第十話 許さないよ!
私のドヤ顔をみんなが目を見開いて見つめてくる。
あ、ちょっと、殿下の眼差しは熱すぎます、焦げます。
「こっ、こっ、こっ、こっ」
ん? ニワトリの真似ですか?
陛下が『こっ』しか言わない。
「これで私達が、何もしていないことがわかってもらえたでしょうか? 」
「いや、確かにその件は何もしていないことはよ〜〜〜くわかった。………それよりだ!こっ、こっ、この魔道具は一体!? 前に遠く東方の国にこれに似た魔道具があると聞いたことがあるが、確かとても貴重なもので作り手が限られるとか………」
ほほう、貴重な魔道具と?
まあ、確かにこんなの趣味で作ってたの私ぐらいだしな〜
もしかしたらその遠い東方の国って、私の前世住んでた所だったり………なーんて、そんな偶然あるわけないか。
しかし、この魔道具のことはなんて言おうかな〜
「この魔道具は本日、陛下に献上しようとお持ちしたものです。このようなことになるとは思いませんでしたが、ちょうど効果をお見せできて良かったです」
私はニッコリ笑って陛下に伝えた。
「そ、それは有難いが………そうじゃなくて!そんな貴重な魔道具を何故ベルンハルト子爵は持っていたんだ? 今は東方の国と交易を行っている商人はこの国にはいないはず………」
陛下の質問に、父が困った顔をして私をみてきた。
ごめん、父、ちょっと嘘つきます!
「それはこの間、私が屋敷の中の隠し扉の中から見つけたんです。とても面白い魔道具だったので、せっかくなら陛下方にお渡ししたくて持ってきてしまいました。………いらなかったですか? 」
最後はキュルルンというお目目で陛下方を見つめてみた。
「グフっ! な、なんていう破壊力………。そんな目で見られたら俺は………」
殿下が両手をワキワキさせながら私の方へ来ようとしている………のを陛下が殿下の頭を片手で持って止めた。
ちょ、陛下!力持ち!
「落ち着け、リース。興奮する気持ちはわかるのだが、たぶん興奮するポイントがズレている。確かにフローラ嬢は愛らしい………が、今は正直それどころじゃないぞ。って、王妃お前もか?! こら、フローラ嬢ににじり寄るんじゃない! 一旦席につけ、二人とも! 」
陛下忙しいっすね。
でも、助かります!
「本当は綺麗な景色などを映して楽しんでもらおうと思っていたのですが………こんなことになってしまい申し訳ありません。でも、侍女の方達があまりにも………アレだったので………」
ふっ、私だって演技が出来るのだ!
ちょっと悲しそうな顔だってお手の物さ。
………あ、父と母が悲しそうな顔をしている! ご、ごめんなさい二人を悲しませたいわけじゃないんです、ちょっとおイタが過ぎる侍女ズを懲らしめたかっただけなんです!
「そうだな、それについては全面的にこちらの不備だ。アレはない。この者たちはどこの所属だ? 」
陛下の言葉に王妃様が
「も、申し訳ありません………この者たちは私の世話を主にしている者たちです。何故このようなことを………私の管理不足ですわ。子爵という爵位を馬鹿にするなんて………」
王妃様が悲痛な声で陛下と私達に向けて謝罪されている。
この状況を見てどう感じるんだ?侍女ズ?!
と横目で侍女ズを見てみれば………あ、こいつら反省してないや。
物凄い形相で私のことを睨んできてた………ほんと懲りないね。
なんで自分たちの罪が明るみになったと思っているんだ?
「どうする王妃よ。この者たちを」
「何故このようなことをしたかは確実に問い詰めます! ひとまず何よりも心よりの謝罪を子爵家の方々へ。さあ!貴方達! 」
王妃様に促された侍女ズは、いかにも反省しているという風で
「も、申し訳ありませんでした………ひっく、うっ、うっ………」
うむ、見事な演技力。
しかし残念ながら見逃してはあげないよ。
だって、父と母を蔑ろにしたんだもん。
「……………あの〜、謝りたくないなら謝らなくて良いですよ? 」
私の言葉に陛下と王妃様は不思議そうな顔をしている。
ちなみに殿下はずっと私をロックオンしているんだが………いや、そろそろ本当に焦げるって。
そして侍女ズはいかにも悲しい、私達傷付いてますわ!っていう顔をしながら
「わ、私達の謝罪には価値がないのですね………」
とか言っちゃってる。
うん、そんな謝罪に価値はないけどね。
なんで被害者ヅラしてんだか………アホか。
「そうですね。そんな気持ちの全く入っていない謝罪は価値がないですね」
私のキッパリした拒絶にみんな唖然としている。
見た目可愛い私が許すとでも思っていましたか?
前世、やられたら十倍にして返せを地でやっていたこの元英雄の私が?
「そんな………気持ちが入っていないなんてどうしてわかるんですか? !」
「だって、さっき王妃様が謝罪されていた時、私のことを睨んでいたじゃないですか? そんな方に謝られても信じられるわけないですわ」
「な、何をおっしゃっているのですか? 私達がそのようなことをする訳がないじゃないですか! 」
いや、しているから言っているの。
もうイイや、認めないとは思っていたし。
私は胸元のペンダントに触れて、さっきの侍女ズの表情を壁一面に出してみた。
ちゃんと音声も入っているからどの場面でこの表情をしていたかバッチリ分かりますよ。