第十二話 私の可愛い子を呼んだよ!
さて、ここ最近お城でのゴタゴタに巻き込まれて忙しかったけど、そろそろ今の体で何が出来るか確かめたいな〜。
いや、前世のように筋肉ダルマになるつもりは無い!
ただ、こんなに可愛いフローラちゃんが襲われたりしたら大変じゃないか! だから今出来ることを確認することは非常に重要だ。
「ふぅ〜、『我の声に応えし古の友よ、ここに姿を現せ』」
私は古代語で呪文を唱える。
前世で動物に避けられていた私だが唯一、使役出来た精霊もどきがいた。
この子は生まれたばかりの精霊なの?って感じの子で、見た目はただの毛玉だった。
でも、可愛いものが大好きだった私は、唯一懐いてくれたこの精霊もどきが大切だった。
もしも前世の記憶がある私の魂に引き寄せられてくれれば………もう一度あの子に会えるかもしれない。
ピカーーーーー
私の足元が光った。
これは! 成功したの?
あの可愛い青色の毛玉に会えるの?
『もきゅ〜』
こ、この声は!
私の可愛い『モケゾウ』の声!
「も、モケゾウ? 」
私は足元の光にそう呼びかけた。
『モケモケ? 誰モケ? 僕は主の気配に惹かれてやって来たんだモケ』
光の中から声が聞こえる。
え?! 何で喋っているの?
私のモケゾウは『もきゅ〜』しか言わなかったんだけど………。
光がおさまりようやく見えたその姿は青色の…………
「えーーーーーー!何で手足生えてるの?!」
私の可愛い青色毛玉にまさかの手足が生えている!
今まで毛に覆われて目も口も見えなかったけど、可愛いまん丸お目目と可愛いお口もある!
『モケ〜? 気配は主だけど………可愛い女の子だモケ』
「声はモケゾウだけど手足がある………」
私たちはお互いに戸惑っていた。
でも………もしこの子が本当にモケゾウならアレが出来るはず。
「モケゾウ! 無限毛玉の術! 」
『!!』
私の声にモケゾウ(仮)が反応した。
手足を引っ込めたと思ったらその後伸縮し始めた。
『もきゅ〜〜〜』
一声鳴いた後、モケゾウは、いや青い毛玉が部屋中に現れた。
これは前世モケゾウが唯一使えた術。
私的には毛玉がいっぱいで可愛いからそれで良かったんだけど、実は使い道があった。
なんとこの毛玉、傷が癒せるのです!
前世、私が怪我をした時にモケゾウがこれを出してくれた。
私は、私を励ますために可愛いものを見せてくれたぐらいに考えていたが、この毛玉、私にくっついてきてその後溶けたのだ。
そしてその場所にあった結構深めの傷がなくなっていたのだ。
ああ、やっぱりこの子は私のモケゾウなのね、何故か手足が生えているけど。
『………あ、あるじ?主なのモケ? 本当に………なんでそんなか弱そうな女の子になっているモケ〜? 主は筋肉ムッキムキモケよ? モケ〜主は生まれ変わったのかモケ? 今から筋肉ムッキムキになるモケか? 』
おお、めっちゃ喋るな! モケゾウ!
昔は私が何か話しかけても『もきゅ〜』しか言わなかったのに。
そして私はムッキムキになる予定は全くございません!
「モケゾウ………なんで手足生えてるの? それにそんなに流暢に話せるようになっちゃって」
『モケ〜、僕、精霊試験に受かったから進化したモケ〜。今は上級精霊モケ〜。手足は中級になった時に、話せるようになったのは上級に受かってからモケよ〜』
「え? 精霊に試験ってあるの? しかもそれで中級とか上級って決まるんだ………」
『モケ〜、世知辛い世の中だモケよ。ただその辺漂っているだけだとあっという間に大地に吸収されちゃうモケよ。僕は主に出会えて、主と契約してもらって、主の魔力をいっぱい浴びてスクスク育ったモケ。主とお別れしちゃったあとは頑張って試験突破したモケ〜。たまに僕と契約を望む人がいるけど断っているモケ」
「え? あ、それだと私とも契約は出来ないんだ………」
せっかくモケゾウに会えたのに一緒にいれないんだ。
『何言ってるモケ。僕はさっきから「あるじ」って言ってるモケ。今も昔も僕の主は主だけモケ。それに僕が召喚されたってことは主との絆はまだ切れていないモケ。これからは僕が主を守るモケ』
そう言うとモケゾウは手のひらサイズになった。
ちなみに今までは子犬ぐらいの大きさだった。
『これで主にくっついていても問題ないモケ。さあ、主の敵をぶっ飛ばしに行くモケ! 昔は怖かったけどドラゴンだって大丈夫だモケ、ボッコボコにするモケよ。手始めにこの国を制圧するモケか? 』
「………いや、しないよ? 」
『………え? しないモケ? 』
どうやらモケゾウは前世の私の影響を強く受けているようだ。
この辺、よ〜〜〜く教育し直さなければいけない。
『あるじ〜〜、いつ筋肉ムッキムキになるモケ? 』
「………ならないよ」
『………ならないモケか』
モケゾウが私のことをどう思っているのか、話せるようになったことだし、よ〜〜〜く聞き出さないと。