第九十一話 クラスはどこかな?
さて、どうやらシルフィード国のお姫様が到着したようです。
本来であればお姫様ですし、滞在場所は王城になるのが普通なのでしょうが、館長様に無理やり付いて来て、しかも学校にも無理やり入学となれば快く王城にご招待など出来るわけもなく………。
「………それで、今は館長様が見つけたお屋敷に仮住まいなのね? 」
私の目の前でモケゾウがウンウンと頷いている。
どうやらモケゾウ達はすっかりシルフィード国のお姫様を警戒対象者に認定したようで、野良精霊を駆使して情報を集めているようだ。
『モケ〜、一応館長にとったら孫モケから、見捨てるわけにもいかずにそこに置いているみたいモケ〜』
「あらら、館長様も休まらないわね」
『あの姫はすぐに学校に行けると思っていたようモケど、明日試験があるみたいモケよ〜』
「編入試験ね。同じクラスになるのかしら」
『………頭悪そうモケから、きっと違うクラスモケ。でももし、主と同じクラスにやって来たら、第一警戒態勢に入るモケ』
………どんな警戒態勢がしかれるんだろう?
『安心安全な生活をお約束するモケ〜』
何だろ、きっと私は安心安全に過ごせるんだろうけど、周りへの被害が拡大しそうなこの予感。
「えっと、モケゾウ。ほどほどにね? 」
『………わかったモケ〜』
その間は何かしら?
モケゾウ、信じているからね!
………数日後。
「さて、どうしましょうか? 」
今この場にいるのは学園長のルルル、、陛下、宰相、そして図書館館長のマリウスだ。
「何というか、思っていた通りの結果だな」と陛下。
「はあ〜、本当に面目ない。ここまでとは………」と、若干涙目の館長。
「結果を見る限り良くてBクラスにギリギリついて行けるかレベルでしょうな」と、追い打ちをかける宰相。
「久しぶりに会えたメンバーでの会話がこれでは残念ですけど、きっちり決めないと子供達に迷惑がかかってしまいますからね。本当ならお帰りいただくのが一番なのでしょうけど、学校は、入りたいという人を追い返すことはしませんから」
「ああ、わかっているよ、ルルル先生。私たちの学生時代もどんな問題児でも受け入れてくれていたからね。まあ、今回はシルフィード国も何も言えないだろ? いろいろやらかし過ぎているからな」
「もちろん、何があったって文句なんて言わせないさ! 僕が言える立場じゃないけど、絶対に文句なんて言わせないさ! ………と言っても、一番文句を言いそうなのがうちの孫だけど」と、また涙目の館長。
「孫と言ってもあなたが国を出てから生まれた子で、会ったことも本当に小さい頃に一度きりなのでしょう? 国としてはなんとかしろとは思いますが、友人であるあなたにそんなこと言いませんよ」珍しく優しい言葉をかける宰相。
「私、一つ考えている案があるのだけど………」
ルルルの言葉に三人が耳を傾ける。
「あのね、ここでBクラスに入ってもらっても、マリウスに無理やりくっ付いてくる行動力を見る限り、絶対にAクラスに突撃すると思うの」
ルルルの言葉に三人とも引きつった顔で頷いている。
「それでね、いっそのことAクラスで自分の実力がどの程度なのか分からせつつ、リース殿下とフローラさんの様子を近くで、自分の目で確かめれば良いと思うのよ。フローラさんが幼いことは知っているけれど、あの子は普通の六歳児ではないでしょう? 」
ルルルの言葉にそっと目をそらす陛下と宰相。
「別に正体を無理やり聞き出したいわけではないわ。見ていれば分かるもの。それに何かが起こる前にあの鉄壁の守りが発動するでしょ? ね、精霊様? 」
『…………僕がいるってよくわかったモケね〜』そう言いながら姿を現すモケゾウ。
「あらあら、あまり隠す気は無かったように思いますけど? 」
『そうモケね、別に気付かれても良いとは思っていたモケ〜。でも、実際気付くなんてなかなかの実力モケね〜』
「ふふ、お褒めに預かり光栄ですわ。それで、精霊様はシルフィード国のお姫様がAクラスに入ってもよろしいですか? 」
『別に僕の許可なんて必要ないモケ〜。ただし、何かしてきたら………絶対してくると思うモケど、その時は………わかっているモケね? 』
「はい、そこは大丈夫ですわ。入学時に説明した上で誓約書にもサインしてもらいますからね。それでも何かするのであれば自己責任でということにしますので」
『僕は主に害がなければどうだって良いモケ。主が楽しければそいつの相手だってしたって良いと思ってるモケ。でも、少しでも不快な思いをさせるモケなら………容赦はしないモケ』
こうして、シルフィード国のお姫様こと、レオナ・フォン・シルフィードのAクラス入りが決まった。