第二十二話 喜んでくれたよ!
「殿下、ハンカチ喜んでくれたかな〜」
『そんなの当たり前だモケ。ドレスよりよっぽど価値があるモケよ』
部屋でまったりしながらモケゾウとティータイム。
モケゾウは紅茶が大好きで、小さいサイズのまま、自分と同じサイズのカップにしがみついて美味しそうに飲んでいる。
ところでアレは熱くないのかな?
明らかに体より多い量が消えていく、どこに消えているのかな。
「そうだ! まだ布があるしお父様とお母様にも作ってあげようかしら? 」
『モケ、良いと思うモケ。御守りになるモケね』
そうと決まれば、早速取りかかろう!
付与は何にしようかな〜
あんまり強すぎる効果だと目立っちゃうから………そうだ! 最近父も母も私のせいで心労がヒドイから、心を落ち着かせる効果を付与しよう。
無心になってチクチクと手を動かし、素早く縫っていく。
ちなみにその間モケゾウは、一心不乱に拳を高速で打ち出していた。
どう関係するのかイマイチわからないけど、アレをすると魔力が出しやすいらしい………謎だ。
モケゾウのことは一旦置いておいて、私は一気に仕上げていく。
最後に忘れずにワンポイントで角にはリスの刺繍を入れて………うん、我ながら可愛いのが出来た。
それから、これは特別な付与を………。
私は父と母の分とは別にもう一つ作り始めた。
私の出来る精一杯の付与をつけて。
「よーーーーし! 出来た! 」
『モケモケ〜。さすが主、付与付きのハンカチなのにこんなに早く作れるモケなんて』
モケゾウに褒められちゃった。
『早速、主の父上と母上に渡しに行くモケか? 』
「うーん、お父様とお母様には後で会った時に渡すよ。それより…………じゃーーん! これ見て! モケゾウのために作ってみました。どう? 良い感じじゃない? 」
私は父と母とは別に作っておいた、モケゾウの為に作った物を渡した。
モケゾウには赤い布に付与をたっぷり縫い込んで見たのだ。
そしてワンポイントで角には………モケゾウを刺繍してみた、すっごい似てる。
『も、も、も、モキューーーーーーーーー!! モケモケモケモケーーーーー! 』
も、モケゾウがご乱心だ。
私が渡した赤いハンカチを持って部屋の中を走り回っている。
時々ハンカチを見ながら『モケモケ』言ってるし。
「おおーい、モケゾウさーーん! 落ち着いてちょうだい、ほら止まって、止まって」
私は走ってたモケゾウを捕まえた。
おお、つぶらな瞳でこちらを見てくるね〜
『モケモケ〜、主、主、これ本当に僕のものモケ? 僕にまたくれるモケか? 』
モケゾウがお目目を大きくして問いかけてくる。
そりゃ答えなんて一つだよ、モケゾウさん。
「そうだよ、それはモケゾウのものだよ。大事にしてね」
モケゾウが私の手の中で大きく頷いている。
『モケ! 大事にするモケ! 主、主! これ僕の首に結んで欲しいモケ! 』
私はモケゾウの首? のあたりに苦しくないようにハンカチを巻いてあげた。
モケゾウにはちょっと大きかったためかマントのようになっている。
ふふ、カワイイ〜
「よし、出来た! モケゾウ、よく似合っているよ! 」
『モケ〜、主、ありがとうモケ! しかもこれよく見たらいっぱい付与がついてるモケ! こんなの、世界の大物が土下座して、大金出してでも欲しがる一品だモケ! もちろん僕は絶対誰にも渡さないモケよ! あ、でもこれもう、僕専用の登録がされているモケ、さすが主モケ〜』
モケゾウが体いっぱいで喜びを表してくれている。
やっぱりモケゾウにも作って良かった!
その後、父と母にもハンカチを贈ったら泣いて喜んでくれた。
今世の家族はやっぱり優しくてステキな人たちだ。
ーーー城にて
「いつの間に兄上とフローラ嬢の婚約が進んだんですか? 」
「…………私も子リスちゃんに会いたかった」
ユアンとミランダが不満そうな顔で私を見てくる。
「フローラ嬢を守る為に婚約を結んだんだ。ミランダ、フローラ嬢にはまた今度会えるから、とりあえず本人に『子リスちゃん』なんて言わないようにな」
「兄上、それなら婚約者は年の近い俺でも良かったんじゃ………いえ、はい、何でもないです」
ユアンが何かおかしいことを言いそうだったので睨んだんだが、思いのほか威力があったようだ。
きっとこうやって私とフローラ嬢の婚約に不満がある奴らが言ってくると思うのでイイ練習になった。
「リースお兄様、今度はいつ、子リ……えっと、フローラちゃんに会えますか? 」
ふむ、ミランダも会いたがっているし、また城に呼んだら来てくれるだろうか?
何より婚約者だし、私だってもちろん会いたい。
あまり無理はさせたくないが………どうしたらもっと会えるだろう?
父上や母上に相談してみるか………しかしうちの家族はみんなフローラ嬢を気に入っているからな………この間叔父上も冗談めかして自分が婚約者にとか言っていたが、アレは目が本気だった。
婚約者になったからと言ってまだまだ油断出来ないな。
「父上と母上にも相談してみよう。あまりフローラ嬢の負担にならないようにしないとな」
はあ、もっと気楽に会えると良いのにな。