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少女と犬

作者: キツタヌ

先に言っておこう。この話には、意味はあるけど教訓はない。

人々は、口々に教訓なんてものを求めるけどね。叫んでも無駄さ。どこにもないんだ。

これにも隠された意味くらいあるけれど。教訓なんてお綺麗なものはありはしない。

それでもよければ、席に着いて聞くといい。

紅茶はまだある。菓子も望めば、山ほどに。

どうせ、これは下らない。少女と犬の話だよ。


とある所に1人の少女がおりました。


彼女は数ヶ月前の交通事故で目が見えなくなっていました。



ーとある公園にてー



「ねぇ、貴方は誰?」


少女が問います。



「!……ぼ、僕は犬さ」


急に話しかけられた犬が答えます。



「そう、貴方は犬さんなのね」


「ああ、そうさ。ところで、キミはここで何をしているんだい?」


今度は、犬が問います。



「わたしは、皆んなとお話をしているんだ。貴方も一緒にどう?」


少女は答え、誘います。



「?ここにはキミしか居ないようだけど……」


犬は戸惑い、周りを見渡します。ですが、やはり周りに人は居ません。



「ああ、やっぱり貴方にも聴こえていないのね」


少女は落胆の声を落とします。



「キミには、何か聴こえているのかい?」


犬が問います。



「ええ、皆んな……って言ってもわからないか。土や木々、塀に使われている石なんかの声も聴こえるわ。もちろん貴方もよ?」


少女は、答えます。



「……そう。それはいつから聴こえるの?」


暗く、犬が問います。



「数ヶ月前ぐらい前かしら?実はわたし目が見えないのだけれど、ちょうど見えなくなったときぐらいからよ」


「そう、か……」


少女が何気なしに答えると、犬がますます暗くなります。



「ええ、わたし目が見えないから、皆んなが危険な所とか信号とか曲がる場所とか教えてくれるのよ。」


ですが少女は感謝している相手の説明し、明るくなります。



「……」


とうとう、犬は何も喋らなくなりました。



「ねぇ、一緒に遊ばない?なんだか体を動かしたくなったの」


喋り相手の雰囲気が始めと違うことに気づき、犬が好きそうだと思ったことを提案します。



「ああ勿論いいさ!」


犬は、尻尾を振るかのように明るく、元気に答えます。



「ありがとう」


少女は微笑みました。



それから、数ヶ月。


少女と犬は来る日も来る日も一緒に過ごしました。


一緒に遊んだり、お喋りしたり、お風呂に入ったり……数えるのが億劫になるほど沢山のことをしました。



「ね、ねぇ、実は貴方に言わなきゃいけないことがあるの」


少女が声をかけます。



「?なんだい?」


「実は、わたし遠くの病院に行かなくなってしまってここには帰って来られくなるの」


「二度とかい?」


犬が問います。



「わたしが大きくなって、独り立ちしたら帰って来られるかもしれないけど……」


少女は自信なさげに答えます。


「そう、か。それで、出発はいつなんだい?最後に皆んなでお別れパーティーでもしようよ」


再度、犬が問います。



「明日よ」


少女が答えます。



「あっ、明日!?それは、随分と急な話だね」


犬がひっくり返るぐらいに驚きます。



「ごめんなさい。お母さんとお父さんが昨日の夜に話してるのをこっそり聞いたのが初めてだったから…」


少女の声はだんだんと小さくなっていきます。



「キミが謝る必要なんてないよ。でも、そうかぁ。もう会えないのか。キミとも彼らとも」


犬はとても残念そうです。



「ふふ、貴方は本当に好きなのね」


少女が笑います。



「そ、そんなんじゃないよ!奏のことなんて!」


犬は大声で返します。



「誰も奏ちゃんなんて言ってませんよ〜。」


「っ!ぐぬぬ…。」


少女はとても楽しそうです。



「じゃあ。」


「うん。じゃあね。」


もう、お別れの時間です。



少女は公園の出入り口へと歩いていき、途中立ち止まり、後ろを振り向きます。



「最後に……。犬は自分を犬だと認識出来ないから、自分を犬とは言わないよ」


彼女は、笑って言いました。そして彼女は今度こそ公園から出ていきました。



公園には、スーツを着た大柄な男が一人。

最後にもう一度。

この話には、意味はあるけど教訓はない。


※2017年に身内間で書いたやつ見つけたので供養。

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