第百十話 ヴォルしゃんといっちょ
なんだか衝撃的な一言を聞いた気がする………。
それはヴォルも同じみたいで、ものすごく困った顔をしている。
まあ、そうだよね。
だってホムラ………その、見た目ヒヨコだから。
とりあえずもうちょっとホムラの話を聞いてみよう。
「ねえ、ホムラ。ちゅがいって、番いのことよね? 」
『そうでちゅ! ここちゃいきん、じゅっとヴォルしゃんといっちょにいて、かくしんしたでちゅ。ホムラもまちゃかとおもってまちたけど………ヴォルしゃんはホムラのちゅがいなのでしゅ! 』
ホムラがヴォルの頭の上で堂々と宣言した。
番い………確か魂で結びつき自然と互いに惹かれ合う存在。
巡り会う確率はかなり低いけど、もし出会えたら幸せになれるとかいう話だけど。
それってヒヨコと魔族にも適用されるの?
たぶんヴォルもものすごく困っている。
今も頭の上にホムラを乗せたまま腕組みをして難しい顔をしているから。
それに気付いたホムラがヴォルの肩に移動し、そこからヴォルの顔を覗き込んでいる。
『ヴォ、ヴォルしゃんがこまってりゅ………。ご、ごめんなちゃい! こまりゃせたくにゃんてにゃいの〜』
ヴォルの難しい顔を見てホムラが泣き出した。
それを見たヴォルがオロオロしている。
「ま、待て。泣くなピヨ助。困っているというか、なんと言うか………魔族で番いが見つかった報告はここ最近全くないからちょっと戸惑っているだけだ。それに、そもそも種族が違いすぎると思うのだが? 」
『ちゅがいにしゅじょくはかんけいないのよ! ヴォルしゃんはホムラといてほわほわちたきもちにならなかったでしゅか? 』
「ほわほわ………まあ、微笑ましくはあるがな。ただそれが番いだからかどうかは正直わからんのだ」
うーん、ヴォルはいまいちわかっていないようだけど本当のところどうなんだろうね。
でもヴォルが見合いに乗り気でないのであればこれを理由にすれば良いのでは?
「ねえ、ヴォル。お見合いが嫌なら番いが見つかったかもしれないからという理由で断ればいいんじゃない?」
「おい、ちびっ子。さすがにピヨ助が番いと伝えても納得しないと思うぞ。前に精霊王様の娘との婚姻さえ認めなかった国だぞ。自分で言ってても情けない国だが」
あーそういえば、元々ホムラは精霊王様のお子様のアオボンがお詫びに持ってきてくれた卵から孵ったんだもんね。
なら余計、アオボンが持ってきてくれた卵から孵っているんだから国としては認めた方が良いのでは?
まあでも、一番はヴォルがホムラを番いと認めるかどうかなんだけどさ。
『ヒヨコがダメであるなら人化すれば良かろう? 』
なんでしないのだ? という感じでくーちゃんが言ってきた。
え? 人化って精霊だけでなく不死鳥とかも出来ちゃうの?
『ひとになったりゃ、ヴォルしゃんといっちょにいられりゅの?! しょれなりゃホムラひとになりゅ! 』
人化したらヴォルの番いになれると思ったホムラのテンションが爆上がりしている。
こんなに喜んでいるけど本当に人化出来るのかな?
そして人化したとしても果たしてヴォルがホムラを番いと分かるのかどうか………。
そんなことは微塵も考えていないホムラはキラキラした目でくーちゃんを見つめ、問いかけた。
『で、で、どうちたらひとになれるでしゅか? 』
『え? 気合いぞ』
気合いとの一言。
まさかの言葉にホムラも固まった。
気合いで出来たらみんな人になれちゃうよ?
「気合いって………ちなみにくーちゃんは出来るの? 」
『妾か? 妾は別に人になりたいとは思わんぞ。だから気合いでないぞ? 』
「え〜」
なんてことだ。
まあ、くーちゃんは思ったことを言っただけなんだろうけど………。
ホムラが固まったまま動かない。
希望が見えたと思ったら速攻消えちゃったからな〜。
どうしようかと思っていると視界の片隅でアピールしてくる子が。
カッパとマサムネだ。
『カッパーー! 』
『人化練習するぞ! 』
二人が妙にやる気だ。
不思議に思っているとモケゾウとフランが近付いてきて。
『主様〜あれはこの間人化失敗したから自分たちが練習したいんであります! 』
『モケ〜しょうがないモケから僕とフランが面倒見るモケよ〜』
「結局ホムラは人化出来そうなの?」
『モケ〜時間はかかるモケど、たぶん出来ると思うモケよ〜。気合いっていうのも別に間違っているわけではないモケ。そのぐらいの気持ちがないと人化なんて出来ないモケ〜』
それが聞こえたようでホムラが起動した。
『やりゅきならありましゅ! がんばりゅからよろちくおねがいちましゅ! 』
こうしてホムラの人化への修行が始まった。
それを見ていたヴォルがボソッと。
「このヴォルガノフ様が不死鳥になる訓練をすれば良いのだろうか? 」
いや、絶対そっちの方が不可能そうだよ。