脱出
もうやだ!
私の親がいなくて、ずっと施設にいて、目の色が黄色だからって誰にも引き取られないなんて!
私、神楽叶奈は好きで親から捨てれたんじゃないのに。
好きで瞳の色を黄色にしてるんじゃないのに。
私だって黄色の瞳、やだよ。
もう誰にも引き取られないのなら、ずっとこのまま大人になるのなら。
こんな施設、出てやる。
……。お金、は持ってないし……。
こんなもんか。
なぁんだ。施設で育ったから、そんなに大切なものないんじゃん。
私は小さいカバンを見て、大きく息をついた。
入っているのはおやつのへそくりのチョコと、飴と…………。
これ必要なのか?
私が施設の前に捨てられたとき、一緒に入っていたというミサンガ。
糸の色は色あせ、あちこちがほつれているけど、あたたかみのあるオレンジの糸で紡がれたミサンガ。
…………まぁ、私が持ってるものって元々少ないし、どうせなら持っていこう。
みんなが集まって食事をする。
その時間をねらってこの施設から脱走したいとおもう。
みんなはご飯を食べてるから、トイレ行ってくる。とでも言っておけばなんとかなる…………はず。
それに、お母さんたちも小さい子の世話に集中してるから、十二歳がいなくなっても不信に思われない…………はず。
「かなちゃんっ。一緒にご飯食べに行こう」
「うん。そうしよ。」
私の妹の存在である、みちにも今日でお別れだ。
何も言わずに出て行ったら悲しむだろうな…………。
ちょっとだけ後ろめたさを感じながらも、私は食事の途中でみんなの会話から抜け出した。