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脱出!
自分の部屋に戻って、小さなカバンをひっつかんだ。
そのまま表口に向かう。
私は表口……の横のトイレに入った。
そして、一番奥の個室に入って窓を開ける。
この窓は、出てすぐに施設の後ろの細道に出る。
だから、ここから脱出するのが一番だと思った。
私が窓に足をかけたとき。
「かなちゃ~ん。」
ちまの声が聞こえた。
「かなちゃん。どこにいるの?」
続いて母さん(といっても施設に働いている人だけど)の声も。
まずいな……。
もうばれたのか…………?
「ちまちゃんから聞いたよ?悲しそうな顔してたって。
なにか悩んでいるの?聞くから隠れるのはやめてちょうだい?」
…………そういうことになってるの?
声もまだ遠くからだし、今なら出てもすぐには追ってこないんじゃ…………?
よし。決めた。
窓から出て一生懸命走ろう。
ダッ!
私は窓枠を力強く蹴った。
タン。
と地面に両足をつけ、それからは全速力で走った。
大きな通りをいくつも横切った。
いろんな人とすれ違った。
走って走って、喉の奥から変な味がしても走った。
私の、私だけの居場所を探すために。