第百八話 感動の再会?
ゴールドドラゴンが見せてきたのは、ピンクのヒラヒラする布だった。
ご丁寧に物体保存の術がかけられてある。
ふむふむ、ついでに色々な術もかけられているようだけど………うん! これ完全に私の術だ。
私はゴールドドラゴンの尻尾からゴールドドラゴンの顔へと視線を移した。
その顔がどこか不安そうに見える。
さっきまで大泣きしていたこともありその大きな目にはまだ涙が溜まっている。
「くーちゃん………なの? 」
『!! そ、そうじゃ! 妾はくーちゃんぞ! ゴールドドラゴンのクイーン! お前が付けてくれた名前ぞ? よもや妾のことを忘れてしまった………のか? グスッ』
喋っているうちにまた泣き出しそうになっている。
いや、まさかくーちゃんに会うとは………。
というか、私だってくーちゃんのことは覚えている。
覚えているからこそすぐに分からなかったんだ。
「くーちゃんのことはちゃんと覚えているよ! 」
『じゃ、じゃあ、何故妾のことを見ても何も言ってくれなかったのじゃ! 』
「だって………くーちゃん絶対前より大きくなってるでしょ!? 倍はあるよ! 」
『確かに少しは大きくなったやもしれんが………それよりもお前が縮んだからではないのか?! 』
あ……確かに今の私は可愛らしい子リスだわ。
「えっと、なんかごめんね? 」
『グスッ………そのテキトーな感じ変わらないな』
私の言葉に懐かしむような顔をして鼻をすすっている。
いや、ほんとごめんよ。
私の記憶にあるくーちゃんはもっと小さかったんだよ、ドラゴンだからそれなりに大きかったけどここまでは絶対育ってなかったはず………。
『モケ〜主〜、あの布、なんか術式盛りだくさんに見えるモケど、たぶんすくすく育て〜みたいなの入ってないモケか? 』
え?
私ももう一度くーちゃんにあげた布を見てみた。
…………ふむ、入っていますな。
なんなら美肌、温度快適、病気治癒、何でもかんでも好きに突っ込んだ感じだね。
あれ? もしかして私のせいでしたか?
『モケ〜、完全に主のせいモケね〜』
なんてことでしょう。
………でも、くーちゃんが元気に過ごせたなら良かったよね?
『これは妾の宝物じゃ。お前が居なくなってから何年経ったか分からぬが、その間にこの布の価値に気付いた不届きものが何度か、これを奪いに来ようとしたが全て返り討ちにしてやったぞ! 妾の宝物を奪うなんぞ、不届き千万ぞ! 』
この言葉に何故かモケゾウが激しくうなずいている。
どこから出したのか私がモケゾウにあげた赤いハンカチ、モケゾウが装着するとマント仕様をくーちゃんに見せて何か説明している。
それを聞いたくーちゃんも何故かしきりにうなずいている。
ところで、ドラゴンがくーちゃんだったということは脅威は去ったってことだよね?
あ、でもくーちゃんこのままここに住むのかな?
「くーちゃん! くーちゃんはここに住むの? 」
『…………妾はお前と一緒が良いぞ。また勝手に居なくなられたら困るぞ』
「うーん、一緒にか〜。くーちゃん大きいからな〜さすがにうちに連れて行ったら怒られるよね」
『い、イヤじゃ………大きいのがダメなら小さくなればついて行って良いのか? 』
そう言うとくーちゃんが光り出した。
そして現れたのは私の手に乗るくらいの大きさの小さいドラゴン。
『これでどうぞ? これならどこでも一緒に行けるぞ! 小さくても妾は強いからな、お前のことを守ってあげるぞ』
そう言うとくーちゃんは小さな背中の羽をパタパタと動かし私の頭の上に乗った。
こうしてドタバタの実戦訓練は幕を閉じた。
最近思うことがある。
何故か私の近くに過剰とも取れる戦力が集まっていませんか?と。
モケゾウたち上級精霊、聖獣であるトナトナ、魔族のヴォル、たぶん不死鳥のホムラ、ゴールドドラゴンのくーちゃん、それに殿下やリズ………果たして私は何と戦おうとしているんだろうか?
たぶんそれぞれ単独でも国とかと戦えそうな戦力なのだが………。
なのだが、今その戦力たちがうちの庭で集まって何やらワイワイ騒いでいる。
「こら! お前たちまだ焼けていないんだから開けるな! 」
ヴォルがみんなを叱っているようだ。
見ると何故か庭で焼き芋を作っている様子。
火の調整はヴォルに抱っこされているホムラが担当しているらしい。
えっと、不死鳥の炎を焼き芋に使って良いの?
あ、火の中にトナトナがイワシを入れた。
………うん、ヴォルが激怒している。
それを見ていたみんなも思い思い好きなものを入れ始めた。
どんな状況なのこれ?
何故か当たり前のようにいる殿下がこちらにやって来た。
「フローラ嬢、いろいろ焼けているようですよ? 一緒に見にいきましょう」
殿下にエスコート?されて近付けばヴォルがキレまくっている。
まあ、せっかく頑張って焼いていたのに、イワシやらきゅうりやら入れられたらたまったものじゃないよね。
………うん、平和だ。