第六十七話 これで解決!
「それでモケゾウ、心当たりってどんなこと? 」
魔族の土地から精霊がいなくなったきっかけってなんだろう?
『たぶんモケど、二百年ぐらい前に魔族の住む土地で、ある魔族が、ある精霊を追っかけ回す事件があったモケ。その魔族は、その精霊を気に入って手に入れようとしたモケど………返り討ちにあったモケ』
今の流れは完全に捕まる話だったはずだけど、まさかの返り討ちって………。
『それからイロイロあったんモケど、その話を知った精霊王様が怒って、魔族の住む土地から精霊は撤退っていう指示が出たモケ』
あ〜、あの精霊王様ならそんな指示出しそう。
しかし、魔族を返り討ちに出来るなんて、精霊って結構武闘派多いよね?
『モケ、ちなみにその精霊って僕の部下の一人モケ〜』
「あ、だから返り討ちに出来たんだね……」
『たぶん、精霊王様、そのこと忘れてるモケ。確かあの時、百年ぐらいたったら精霊を戻すって言ってたモケから。ちょっと精霊王様に連絡してみるモケ〜』
そう言うとモケゾウは召喚陣を書いて、その中に飛び込んだ。
そして、ものの数秒で帰ってきた。
『やっぱり、忘れてたって言ってたモケ〜。魔族の土地に精霊戻すって言ってたモケから、二、三年で昔みたいになるモケね。忘れてたお詫びに祝福かけとくって言ってたモケ〜』
「祝福? 」
『そうモケ〜。子供が成る実、豊作にするって言ってたモケ〜』
………これで解決で良いのかな?
私は魔族の方を見てみた。
………あ。
うん、気持ちはわかるよ?
そうだよね、忘れられていたんだもんね。
魔族が未だ、信じられないような顔をしている。
「これで子供の問題は解決のようですが………もう、精霊の魔力を抜かなくても良いですよね? 」
こうしてイワシ祭りは、精霊行方不明、魔族魔力抜き取り事件を経て閉幕した。
………はずなんだけど。
「何故、我が家に魔族さんがいるのかな? 」
そう! 何故かあの魔族、くっ付いて来たのだ。
トナトナが大きくなって私たちを運んでくれた時に、自分もこっちの方に用事があるとか言って、トナトナの後ろを飛んでついて来たのだ。
「ふん! 誇り高いこの魔族の中の魔族である、ヴォルガノフ・ヴァンプは受けた恩は必ず返すのだ! 私はまだまだ若いからな、ちびっ子が一生を終えるまで付き合えるぞ! 」
「いやいや、何年ここにいるつもり? せっかく魔族の国で子供が出来るようになるんだから、ちゃんと帰りなよ」
「ちびっ子よ、気にする必要はないぞ? 国には連絡も入れたし、その時にしっかり恩を返して来いとも言われている。私は出来る魔族だぞ? 」
どうやら国に帰る気は、これっぽっちもないようだ。
『モケ、主〜、僕に任せてほしいモケ。こいつも鍛えてあげるモケ〜。王子にも話しておいたモケから、騎士達の訓練にも連れて行くモケ〜。主の父上達にもちゃんと僕が言っておくモケよ〜』
何故かヤル気のモケゾウ。
「………もう、しょうがないな〜。じゃあ、魔族さん。いや、ヴォルガノフさん。気が済んだらちゃんと国に帰って下さいね? 」
「ちびっ子、私のことは特別に『ヴォル』と呼んで良いぞ。特別だからな! 」
「じゃあ、私のこともフローラと呼んで下さい」
「………いや。ちびっ子はちびっ子だからな」
何故か名前では呼ばないようだ、どうやらこれからもちびっ子呼びらしい。
『モケ〜、それじゃあ早速訓練に行くモケよ〜』
「いや、私はこれからちびっ子用のお菓子を作ろうかと………」
『それは後からモケ〜。とにかく訓練して強くなるモケよ。モケ、そこで関係ないみたいに転がっている、フラン、カッパ、マサムネもお城に行くから準備するモケ!トナトナは………自由で良いモケ』
みんなが慌ただしく出かける準備をしている。
ちなみにマグローとマグニーは、海の生態系が落ち着くまで海にいて、後からこっちに遊びに来ると言っていた。
トナトナは定期的に、新鮮なイワシをちょーだいとお願いしていたようだ。
『モケ、主〜行ってくるモケよ』
「うん、みんな気をつけてね。帰って来たばっかりなんだから無理しちゃダメだよ? あ、そうだ! 魔力ちょっと渡しておけば元気で訓練出来るよね? 」
私は一人ずつ、魔力をちょっと渡してあげた。
ヴォルにもあげたんだけど………。
「お、おおう! これは! 今なら勝てる?! 」
と、言ったそばからモケゾウにど突かれてる。
『アホなこと言ってないで行くモケよ。モケ、今度こそ行ってくるモケ〜』
「うん、いってらっしゃい! 」
その後、私の魔力効果でちょっと元気になったモケゾウ達が、お城の騎士様達相手にちょっとだけ訓練を激しくしてしまったのは、申し訳ないと思っている。
ただ、一番激しい訓練だったのはヴォルだったらしいけどね。




