第二十四話 アホっぽいよ!
やって来ました、魔術師が魔術の練習用に使っている訓練場に。
ここは防護壁がバッチリ張られているから暴れても良いんだって。
でも、モケゾウが本気を出すとパリーーンと割れるから本気は駄目だぞ。
「今日はここで、精霊と契約している全員を集めて訓練を予定しているの。そろそろみんな集まって来るはずだからちょっと待っててね」
そう言うとエリー様は集まりだしている魔術師たちの方へと向かった。
まだ紹介されていない私は端っこで待機。
エリー様が気を利かせたのか、キャロラインが私の近くに付いている。
そのキャロラインだが私の方をチラチラ見て何か言いたそうにしているようだ。
「………えーっと、私に何かご用事かな? 」
私の言葉にキャロラインがビクッとなった。
『…………………この間は…………イタズラしようとして…………悪かった』
なんとか絞り出した謝罪のようだ。
ちゃんと、言われたから謝ったんじゃなくて、自分で考えて言ったみたいだ。
「私は、モケゾウが守ってくれたから実質被害はないよ。でも、あんまりやんちゃが過ぎるとエリー様も大変だから程々にね? 」
『………ああ。………なあ、あんたなんでコイツと契約出来てるんだ? スゲーー魔力持っていかれるだろう? 確かにあんたは魔力多そうだけど、それでもコイツは規格外だ』
コイツっていうのはもちろんモケゾウのことで、魔力か〜、あんまり意識したことないんだよな〜。
前世でも基本戦闘は魔法使わなかったし、使うとしても趣味の手芸や菓子作りにちょっと込め込めするだけだしな〜。
だから有り余っているのか?
「あんまり魔力を意識したことないわ。モケゾウは、別に私の魔力が目当てで一緒にいるわけじゃないと思うしね」
『モケモケ〜。主が主でいてくれるだけでいいモケ〜』
だそうだ。
「お待たせ、フローラちゃん! 今日のメンバーが揃ったからフローラちゃんのことを紹介させてね」
「はい、わかりました」
私はエリー様に連れられて、魔術師達の元へと案内された。
エリー様が言うには、ここに集められた人達は初級から上級までの精霊と契約している人達とのこと。
そして例の新人君もいるのね。
「は〜〜い、注目! 今日は特別ゲストを呼んでみました、ベルンハルト子爵家のフローラちゃんです! 」
紹介されたは良いけど、みんな頭にハテナマークが浮かんでいる。
そりゃそうだ、いきなりこんな幼女が訓練場に来て特別ゲストって…………エリー様! 説明が雑ですよ!
私が困った顔でエリー様を見つめたところで誰かが声をあげた。
「なんでここにそんなチビが紛れ込んでるんですか?! ここは神聖な訓練場ですよ! 子供の遊び場じゃないんですからね!…………まあ、カワイイけど………」
叫ぶように不満を訴えた声の方を見れば、この場で一番若く見える風貌の子がいた。
もしかしてアレか?
私は確認の意味も込めてエリー様に視線を向けると、エリー様も私を見てて、そうだと言うように頷いた。
そうか、アレか〜。
見た目は赤髪のやんちゃそうな坊ちゃん。
そういえば高位貴族の中でも高位ってどのくらいなんだろう?
今更ながら、私ってば不敬罪とか言われないよね。
まあ、王弟であらせられるエリー様がいるんだし、何とかしてくれるよね? ね?
「ごめんなさい、紹介が足りなかったわ。フローラちゃんはリース殿下の婚約者にして、なんと………上級精霊の契約者なの。凄いわよね〜、フローラちゃんまだ六歳だもの! 」
年齢のことを言う時、明らかに新人君のこと見た………煽ってるのかな?
ってか、釣れた。
「じょ、上級だとぉ〜〜、ふん!本当に上級なのか? ただの初級の精霊と契約しただけで上級としたとでも大きく言ってるだけじゃないのか? 」
「あら? バールは私が嘘を言ってると思っているの? 」
「べ、別に魔術師長が嘘をついているとかじゃなくて………ただそんなチビと、上級が契約を結ぶわけないと俺は思って………」
「そう………でもね、こんなことで私は冗談は言わないわよ。まあ、実際に見た方が早いだろうし、フローラちゃん、お願いしても良いかしら? 」
エリー様に言われて私がモケゾウに出て来るように伝えようとした時、訓練場に火柱がたった。
『ああ〜〜ん!? 上級がそんなにホイホイ契約するわけないだろうが!! ほれ、そこのガキ! 大方騙されているんだろう? さっさと契約している精霊っていうのを出してみろよ! どうせザッコイ、初級か良くて中級だろうが、ほれ』
アレが新人君の精霊か…………アホっぽいな。
自分の力を見せつけるために火柱出しまくっているけど、君の主は魔力を持っていかれて青い顔だぞ。
これは精霊と主のあり方が間違っているんじゃないかい?
………それに、私は怒っているぞ、うちのモケゾウがザッコイわけないじゃん。
「私の精霊は本当に上級ですよ。確認ちゃんと出来たら謝って下さいね? 」
さあ、モケゾウやっちゃおう!




