第九話 やってやるよ!
オンナの闘い………それは前世で憧れていた闘いだ。
拳を用いない、己の言葉、態度で優劣を決める優雅な世界………とか思っていたんだよね〜
………でも、今回のこれは嫌がらせだよね?
やだなぁ〜、もっと高度なやり取りするのかと思っていたのに。
こんなの騎士団の新人イジメと大差ない。
まあ、そのイジメは私が発見次第いじめていた奴をひん剥いてロープでグルグル巻きのうえ訓練場にさらしておいた。
文句を言ってきたけど、証拠を持っていたので見せたら逃げ帰って行った。
………そう、証拠。
やっぱり証拠って大事だよね?
さて、とりあえず事実を陛下達に述べてみたけど………
どうでるかな?
「い、一時間前に来ていたとは真か? いや、フローラ嬢が嘘をついているとは思わないのだが、こちらに着いた連絡がきたのがついさっきで………」
「そ、それからお茶もいらないとキッパリ言われたって………まさか、一時間も待たせてお茶も出さないなんて………」
陛下と王妃様は若干顔色が悪い。
まあ、いくら下位貴族だからといってそんな扱いお城でするなんて、『常識的』にダメだよね〜
「たぶん今日は皆様が忙しいと思いまして、ここで待っておりました。ちなみに案内してくれたのはそちらにいらっしゃる侍女の方です」
思いっきり振ってみる。
やだなぁ〜、嫌なことされたら仕返しされても文句言えないんだよ?
侍女ズは『なんで、話を振ってくるのよぅ!!』という顔で私を見てくる。
むしろなんでチクられないと思った?
もしかして下位貴族に発言権がないとでも?
元『英雄』の私に怖いものなどないわ!
「貴方達、今の話は本当なの?どうしてそのようなことを………」
王妃様が侍女ズに問いかける。
さて、なんて言い訳するのかな?
私の予想では『そ、そんな、わ、私達は先程この部屋にご案内致しましたし、お茶についても本当に不要なのかお聞き致しました! けれど、子爵家の方々がいらないと仰せられて………』って感じかな?
「そ、そんな、わ、私達は先程この部屋に案内致しましたし、お茶についても本当に不要なのかお聞き致しました!けれど、子爵家の方々がいらないと仰せられて………」
す、スゴイ!
一言一句予想通りに言った!
しかも演技力もあるのか………なかなか良い感じに涙目で王妃様に訴えている。
しっかし、なんかこの侍女ズは手慣れてないかい?
もしかしたらこんな感じのこと何回もやっているのでは………。
「う、うむ。これは一体どういうことだ。どちらかが嘘をついているということだが………」
侍女ズはたぶん、他にも協力者がいるんだろうな。
そうでなかったらこんなすぐにバレそうな嘘つかんだろうし。
「父上、俺の天使が嘘をつくはずないですよ。なんでこのもの達を信じるのですか? 」
いや、まあ、嘘をついているのは侍女ズだけどそんなに簡単に私のことを信じられるのも困ると言いますか、なんと言いますか。
殿下、そんな熱い眼差しで見ないで下さい。
焦げます。
「そ、そんな殿下………。お、王妃様、私達………ひ、ひっく………」
あーあ、泣いたよ。
何してるんだか。
あれか、もしかして王妃様が可愛いものが好きだからそんな庇護欲を唆る方法を取っているのか?
確かに見た目は下位貴族同様小柄、耳や尻尾がないだけか。
ここは私も対抗して、むしろ尻尾の可愛さがある分私の勝ちだけど同じことをやるべきか………。
ん〜〜〜無理だな。
それは私が求める可愛さではない!
このまま続けても何も良いことはないだろうから、そろそろアレ出すか。
「あの、ちょっと壁をお借りしても良いですか? 」
私の突然の申し出にみんな『???』と、何言ってるのかな?状態になっている。
どれ、説明するのもいろいろ面倒くさいからとにかくやってみよう!
私は席を立ち、テクテクと壁の近くに歩いて行った。
そこで取り出すは事前準備していた手作りのペンダント。
それを壁に向けて魔力を込めれば………あら不思議一時間前にこの部屋で起こった事が壁に投影された。
みんな何が起こっているのかわからないようだ。
ふむ、どれどれ本当は映像だけ撮れるものなのだがそこはフローラちゃんがちょっと頑張っちゃった。
なんと音声もとれちゃってるんです。
『本来であればこの部屋は、王族の方々や他国の王族の方々をもてなす由緒正しい特別な部屋なのです。間違っても、子爵家の方々がお使いになれる部屋ではございません』
『はっきり言って今回の対応は異例中の異例です。伯爵家や侯爵家の方でさえこの部屋を使用されたことはありません。こう言ってはなんですが、どうして皆様のような子爵家の方をこの部屋に通すのか不思議でしょうがありません』
バッチリしっかり映像、音声撮れてるね!
ちゃんとね、侍女ズがお茶も出さずに出て行くところも、何より………この部屋の立派な時計、これをね、しっかり映してましたよ。
これは偶然映ってたんだけどラッキーですわ。
さあ、どうですか?証拠になりませんか?