第十七話 やっちゃったよ!
「じゃあ、私の精霊を紹介するわね! さあ、おいでキャロライン! 」
……………。
「あ、あれ? おおーい、キャロちゃ〜ん!出番よ〜」
……………。
「え、えーっと、ちょ、ちょっと調子が悪いわね。………おかしいな〜、さっきまで部屋に居たんだけど」
……………。
……………も、も、モケゾウさん?
ちょ、あの子本当に何をした?
私は必死に心の中でモケゾウに呼びかけた。
(モケゾウ、モケゾウ、モケゾウ、モケゾウさーーーーーーん!!)
『モケ〜、どうしたの主? 僕を呼んだかモケか? 』
よ、良かったモケゾウに通じた!
私はモケゾウにだけ聞こえるように小声で聞いた。
「ねえ、モケゾウ、さっき部屋の隅にいたけど何をしてたの?」
『モケ〜〜、うーん、ちょっと序列を教えて来たモケ〜』
序列………ですか。
それって誰に? って、絶対エリー様の精霊にだよね?!
「ちょ、ちょっとモケゾウ、具体的に何しちゃってきたの? ほ、ほら怒らないから言ってみよう」
『…………モケ』
何故『モケ』しか言わない!
………い、いや、だ、大丈夫、私はモケゾウを信じている!
「その序列を教えた精霊はどこにいるの? 」
『モケ〜、あそこの隅っこで膝を抱えてるモケ』
精神的ダメージ、特大だった!
私はモケゾウが指し示す隅っこの気配を探った。
………あ、確かになんか膝を抱えてなんかブツブツ言っているのがいる!
『………………なんだよアレ………………あんなの理不尽………………魔力が違いすぎ…………』
なんか、モケゾウがごめんなさい。
モケゾウの姿は消えたままだけど、気配でわかる………あの子、拳をシュッシュッって打ち出している。
拳なの? 拳でやっちゃったの?!
いや、待て。魔力が違い過ぎって言ってるから拳じゃない……はず。
その間もエリー様はキャロラインちゃんを呼び出そうと頑張っている。
「ごめんなさい。いつもは呼ばなくても出てくるんだけど………部屋の中にはいるのはわかっているんだけど、呼んでも来ないなんておかしいわね」
本当にすみません!
ど、どうしよう。
………そうだ! モケゾウに頼んで呼んできてもらおうか。
モケゾウによって精神的ダメージを受けているところ、モケゾウに呼んできてもらうのは可哀想だけど、エリー様も心配してるし、何より契約者に慰めてもらった方が良いはず。
べ、別に責任を丸投げしているわけでは………はい、しています。
でも、これ以上このままにしておくわけにはいけない。
「ねえ、モケゾウ。あの隅っこの精霊に、エリー様が呼んでいるから来るように伝えてちょうだい」
『モケ〜〜。呼ぶモケか?でも、あいつ、部屋の中に入った途端、主にイタズラしようとしてたモケよ? だから僕がわからせておいたモケ。まあ、もうやらないとは思うけど……まあ、いいモケ、呼んでくるモケね』
………ごめん、モケゾウ。
守ってくれてたんだね。
ほんと、脳筋は私だな。
どうやらモケゾウが隅っこに行って、エリー様の精霊を呼んでくれているらしい。
少々ゴネるかと思ってたけど、モケゾウの言うことを聞いてくれたみたい。
隅っこからトボトボ歩いて来るのが見える。
「あら、キャロラインどこに行ってたの? 呼んでも出てこないから心配していたのよ。………しかも、あのいつもの登場する時のセリフも言わないのね〜。いつもだったら『ふっはっはっはーー、俺様参上! 』って大声で叫ぶのに………」
『……マスター、俺、調子に乗ってたわ。もう、あんなセリフ言わない』
「ど、ど、ど、どうしちゃったのぉーー! いつもの自信満々の感じはどこに行ったのよ! 」
『………聞かないでくれ。それより俺に用事があったんだろう? 』
「もう! 本当にどうしちゃったの? まあ、詳しいことは後で聞くとして………じゃあ、今日の一番大事な用事を済ませましょうか。さあ、キャロライン、このフローラちゃんの魔力を調べてあげて。たぶん他の人と違う特殊な魔力があると思うのよ。私が調べるよりもあなたの方が魔力について詳しいでしょう? 」
『…………ああ、そいつか。そいつは………魔力が多い………それから、あと、アレだ………ヤバイのが付いている』
ヤバイのって、もしかしなくてもモケゾウのことですか?
でも、その言い方だとなんか呪われてそうなんだけど。
「魔力が多いのは何となくわかっていたけど、そのヤバいのって何よ? フローラちゃんに悪影響はないの? 」
『………悪影響かどうかはわからないが、そいつを傷付けることだけはないはずだ。現に俺が………』
そうですね、あなたもうやられてますもんね。
「キャロライン! やっぱりあなたフローラちゃんに何かしようとしてたの?! その心配があったから部屋に入ってきたフローラちゃんを抱きしめたんだけど、何もなかったからおかしいと思ったのよねー。でも、あなたに何もさせないなんて、フローラちゃんに何が付いていると言うの? 」
『それは………』
キャロラインが言い淀んでいると
『僕だモケ〜〜〜』
あ、出ちゃった。