第三十話 化けたよ!
『な、な、なんなんですのぉ〜〜! 急に手が現れたと思ったら引っ張られて、気付いたら召喚陣にぶち込まれるって! 』
ピンクのモケゾウ? みたいな子が激怒している。
おいおいモケゾウさん、これはどうするんですかい?
『モケモケ〜、久しぶりモケね〜』
モケゾウの声にギギギと音がしそうな感じでピンクの子がモケゾウの方を見た。
そして…………っひ! ピンクから真っ青に!
『も、も、も、も、も、も!!』
『そうモケ、モケゾウだモケよ〜〜』
『な、なななな、な、な!』
『モケ〜? 何でって、用事があったから呼んだモケよ』
おお〜〜、なんか会話が成立している!
ピンクの子の動揺っぷりが激しいけど。
『ふーふーふー!……………おおおおおお久しぶりでございましゅ! 』
めっちゃ噛んだ!
どんだけモケゾウにあって動揺しているんだ。
『モケ、そうモケね、二百年ぶりぐらいモケね〜。んで、呼んだのは人間に化けて僕の主の付き添いをしてほしいモケよ』
『……………!? あ、あ、主でありますか? ど、どこに、その覇王がいるですか?! 私ごときではそのような方のお側に控えることは難しいでありますよ! 』
『主は………モケ、ここにいるモケよ』
モケゾウが私の方を見た。
それにつられてピンクの子も私を見た。
モケゾウに似たつぶらな瞳でじーーーっと見てくる。
『…………幼女であります』
『モケ、そうモケね』
『幼女であります!! 』
『だからそうだって言っているモケ』
『な、な、な、なんで幼女でありますか?! いつも言っていたではないですか? 仕える相手は筋肉ムッキムキのオーラバリバリの人だって! 筋肉どこでありますか? これではモフモフであります! 』
ピンクの子が私の尻尾にピッタリくっついた。
そのまま尻尾にスリスリしている。
うーん、ちょいくすぐったい。
『めちゃくちゃモフモフであります! 筋肉のきの字も見つけられないであります! 』
『………そうモケね。 で、人間に化けてモケ』
『………で、の意味はわからないないでありますが、化けて隊長の主さまに仕えれば良いのでありますか? 確かに今、私は誰とも契約結んでいないでありますが、これでも上級精霊。そんじょそこらの幼女に仕えることなぞ出来ないでありますよ』
『モケ〜、主〜、ちょっとコイツに魔力あげてみてほしいモケ〜』
うん? 魔力ですかい?
私はモケゾウに言われるがまま、ピンクの子に魔力を流した。
『ピ! ピギャーーーー!! 』
ピンクの子が叫び声をあげて転がった。
部屋の隅から隅まで転がりまくる………。
さっきから空気になってしまっている父と家庭教師のオジさんもドン引きだ。
私は魔力以外のものも流してしまったのだろうか?
『な、な、な、なんて美味しい魔力でありますか!! このまろやかでコクがあり、それでいて後味すっきり、だけど後引く美味しさ………まさに最高級のご馳走!! 不肖、上級精霊、「神速のフランソワ」隊長の主さまに永遠の忠誠を捧げるであります! 今日から末永くよろしくお願いしたいであります! 』
つぶらな瞳をキラキラさせながらこちらを見ている。
え、これ、私はどうしたら良いの?
『モケ〜、主〜、コイツ結構出来るヤツだから契約結んでやってほしいモケ〜。主の魔力なら契約結んでも主の負担にはならないモケよ』
あ、契約するんだ。
まあ、つぶらな瞳が可愛いから契約してくれるなら嬉しいけど。
「えーっと、フランソワ? 私と契約しても良いの? 」
『バッチ来いであります! 私のことはフランと呼んで下さいであります、契約していただけるならいくらでも人間に化けて、どこまでもついて行くであります! 』
「じゃ、じゃあ、これからよろしくねフラン」
契約にあたり私の魔力をあげたら、案の定また転がった。
『ふう、興奮のあまり自分を抑えられなかったであります! しかし、ちゃんとやることはやるであります。じゃあ、ササっと人間に化けるでありますね』
フランがその場でスピンし始めた。
物凄いスピードで回って、回って、その姿を確認出来ないような回転になった時、急にフランが大きくなった。
そして回転が完全に止まった時、そこにいたのはピンクの髪の毛の綺麗な推定年齢二十歳の女性だった。
『こんな感じでどうでありますか? たぶん侍女ってヤツをするんだと思ったのでそれっぽい格好にしたであります』
「す、凄いよ! フラン! 精霊が人間になるところ初めて見たわ。しかもちゃんと姿を考えてくれたのね、ありがとう! それからモケゾウもありがとう、これで図書館に行けるわ」
『喜んでもらえて光栄であります! ちゃんと役に立つでありますので、一日一回魔力貰えると嬉しいであります! あ、あと隊長………さっき急に召喚されたから精霊王さまから頼まれていた作業が途中でありますよ。どうしたらいいでありますか? 』
『モケ〜、あとで僕から言っておくからいいモケ。どうせいつものモケ〜』
精霊王様の扱いが雑なんだけど良いのかな?
でも、これでやっと外に出られる。
そういえば、フランが人間に化けられるってことは、もしかしてモケゾウも出来るのかな?




