第十三話 モケゾウを紹介したよ!
「ところでモケゾウ、前世なんで私が死んだかわかる? 」
前世の記憶はあるけど死ぬような状況がわからない。
一応、英雄だったし。
『モケ? 主は覚えてないモケか〜。………たぶんそれはいらない記憶だから覚えてないモケよ。そんな記憶はポポイのポイモケ〜』
ポポイのポイって、………私が死んだ理由そんな扱いでいいの?
『今、主がモケゾウの前にいる………それが全てモケ』
おお、なんかカッコいい!
モケゾウのくせに。
『そういえば主はなんか用事があって僕を呼んだモケか? 』
「用事………というかただ今の私がモケゾウを召喚出来るかを確かめたかっただけだったんだけど。でも、今世もモケゾウに会えて嬉しいよ。これからもよろしくね」
『モケモケ〜、主と一緒にいれて僕も嬉しいモケ〜。じゃあ、さっそく縄張りを広げるモケ! 手っ取り早くこの辺の強いヤツ全部ブッ飛ばすモケ』
「………いや、だからぶっ飛ばさないよ」
『………ブッ飛ばさないモケか〜』
何でそんなに武闘派に育ってしまったのだろう………。
………うん、認めたくはないけど前世の私のせいか。
しかし何故、私の可愛いものが好きな部分はなかったことにされているのか。
「フローラ………その…………フローラの胸元についているのは………」
モケゾウを自分の部屋の中で召喚した後、父と母にお茶に誘われたので来たのだが。
「フローラちゃん……あの、その胸元にいるのは………」
父と母がさっそくモケゾウに気付いたらしい。
今モケゾウは私の胸元から顔を出している。
あ、でもさっき普通にモケゾウと喋ったけど、果たして他の人ともお話し出来るのかな?
『モケ〜、主の父上と母上モケか? はじめましてモケ! 僕はモケゾウ、主に仕えているモケ。今はこんな姿だけど、これでも上級精霊モケよ。よろしくモケ〜』
「「!!」」
父と母が驚きのあまり尻尾がピーーーン!となっている。
今世での上級精霊の扱いってどんなんだろう?
前世では宮廷魔術師に何人か使役しているヤツがいたけど………。
「あの、お父様、お母様、この子はちょっと前に私が見つけたんです。有り難いことに私と契約してくれることになりまして。私の大事な友達なんです。一緒にいても良いですか? 」
ここぞとばかりにキュルルンお目目で父と母を見つめる。
まあ、ダメと言われてもモケゾウと離れたりしないけどね。
「あ、ああ、まさか上級精霊とは………モケゾウ様、お初にお目にかかります。フローラの父のリンガー・ベルンハルトと申します。そしてこちらが妻のレイアです。生きてる間に上級精霊様にお会いできるとは思いませんでした。本当に我が娘、フローラと契約を結ばれたのでしょうか? 」
『モケ〜、本当モケよ〜』
「な、なるほど。………ああ、だからフローラはあんなペンダントも持っていたのですね? あれはモケゾウ様が用意されたものだったのですね」
父の言葉にモケゾウが不思議そうに首を傾げている。
おおっと、ここはちょうど良いからモケゾウが作ったことにしてもらいましょう。
「そ、そうなんです! あの陛下に献上したペンダントはモケゾウが用意してくれたんです! 私のことを心配してくれて」
「そうか………そうであれば納得出来る。あの時は気が動転していて、何故フローラがあのペンダントを持っていたのか聞けていなかったからな。さすが上級精霊様ですね」
モケゾウはよくわからないけど空気を読んだらしい。
『モケモケ〜、そ、そうだモケ〜。ペンダント? ってやつは僕が主にあげたモケよ〜』
ヨシ! ナイスモケゾウ!
「そうですか、ありがとうございます。あのペンダントのお陰で助かりました。どうぞこれからもフローラを助けてやって下さい。よろしくお願いします」
こうしてモケゾウは父と母の公認で私と一緒にいられるようになった。
『ところで主、ペンダントって何だモケ? 』
「あー、アレね。実は………」
私はモケゾウにお城でのやり取りを説明してあげた。
『…………モケ。』
一言呟いてモケゾウが元の大きさに戻り、何やら魔力を練りはじめた。
「えっと、モケゾウ何やってるの? 」
『モケモケ、もちろんそのバカな侍女ズに天誅を下すモケよ。大丈夫モケ、跡形もなく始末するモケから。本当は王族にも言いたいことはあるモケが、今回は見逃してやるモケ。さあ、主、一言命令してくれれば瞬殺してくるモケ』
「待て待て待て! 別にモケゾウが手を汚すことないよ。たぶん侍女ズはバッチリ罰は受けると思うよ。自惚れじゃないけど私、王族の方たちに可愛がられているみたいなの。だから侍女ズはキツい罰を受けているはず。もしそれでも心配だったら侍女ズがどうなったか見てきたら? でも、絶対手は出しちゃダメだよ」
『モケ〜、そこまで言うなら今回はやめるモケ。でも、今後主をバカにする奴が現れたら僕は断固として戦うモケよ! 僕の拳が火をふくモケ〜』
そんなことをモケゾウが言ってたからか、結構早い段階でその機会は訪れた。