出会いと事件の始まり
ふわふわの枕が気持ちいい。一番安かった羊毛の寝具6点セットだが十分すぎる柔らかさだ。
窓の外で小鳥の鳴く声がするが、目覚ましはまだ鳴っていない。
(もう少し寝よう)
結羅がそう思って寝返りを打つと、顔にこちょこちょと蜘蛛の巣のようなものが当たる。かすかな甘い香りが鼻孔を刺激する。
「……何?」
結羅はうっとおしいという顔をしながら手で顔に当たるものを払おうとしてうっすら目を開けると、絹のように滑らかな美しい銀色の糸の束が見える。そして腕も。
ハッとして飛び起きる。
「な……な……な……」
驚きで声の出ない結羅の目の前で、肩肘をついて寝そべる幻夜が、赤い瞳で結羅を見ている。
「無防備だな」
涼しい顔で言う幻夜に、驚きのあまり声も出ない。
昨日は一悶着あった後、コンビニで買ってきたお昼を食べながら、太悟からいろいろと信じ難い話を聞いた。
しかし太悟の表情から嘘とは思えない結羅は、頭の中を整理する。
今目の前にいるのは人間ではなく妖狐の幻夜。婚約者の話は幻夜が勝手に言っているだけ。
全くもって信用に値しない存在だが野放しにも出来ないので、能力を封じた上で悪さをしないように見張ることになった。
というのが、昨日聞いた幻夜に関する太悟からの話の内容だ。
そしてもう一つ。太悟は幼い頃から妖魔払いの修行を積んでおり、現代版のいわゆる陰陽師の仕事をしていること。
雪里村の近くにある厳雪山は、遠い昔から妖魔が住むと言われていた。そのため村の長の一族は、代々妖魔払いの役目を果たしてきたのだという。
結羅はそんなことは初耳だが、結羅だけではなく大半の村人はそのことを知らないらしい。
幻夜のいないところで後からこっそり教えられたのだが、太悟は頃合いを見て東京に住む陰陽師の師匠に幻夜を引き渡すつもりらしい。今は師匠が遠出中なので、帰ってくるまで我慢してくれ、とのことだった。
そして早速、幻夜は太悟の目を逃れてここにいる。
「寝言を言ってたが何の夢を見ていたんだ?」
幻夜は寝そべったまま言う。それを聞いて結羅の顔はみるみる赤くなる。
「ね、寝言!? 何て!?」
(というか、いつからいたの!?)
結羅は頬に手を当てなんの夢を見てたんだっけ? と混乱しながらも考えるが、いや違う違う、と首を横に振る。
「じゃなくて! 何であなたがここにいるの!?」
時間が経ってやっと思ったことを言葉にすることが出来た。
それを聞いて『愚問だ』とでも言うように、悪びれもせず幻夜に
「『何で』? 太悟の部屋にいてもつまらないからに決まってるだろう」
と、しれっと答えられてポカンと口を開ける結羅。昨日から溜まりに溜まった不快な感情が、ぐるぐると結羅の中に渦巻く。
「あ、あなたは昨日突然不審者のような振る舞いを私にしましたよね!? すごく怖かったんだから! なのに何で人が寝てる間に勝手に部屋に入れるの!? 本当に信じられない!!」
一度出ると言いたいことが土石流のように一気に流れ出た。
すると寝そべっていた幻夜は、どこかの国の王族のようなゆったりとした優雅な動作で起き上がる。長い指が布団に食い込む。片膝を立てて座り、美しく整った切れ長の目の中におさまるルビーのような赤い瞳が結羅をまっすぐ見つめる。
目が合った瞬間、ドキッとして結羅は硬直する。そして確かにこの妖しさは妖魔だと、妙に納得する。
「お前に好かれるにはどうすればいいんだろうな」
そう言いながら手を伸ばしてくるのに、金縛りにあったように全く体が動かない結羅。
昨日は恐ろしかった幻夜だが、その容姿は魅力的であることには違いない、と結羅は思ってしまう。
その時、勢いよくドアを開く音がする。
「結羅!! 無事か!?」
という太悟の声が聞こえて、すぐにバタバタと廊下を走る音がする。
パジャマ姿の結羅と一枚の布団の上に座っている幻夜を見て、太悟がブチ切れたことは言うまでもない。
近くのスーパーへ買い出しに行く途中、結羅は今朝のことを思い出し一人苦笑する。
(今朝の太悟兄ちゃん、怖かったなぁ。でも来てくれて良かった。……妖魔払いだなんて、小さい頃から一緒に育ったのに全く知らなかった)
そしてふと村での事を思い出す。
(そういえば、たまに村長のおじさんと『仕事』に出かけてたっけ。あれは『そういう仕事』だったのかな)
どんっ
考え事をしていたからか、前から歩いてきた少女にぶつかってしまう。
「す、すみません! 大丈夫ですか!?」
見ると少女は同い年くらいで、ひどく青ざめている。ぶつかった勢いで倒れてしまった少女の手を取り、結羅は慌てて声をかける。
「あ……はい」
見るからにか弱そうな子で、細い声で返事をするが明らかに体調が悪そうだ。少女はふらつきながら立ち上がると、怯えたように後ろを見て、すぐに立ち去ろうとする。
「あ! 待って! 本当に大丈夫ですか!?」
結羅は立ち去る少女を追う。なぜか少女を放っておけなかった。
「大丈夫ですから! 他の人を巻き込みたくないんです」
結羅はそう言われても、少女のことが気になって付いていく。
神社へ続く小道に入ると、少女は息を切らして座り込む。
「はぁ、はぁ……」
結羅はなぜ自分は付いてきたのだろうと不思議に思うが、少女の様子を見て何か尋常でないものを感じたのは事実だ。
「体調が悪そう。病院へ行った方がいいんじゃないですか?」
結羅が声をかけると、
「なぜ付いてきたんですか?」
少女は額に汗を浮かべ、苦しそうにつっぷしたまま言う。
結羅が返答に困っていると、
「どうしたんかね?」
と声をかけられる。
見ると腰が曲がって杖をついたおばあさんが、小道に立って心配そうにこちらを見ている。
「あ……この子が体調悪そうで……」
「おやおや、可哀想に」
おばあさんはしわがれ声でそう言って、カツカツと杖をつき少女にゆっくりと近づく。座り込む少女の前まで来た時。
「すぐに楽にしてあげようね」
結羅はおばあさんの顔が化け物のように変わっていくのを見た。
「なっ……!!」
少女は青ざめたまま身動きが取れず、硬直している。
化け物が少女に襲いかかろうとして結羅が目を閉じた瞬間、
「ニャアアアっ!!」
化け物の叫び声と殴打したような鈍い音がする。
「無事か!!」
太悟が息を切らして化け物と少女の間に割って入る。
少女は手を震わせながら頷く。
「猫又だな! こんなに派手に動くとは珍しい」
その猫又という妖魔は、顔を両手で覆い苦しそうに呻きながら素早く逃げていった。
「太悟兄ちゃん! ありがとう。よくここが分かったね」
結羅は二人に駆け寄る。少女はまだ震えている。
「無事で良かった。スーパーへ行ったのに見当たらないから探していたら、殺気立った妖魔の強い気配がして追ってきた」
「この子を狙ってたみたい」
結羅は座り込んでいる少女を見て言う。
「君は……!」
太悟は少女の顔を見てハッとした表情をする。
「この前も妖魔に襲われていた子だな」
そう言われて少女は太悟を見上げ、目を見開く。
「覚えていてくださったんですね。二度も助けていただいて……本当にありがとうございます」
正座をして深々と頭を垂れる少女に、太悟は優しく言う。
「君は妖魔に狙われやすい体質のようだな。これを持っておくといい」
スリングバッグから御札を取り出し、お経のような言葉を言い念を込める。そしてペンで何か文字のようなものを書いて少女に差し出す。
「これを持っていると、さっきのヤツのような低俗な妖魔は君に近寄れない」
少女はその御札を受け取り、大切そうに胸に抱く。
「あ、ありがとうございます」
結羅はその様子を見て感心する。
「太悟兄ちゃん、本当に妖魔払いだったんだね」
「都会は人間に化ける妖魔が多いから見分けにくいが、そこら中にいるぞ。結羅も気をつけろ」
「うん」
結羅は昨日の出来事を思い出し、身震いする。
(これからもこういうことがよくあるってこと?)
「今からこの子を家まで送って、帰りにスーパーに寄ろう」
太悟がそう言うと、少女は急いで立ち上がる。
「あ、私は須藤 詩織といいます。新学期から北山高校の一年生になります。よろしければ、お二人のお名前を教えていただけませんか?」
それを聞いて結羅は驚く。
「北山高校って、私と同じだ! 私も新学期から一年生の冷山 結羅です。よろしくね、詩織ちゃん」
にっこりと笑う結羅を見て、詩織も微笑む。
「よろしく。結羅ちゃん」
「俺は西陵大学三年になる雪白 太悟。結羅とは幼馴染だ。困ったことがあったらいつでも相談して」
「は……はい」
詩織はうっすら頬を染めておずおずと頷く。
詩織の家は北山高校の近くで、ここから電車で二駅行ったところにある一軒家らしい。今日はどうしても外せない用事があり、仕方なく出かけたそうだ。
三人は詩織の家へ向かいながらいろいろな話をする。
「ちょっと前までは、妖魔が見えることはあっても襲われることはそうなかったんです。それが最近になって突然……。何度か危ない目にも合って、中学の卒業式にも出られなかったんです」
最寄り駅の方へ歩きながら、詩織は暗い顔でそう話す。
太悟は話を聞いて深刻そうな顔をする。
「特殊な体質を持つ者は、16歳になるとその特性が強くなると聞いたことがある。そのせいで、以前より妖魔を引き寄せやすくなったのかもしれないな」
詩織はうつむいて太悟からもらった御札をぎゅっと胸に当てる。
「大丈夫! 太悟兄ちゃんからもらった御札があるし、私には何の力もないけど、登下校は一緒にしよう!」
結羅は詩織を励ますように明るく言う。詩織は結羅を見て
「ありがとう」
と微笑んだ。詩織の切り揃えられた黒い前髪は、風でさらさらと揺れる。
家の前で詩織と別れ、太悟と歩いている時にふらつく結羅。
「大丈夫か!?」
太悟に支えられて結羅は青白い顔で頷く。
「うん。ちょっとさっきから頭が痛くて。昨日と今日の出来事が衝撃的すぎて頭がついていけてないんだと思う」
「疲れたんだな。買い出しは俺が行くから、先に家へ帰って休んでろ」
アパートの前で太悟と別れる時、
「あ! 部屋の鍵はかけておけよ! 絶対にあいつを部屋に入れるな!」
と言われ結羅は苦笑いしながら「わかった」と頷く。
(今朝も鍵はかけてたはずなんだけどなぁ……)
エレベータに乗り、自分の部屋へ入る。念の為鍵と一緒にドアチェーンをかけておく。
(はー、なんか疲れた。こんな調子だと毎日大変だよね。早く慣れないと)
部屋に入る頃には頭痛は治まっていた。ソファに身を投げるが膝から下がはみ出してしまう。この狭い部屋に置ける好みのソファはこれしかなかった。でも弾力と肌触りは最高だ。
その時着信音が鳴る。結羅はスマホをバッグから取り出し画面を見る。
(お母さんだ)
「もしもし」
『あ、結羅? 荷解きはどう? 部屋は片付いた?』
家を出てまだ少ししか経っていないのに、母親の声を懐かしく感じて、結羅は少し寂しくなる。
「あ、うん。太悟兄ちゃんが手伝ってくれて、大分片付いたよ」
母親は安心したように『そう』と言う。
『母さんも腰を痛めなければ行ってあげられたのに。太悟くんがいてくれて本当に有り難いわね。ご飯はちゃんと食べてる?』
「うん、食べてるよ。太悟兄ちゃんが今日は鍋を作ってくれるって!」
結羅が嬉しそうに話すと、
『あのね、太悟くんはいろいろとやってくれるんだろうけど、甘えすぎちゃダメよ。食事はちゃんと自分で作りなさい。たまにお裾分けもするのよ。太悟くんも忙しいんだから』
とダメ出しされる。
「はぁい」
『元気にやってるなら良かったわ。また野菜を送るわね、じゃあね』
「あ、お母さん」
母親が電話を切りそうになって、結羅は思わず止める。
『なぁに?』
「あー、あのね、美形で銀色の長い髪の男の人って知ってる?」
『芸能人の話? 母さんがそんなのに疎いの知ってるでしょ』
「そうだよね、知らないならいいや。気にしないで。じゃあね。また電話するね」
電話を切る。
(やっぱり知らないんだ。幻夜の話はデタラメだったってことだよね)
夜は太悟の部屋で鍋をした。
太悟が部屋に戻ると幻夜はいなかったらしい。どこへ行ったのかも分からないし、太悟が最初から一緒に食べるつもりはないと断じ二人で鍋を囲む。
「体調は大丈夫か?」
「うん。やっぱりちょっと疲れただけだったみたい」
太悟が鍋を取り分けようとすると、結羅は「私がやる」と器とお玉を取り太悟の分をよそう。
鍋を食べていると切れていない野菜や肉が出てきて結羅は苦笑する。
「料理は練習しなきゃね……」
「いつでも教えてやるよ」
太悟が笑いながら言う。
太悟の部屋で切りものを手伝った結羅だが、包丁さばきの実力差に恥ずかしい思いをした。
「この二年で随分料理の腕が上がったんじゃない?」
「毎日自炊してるからな。結羅もすぐに出来るようになるよ」
談笑しながら食べていて、結羅は先程の電話の話をする。
「そういえばさっきお母さんと電話したんだけど、やっぱり幻夜のことは知らないって。デタラメだったみたいだね」
それを聞いて太悟は気まずそうな顔をする。
「だからあいつが勝手に言ってるだけだって言っただろ。婚約者なんて、バカらしい。どうせどこかで結羅を見かけて目をつけたんだろ」
「でも勝手に出歩かせて大丈夫かな。どこかで他の人を狙ってないよね」
太悟は眉間にシワを寄せる。
「あいつの妖力は封印したけど、特殊能力のようなものが使えなくなっただけだからな。人間を襲おうと思えば襲えるだろうな。ただあいつをここに留めておくだけの力が、今の俺にはない」
「妖狐って、強いの?」
窺うように質問する結羅に、太悟は苦々しい顔で答える。
「妖狐には俺も今回初めて会ったが、古い記録によると高等妖魔のはずだ。実際、悔しいが全く歯が立たなかった」
「そんなヤバいやつを近くに置いてて大丈夫なの!?」
「幸いあいつは話が通じるし、結羅に危害を加えるために近づいたわけじゃないようだからな。俺の手には負えないから、師匠に託すしかない。悪いな、不便をかけて」
太悟はすまなそうに言う。
「太悟兄ちゃんは悪くないから!」
結羅は慌てて両手を振る。
「むしろ、ありがとう。守ってくれて。太悟兄ちゃんがいてくれて本当に良かった」
太悟は結羅の笑顔を見てから、慌てて目を背ける。
「当然だろ! 俺はお前の兄貴のようなもんなんだから!」
結羅は笑いながら太悟に近づき、突然後ろから抱きついた。
「ばっ!! やめろ!」
「ありがとう太悟兄ちゃーん」
抱きついたまま甘えてそう言うと、太悟は耳まで真っ赤にして結羅の手を捕まえる。そのまま引き剥がされて、両手を掴まれたまま向き合う形になる。
「結羅。お前はもう高校生の女の子なんだから、男に簡単に抱きついたりしちゃ駄目だ」
「太悟兄ちゃんだから抱きついただけだよ。昔の癖でつい。ごめん」
太悟が真剣なので結羅は思わず謝る。
(そんなにダメだったかな)
「俺だって他の男と同じだよ。お前のことを大切に思ってるけど、昔と同じようにしちゃ駄目だ」
「はぁい」
しゅんとした結羅を見て、太悟はふっと優しく笑う。
「結羅はこの二年ですごく綺麗になっててビックリしたよ」
結羅はそう言われて困り顔をする。
「村の人からもそう言われたけど、イマイチ自分ではよく分からないんだよね。今回東京へ来る途中にも、いろんな人に綺麗と言われたよ」
「いろんな人!? 男か!?」
太悟の目つきが変わって真剣に問いただしてくるので、結羅は少し話を逸らす。
「う、うん。その時美容師の人もいて髪の色が変わってるって初めて言われた」
「髪の色? 普通の黒髪だろ。」
結羅は肩より少し下にある毛先を指で少しつまんで持ち上げる。
「そう思ってたんだけど、私の髪は黒じゃなくて青いんだって」
「青い?」
太悟は目を細めて結羅の髪をまじまじと見る。
「日の下で見ないとはっきり分からないな。言われてみれば青い……気がしないでもないけど。印象が変わったのはそれもあるのか? 前は完全に黒髪だったよな」
そう言って太悟はハッとする。
「結羅。他にも何か変わったことはないか?」
「変わったこと? うーん、それ以外は特にないかな」
太悟は考える結羅を見て心配そうに言う。
「何か変わったと感じたらすぐに言えよ」
太悟の心配性は昔からだ。結羅に何かあるとすぐに飛んできた。
太悟は村長の息子で、結羅を始め村の年下の子どもたちの面倒をよく見ていた。中でも結羅は特に太悟に手をかけられていた自覚がある。
「うん、ありがとう。でも困ることは特にないし大丈夫!」
しめにうどんを食べて、二人共満腹になったので、後片付けをして結羅は部屋に戻った。
◇◇◇
夜も更けた頃、詩織は部屋で寝ていた。風が強いのか窓はガタガタと激しい音を立てている。
寝苦しくて時折寝返りを打っていると、突然ものすごい音を立てて窓が割れ、詩織は飛び起きる。
「な、何っ!?」
窓の方を見ると、割れた硝子の向こうで黒い塊がもぞもぞと動いている。塊についた二つの眼が詩織を狙うように見ている。
詩織はぞっとして身動きが取れない。ベッドに座ったまま壁を背にして掛け布団を握りしめる。
塊が詩織から目をそらさずにゆっくりと部屋へ入って来ようとした時、突然「ぎゃっ!」と短く叫んで踵を返すように窓から出ていった。
詩織は少しの間固まっていたが、我に返り寝間着の中から花柄の布で作ったお守りを取り出す。
(この御札が守ってくれたのかな)
太悟からもらった御札を身に着けやすいように、お守りを作り紐を通して常に首から下げておくことにしたのだ。
(あの目、昼間のやつだよね。家にまで来るなんて……)
バタバタと足音が聞こえて、部屋の扉が開き両親が慌てて部屋へ入ってくる。
「詩織!! さっきの音はどうしたんだ!? 大丈夫か!?」
「あ……うん。風で何かが飛んできて窓が割れたみたい」
そう言いながら、詩織はお守りを大切そうに胸に抱いた。