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第五話 帰ってきたよ!

 あの後、私と父は宰相殿に促されて帰宅した。

 陛下達は宰相殿に強く抑え込まれていたようで、引き止められるようなこともなかった。


「フローラ………今日は大変だったな………。しかし、本当にフローラは陛下方に接しても大丈夫なのだな。私は情けないことに話す時には吃るし、接しているだけで震えてしまう。獣人の性とはいえ娘の前で情けない」


 馬車の中で父は項垂れながら私にそう言った。


「お父様は情けなくなどありません! だってお父様は震えながらも陛下にきちんとお話しして下さったではないですか。私はお父様に守ってもらえてとても嬉しかったです! 」


 あの時、別に怖くはなかったけど父が必死に私を助けようとしてくれたことが心に深くつき刺さった。

 今世の親は力は弱いかもしれないけど、心は物凄く強い。

 それが何よりも嬉しい!

 何があっても味方になってくれる存在ってお金や力じゃ買えない。

 それを前世で思い知っている私は父の存在が奇跡のようだ。


「フローラにそう言ってもらえて嬉しいよ。でも、これからのこともあるから家に帰ってから詳しく高位貴族との関係を説明するよ。もともと今日の茶会もその説明をスムーズにする為のものだったのだから。しかしあんなことになって、本来であれば陛下の挨拶が終われば下位貴族で子供達を紹介しあっていたのだが、フローラは出来なくて残念だったな。あんなに楽しみにしていたのに………」


「そうですね、お友達が出来なかったのは残念ですが、陛下や殿下方にお会いできたのは記念になって良かったと思っていますよ。それにお友達はこれからも機会があれば出来ると思いますし」


 私の言葉に父が優しく頭を撫でてくれた。


「フローラは本当に天使のようだ………。よし! 必ず私がフローラに友達が出来るように機会を作るからな、楽しみにしておいておくれ」


 そんなことを話しながら馬車は家へと向かった。




 家に着くと母が出迎えてくれた。


「おかえりなさい。二人とも疲れたでしょう。さあ、あちらでお茶でも飲みながらフローラにできたお友達のお話を聞かせてちょうだい」


 母がニコニコしながら私と父を部屋へ促した。

 私と父はお互いに顔を見合わせ、困った表情を浮かべた。

 そして、母に今日の出来事を話したのだが………母、倒れた。


「お、お母様! しっかりして下さい! 」


「お、おい、レイア! ほ、ほら、落ち着いて、フローラもこうやって無事なんだから」


 私と父の必死の呼びかけで母復活した。

 ふう、びっくりしたよ〜

 でも、それぐらい大変なことなんだと改めて思った。


「ご、ごめんなさい二人とも。大変だったのは二人だものね。本当に無事帰って来られて良かったわ。私の可愛いフローラは王族の方までも魅了してしまうのね………。」


「そうだな、王族に気に入られてしまったんだよな………。とりあえずフローラには高位貴族について説明するから聞いておくれ」


 そうやって父が語ったのは、前世の常識とは全く違うものだった。



 ・ 高位貴族は下位貴族を大変可愛がっている

 ・下位貴族は本能からそんな高位貴族を怖がって近づくのを恐れてしまう

 ・高位と下位貴族の婚約は基本難しい、無理やり従わせるのは厳罰に処される

 ・特に子供の獣人は高位貴族を恐れる


 以上のことを踏まえて……………おぅ、私はやってしまったようだ。


「何故フローラが高位貴族に恐れないかはわからないが………たぶん、いや、間違いなく陛下達はフローラに夢中になってしまった」


「確かにフローラの可愛さは群を抜いてますが、陛下達を前に震えず、話すことも出来るなんて………凄いわ! フローラ! でも、そうなってしまうと高位貴族の方々もフローラに会いたがるのではないでしょうか? 」


 母が心配そうに父に問いかけた。


「ああ、私もそれを心配している。今は大丈夫かもしれないが突然本能が呼び覚まされる可能性もあるからな。だが、正直王家から何か言ってきた場合拒否することは難しい………。だ、だが、フローラのことは絶対に守るから安心しておくれ! 」


 父の言葉に母もしきりに頷いている。

 ああ、本当に優しく強い両親だ。

 大丈夫、私だってそんな二人を大切に思っているし守りたいから。



 次の日、王家から便りが届いた。


 要約すると昨日はゴメンね、もし良かったら近いうちにお城に来てよ。

 嫌がることは絶対にしないし、嫌だったら断っても大丈夫だよ………的なことが格式張って長々と書かれていた。

 なんかめっちゃ腰が低いな〜

 いくら下位貴族を愛でたくてしかたなくても、流石にこれは如何なものかと。

 私のそんな感情が顔に出ていたのか父が


「フローラ、いくら王家でも普通の下位貴族にはこんな言い方しないよ。むしろこれはフローラだから言ってきているんだ。それぐらい高位貴族にとってフローラの存在は貴重なんだ」


 そんなにですかい?!

 これは私の可愛さ関係ないのでは?………なんて考えてみたり。




 その頃お城では…………


「来る、来ない、来る、来ない…………」


「あ、兄上、ここら一面花が無くなっているのですが、何をしているんですか?!」


「俺の天使が来るか来ないか占っているんだ、邪魔しないでくれ………」


「あ、あんなにクールだった兄上が………天使スゲえ」


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