第九十四話 変化の兆し?
Aクラスの話題の人、ダイン様のおかげで、レオナ姫が来てからも私の平和は守られている。
もちろんその平和は、モケゾウ達が裏でいろいろしてくれていることによっても守られている。
『フラン、昨日のやつはどうしたモケ? 』
『あー、あの気持ち悪いやつでありますね? ちゃんとオハナシしたら分かってくれたであります! 今後は主様を気持ち悪い目で見てくることはないであります! 』
『モケ、よくやったモケ〜。そういえばトナトナは最近どうモケ? なんか気になるものとかあったモケか? 』
『え? ぼく? うーんっと、…………あ! そういえば、なんか学校の中に変な召喚陣作ろうとしていた集団がいたから、えいって突撃して、作成途中だった召喚陣は念入りにぼくがフミフミしておいたよ〜。たぶん学校の生徒にも先生にも見えなかったし、召喚陣は怪しい雰囲気バリバリだったから、ちょっと離れた山に捨てて来たトナ〜』
『………モケ。トナトナはそれで良いモケ〜。これからも散歩よろしくモケ』
『へへ、任せてトナ〜』
………うん、みんな日々頑張ってくれている。
かなり突っ込みたい部分もあるけど、薮蛇になりそうだからやめておこう。
ただ、トナトナが言うちょっと離れた山はどの辺りなのかな?
私がそんなことを考えているとトナトナが。
『主ちゃん、心配しなくても大丈夫だよー。たぶん一年ぐらいは帰って来れない距離だから〜』
「あ、一年帰って来れない距離なんだ………」
ちょっとがかなりだった。
そして最近のレオナ姫と言えば………。
「リース様、この問題なんですけど教え……」
「レオナさん、その問題は昨日私が三時間かけて教えてあげた問題ではないですか? ………そうですか、まだ理解していなかったのですね? 運の良いことに今日は昨日以上に時間が取れますので、レオナさんがしっかり理解するまでお付き合いできますよ。さあ、時間は有限です。早速勉強を始めましょう」
レオナ姫が懲りずに殿下にちょっかいをかけようとしたら、何処からともなくダイン様が回収していく。
毎日毎日、よくも出来るものだ。
私が妙になことに感心していると、ビビ様とナターシャ様、それからリズがコソコソと話し出した。
「今の見ましたか?」
「ええ、見たわ」
「私も気付きました」
うん? みんな何に気付いたの?
私が首を傾げながらいつものヴォルのオヤツを頬張っていると、みんなは私をニコニコ見ながら。
「フローラ様、レオナ姫の視線をよく追ってみて下さい。きっと明日も同じようなことになるでしょうから」
ビビ様がそう言って私の頭を撫でようとしたが、それはポンっと現れたモケゾウがサラッと弾いた。
「もう! ちょっとぐらい良いではないですか! 」
『ダメモケ〜。主は今大事なオヤツタイムモケ〜。特にクマはちょっとと言って撫で回そうとするからダメモケ』
モケゾウがそう言いながら、ヴォルのオヤツ袋から一枚クッキーを取り出して私の口元に持ってきた。
『はい、主〜、あーんモケ〜』
私はそのまま口を開けてクッキーをモグモグ。
相変わらずヴォルの作るクッキーは絶品だ。
そして私とモケゾウのやり取りを見た周りの反応はいろいろで。
「ズルイですわーー!」とビビ様。
「モケゾウ様、羨ましいです」と殿下。
そしてクラスのみんなは。
「あ〜、これがあるから勉強頑張れるわ! Aクラスを意地でも死守しないと! 」
「この光景を絵に残したい! 今からでも美術を極めるか………」
「私も精霊様にあーん、されたい!」
などと、これもAクラスの日常だ。
何故か最近Aクラスの成績が爆発的に上がったり、他の分野に秀でた人が出て来ていると先生方からお礼を言われることが増えたんだけど、別に私は関係ないよね?
まあ、みんなのやる気が上がっているなら良いことだとは思うけど。
次の日。
昨日みんなに言われたから今日はレオナ姫の視線を見てみることにした。
「リース様、今度の魔術の授業のことで………」
殿下に話しかけているレオナ姫だが………あれ?
なんか視線は殿下ではなくちょっと離れたところを見ているような?
そして、今ちょっと微笑んだ。
するとすぐに。
「レオナさん、今度の魔術の授業は私と組むことが決まっていますよ。さあ、そのことでいろいろ準備があります。これからしますので、あなたも手伝って下さい」
そう言っていつものようにレオナ姫をダイン様が回収していったけど、あれって………。
「フローラ様もお気付きになりましたか? 」
そう言ってビビ様が話しかけてきた。
お気付きって言うか、もしかしてだけど………。
「レオナ姫は、ダイン様が迎えに来てくれるのを待っているんですか? 」
「そう見えますわ。この場合リース殿下は完全に当て馬に………ふふ」
ビビ様はそう言って笑っている。
ちなみにそれを聞いていた殿下は微妙な表情だけどね。