第三十九話 なんかやることになったよ!
なんか、訪問理由を聞いてどっと疲れが………。
王妃様は何も心配ないって言うけど、私の野生のカンが言っている………絶対なんかあると。
「そうそう、一応ね隣国の方々がこちらに来た時、歓迎の会を開くのよ。ただ、エイドリアンが出ないって言って聞かなくてね。でも、会わないことにはあちらも諦めないと思うのよね」
「そうですよね、会わないといつまでもこちらの国にいるかもしれないですね。その時は、私は王城には行かないようにしますね。もともと行くような身分ではありませんでしたが、幸運にもこうやって王妃様とミランダちゃんと仲良くさせていただいております。精霊の力が必要な時など、下手に私が行くと話が拗れる予感がするので」
私の言葉に王妃様とミランダちゃん、何故か侍女の皆さんまで『ガーーーン! 』とショックな表情をしている。
「い、嫌だよ! フローラちゃんに会えないなんて! 」
「そ、そうよ! フローラちゃんに会えないなんて………わかりました、責任を持って私がエイドリアンを歓迎の会に引っ張り出します! 遅かれ早かれ断るのであれば、逃げ回るのは下策。さっさとお断りさせましょう! さあ、そうと決まればエイドリアンを捕まえなきゃ」
あ、あれ? なんだかエリー様にかなり申し訳ない流れが出来ている………。
いや、でも、前世からワガママ王族は鬼門、関わるなと心に決めているし。
エリー様ごめんなさい!
あ、それから忘れてた………王妃様とミランダちゃんにお土産持ってきたんだった。
「あ、あの、王妃様、最初に渡すべきでしたのに私、渡し忘れていまして…………あの、こちらの品、王妃様とミランダちゃんに受け取ってもらえたら嬉しいのですが………」
そう言って私は王妃様とミランダちゃんの前にラッピングしてきた品物を出した。
「うわぁ! フローラちゃんからのプレゼント!? 嬉しい! ね、開けてみても良い? 」
ミランダちゃんの問いかけに私はニッコリ笑顔でハイ! と答えた。
ミランダちゃんがラッピングを解いて中を覗くと
「!! スッゴーーーい! とっても綺麗な刺繍だわ! こ、これってもしかしてフローラちゃんの手作り? 」
「はい、そうです。良かったら使って下さい」
私がお二人に渡したのは、私が刺繍したハンカチ。
もちろん魔力を練り込んでおいた。
効果としては状態異常無効化だ。
王族ならいくら平和な国でも万が一がある、それを防げればいいなと思って縫った。
『モケ〜、一応言っておくモケど、そのハンカチ、主の魔力………いや、僕も手伝ったからそんじょそこらの魅了やら毒やら無効化するから持っておくと良いモケよ〜』
モケゾウの言葉に二人と側にいた侍女さんたちが固まった。
いやいや、そんな手間でもなかったし、気にしないで下さい。
とりあえず笑って誤魔化しておく。
「魅了や毒を弱めるではなく無効化………完全に国宝レベルね」
いやいや、国宝って。
そんなわけないですよ〜、っていう顔でみんなを見渡したけど王妃様、ミランダちゃん、侍女の方々の他に味方のはずのチームモケゾウにまで何そんなわけないって顔してんの!って顔で見られた………何故?
「あ、あの別にそんなに大層な扱いされなくても………あの、日常でさり気なく使っていただけたら嬉しいので………」
「フローラちゃん………日常って………確かに持っていればこんなに心強いアイテムはないわ。………それにもしかしたらこれは今回の歓迎の会に必要かも………」
おや、穏やかじゃないですね?
「無効化必要になってしまいますか? 」
「まあ、噂なんだけどね。隣国の姫は気に入った男性がいたら婚約者がいても構わず近付いていたらしくて………最初は避けていた男性もいつのまにか仲の良かった婚約者を蔑ろにするようなことがあったらしいのよ。ただ、それが魅了なのか、男性の方も権力に負けたのか何なのかまで情報が入って来なくってね。でも、もしフローラちゃんのこのハンカチがあったら魅了だけは避けられるなって思って。でも、魅了の範囲もわからないし、それが本当かもわからないのは問題なのよね」
うわー、魅了持ちの可能性か。
前世でもいたわ、魅了持ち。
あの時は本人が気付かず周りを魅了しまくって大変だった。
私の部下にも被害が来そうだったからみんなにお守り持たせたっけ。
「範囲がわからないのであれば、とりあえず歓迎の会に参加する人には全員お守り渡しますか? 」
「え?」
「ハンカチだと流石に大変ですけど、魅了の無効化だけつけたちょっとしたお守りぐらいなら一つにそんなに時間かかりません。ただ、渡して素直に持っていてくれるかはわかりませんが………」
「え、あ、あの、フローラちゃん? ま、待って、そんなに簡単に魅了無効化のお守り作れるの? だ、だって歓迎の会に参加する貴族は基本高位貴族だけだけどそれでも何十、家族を含めれば何百もいるのよ? 」
「はい、大丈夫ですよ。あ、でもどうやって渡しましょうか? 私なんかが作ったものじゃ皆さん持っていてくれないですよね? 」
「そ、それこそ問題ないわよ! フローラちゃんは今や高位貴族の人気が凄いんだから。聞いたわよ、この間リースが付き添ったお茶会でフローラちゃんと握手してもらった子達が感激してたって。それを聞いたご家族やお友達が自分も握手してほしいって言っているって。………それだわ! フローラちゃんと握手してお守りをもらったら特に何も言わなくてもきっと持ち歩くわ! お願い! フローラちゃん、本当に申し訳ないのだけどみんなと握手してくれないかしら? もちろん警備はガッチリ固めるわ」
「警備は、別にそこまでしていただかなくても良いのですが、それより私との握手などに高位貴族の方々が来てくれるでしょうか? まあ、もし来なかった場合はお守りだけ何とか歓迎の会の時に持ってもらえればいいので」
「なに言ってるのよ! 絶対集まるわよ! そうと決まれば急いで連絡しないと………でも、お守り作るの大変よね? 」
「いえ、三日ぐらいもらえれば大丈夫ですよ。本当に小さい匂い袋みたいなものにするので………あ〜、アレです、モケゾウ達も手伝ってくれるので大丈夫です」
「そう? 本当に無理はしないでね」
こうして、何故か私との握手の会が急遽開催されることになった。
これ、本当に需要ある?




