は少し考えてから話す。


「“送り狼”かもな。転ぶと襲ってくる。転ばなければ襲われない。転んでも『転んでいない』と誤魔化すと助かる」


「ふーん····誤魔化せるんだね····そう聞くと間抜けなような」


 結羅は今日見た影と鋭い爪を思い出す。でもあの姿は恐ろしかったと身震いした。


「そういえば、妖魔の姿って普通の人間にも見えるの?」


「ああ、見える。幽霊のようなものとは違うからな。妖魔は巧みに隠れていたり、人間に化けたりしているから認知されていないだけで、姿は普通の人間でも見ることが出来るんだ。河童もそうだっただろ?」


 結羅は頷く。確かに霊感の強い人間しか見ることが出来ないなら、多くの目撃情報があるはずがない。妖魔側が隠そうとしなければ、いつでも人間を混乱させることが出来るということか、と結羅は恐ろしくなる。しかし同時になぜ多くの妖魔はそうしないのだろう、とも思う。


「あれから妖狐について調べてみたんだが····」


 太悟は真剣な顔で話し始める。結羅も姿勢を正す。


「妖狐はここ数百年で、特に大きな問題を起こしたことはない。あくまで人間に対してだが。つまりあまり資料がない」


 結羅は少し肩透かしを食らう。


「そうなんだ····」


「大昔に遡ると俺でも知っていることがあるんだが」


「何なの?」


「平安時代末期、鳥羽上皇の后が化け狐だったという話がある。でもそれはあくまでも物語で、本当にあった出来事かは分からない。陰陽師の世界でも話としては受け継がれているが、そこまで昔だと真実か定かじゃない」


「そっか····幻夜に聞いたら何か知ってるかもしれないけど、教えてくれないよね」


 結羅は案外ペラペラと話してくれるかも、と思うがそれは太悟には言わないでおく。


「まず言うことが信用出来ないからな。嘘で混乱させられる可能性もあるし、こちらのことが向こう側に伝わる可能性もある。というかすでに知られているかもしれない。アイツがどういう立場なのかハッキリしない限り、何も情報を渡せない。妖魔の話は河童にもう一度聞きに行こうと思う」


 結羅は「そうだね」と納得する。


 太悟は送り狼についても注意するように言う。御札がある限り襲って来ないとはいえ、結羅が単独で行動している時に襲われる可能性もある。もし狙われている時に転んでしまったら『転んでいない!』とつっぱねろと言う。


 結羅は「分かった」と言い、料理を食べる。太悟の作った料理は絶品だった。食後にケーキまで用意してくれていた。


「わー、太悟兄ちゃんありがとう! こんな綺麗なケーキ見たことない!」


 結羅は有名なケーキ屋のショートケーキを見て歓声を上げる。


「俺もここのケーキは初めて食べるんだ。旨いって噂だから買ってきた」


 結羅はコーヒーは苦手なので、麦茶を入れ二人でケーキを食べる。


「うう〜ん幸せ〜!」


 結羅は甘いケーキを口に入れると浮き立つような、何とも言えない幸福感に包まれる。


 太悟はそんな結羅を見て眩しいものでも見るような顔をしている。


「結羅は甘いもの好きだよな」


 ハハッと笑ってケーキを食べる。


 結羅は何となく、今ならさり気なく言えるような気がして、御札のことを言ってみた。


「あのね、太悟兄ちゃん。詩織ちゃんに渡した御札あるでしょ?」


 結羅が話し始めると、太悟はうん? とフォークをくわえて結羅を見る。


「あれって、妖魔を寄せ付けないようにするための破魔はまの御札なんだよね?」


 太悟は結羅の言葉に頷く。


「そうだ。俺の力が及ぶ相手にしか通じないが、元々霊力の高い木で作ってある札に破魔の力を込めてあるから、俺の代わりに妖魔を払うことが出来る」


 結羅はやはり、と思う。少し不安になりながらも、確認しなければと思い口を開く。


「ちなみにあれって、人間には効果ないんだよね? あれの近くにいるとね、私体調が悪くなるんだけど····」


 そう言いかけたところで、太悟の顔がみるみる変わる。青ざめているように見えた。


「····確かか? 本当に札の近くにいる時に体調が悪くなるのか?」


 そう言って太悟は思い出すように黙り込み、そして結羅の方へ回り込んでくる。


「う、うん。確かだと、思う。御札を手に持った時は本当に気を失いそうだったか····ら····」


 言い終わる前に太悟に抱き締められる。


 結羅は驚いて動けなくなる。この前は抱きついて怒られたのに····


「ごめん····ごめんな結羅····」


 太悟は泣きそうな声で小さく言った。


「何で? 太悟兄ちゃん····」


 そんな反応をされると、結羅は不安でたまらなくなる。今まで信じていたものが崩れ去っていくような、底知れぬ不安。


 なぜ結羅の体は破魔の御札を拒否するのか。


 その疑問は、結羅の中で一つの答えにすでに辿り着いていた。しかし気づいていないフリをしていた。太悟の反応でそれがほぼ確信に変わる。


 ただ、納得出来ないこともある。


 しばらくお互い無言で抱き合っていたが、やがて太悟は体を離す。少し辛そうな、しかし持ち直したような顔をして言う。


「結羅は何も心配しなくていい。ただ、詩織には極力近づくな。難しいかもしれないが、その方がいい」


 結羅は、詩織とは友達だし近づかないのは無理だと思ったが、その場では了承するように頷く。


 結羅は太悟にダイレクトな質問はしなかった。明確な答えを聞いてしまっては、もう立ち直れないかもしれない。結羅は太悟の言うとおり、冷静に受け止めることが出来るようになるまでこのことを頭の奥底に秘めておくことにした。


 太悟は結羅から離れると、拳に力が入っているのか両拳を固く握ったままリビングを離れる。


 結羅は一人、残ったケーキに手をつけることもなく呆然と座っていた。


 何故か幻夜の顔が頭に浮かんだ。無性に幻夜と話したいと思った。



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