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第5章:歯科矯正具をつけた美少女に僕は別に興奮したりしない(第3話)

「お、おいおい、屋外でやるのか?」

「みんな同じことを言いますね。まあ、気持ちは解りますよ、ミドルトンさん。今日はギャラリーが多いので、ちゃんと手順を説明しながらやっていこうと思います。あ、紹介します。こちらの少女はターコネルさん。鍛冶屋ギルド所属の錬金術師で、今回の歯科治療において重要人物の一人です」

「た、た、ターコネルです。おね、おね、お願いします」

「よろしく。…言葉に不自由があるのか?」

「聞き取りづらいですか? でも、吃音は本人がどうこうするというよりも、周りが理解をすべき発音特徴ですよ」

「ああ…承知している。いや、むしろ、私はこの立場で、色々な人材を見てきて、何かしら特徴的な不自由がある人間は、とある一面で異様に秀でている場合があるから、私としては、そのような人材に注目している」

(なるほど。とは言え、サヴァン症候群やギフテッドの能力を持つ人物は、障碍を持つ人でもほんの一握りだ…。確かに、ターコネルさんの知能はギフテッドに相当する可能性がある…)

「ターコネルさん、キルベガンさん、ギルド長さん、紹介します。こちらが、ミドルトンさんと、その娘さんのカネマラさんです。あと、こちらが床屋のクーリーさん」

「ちょっとちょっと奴隷くん、腕利きの、を付けるのを忘れてるじゃん」

「それは失敬。でも、クーリーさんには、このあともっと腕利きになって頂くことになるでしょうから」

「なになに? 気になるじゃんかよ。それに、カネマラの抜歯はあたしがやるって決めてるんだからさあ…」

「クーリー、それは遠慮しておくわ…」

「まあまあ。とりあえずは、ターコネルさんのワイヤー取替を皆さんにお見せしてから、お話しますよ。カネマラさんは、特によく見ていて下さいね。近々、同じような治療をあなたにもする事になるでしょうから」

「え、ええ…。ありがとう。よく見ておくわ…。それにしても、凄い機械を歯に当てているのね…」

「見た目は確かに良くないかもしれないですね。多くの人が矯正をして、この姿が一般的になれば、気にならないと思いますけどね…」

「ううん。わたしも気にせず、頑張ろうと思う。ターコネルさんだって頑張っているのだし、外出する時は扇子を使えばいいしね」

「わ、わた、わたしは、こ、この矯正具、き、き、気に入ってるんですけど…」

「はは、気に入ってるんだ。それはいいですね。ある意味、ターコネルさんらしいや」

「うふふ。流行ファッションにするためには、王妃さまにもつけて頂かないと駄目かもしれないわね」

「ああ。ギルドとしても、ぜひ流行らせて欲しいものだ。自分はこの奴隷氏の治療器具に、かなりの投資をしてしまったからな」

「感謝申し上げますよ、ギルド長さん」

「おら、兄ちゃん、グズグズしてると、空が曇ってきちまうぞ? はやく治療を進めたらどうだ?」

「おっと、そうですね。じゃあ、ターコネルさん、長椅子に横になって…。口を開けてもらっていいですか? そうそう。う~ん、やはりちゃんとした歯ブラシがないと、ワイヤーやブラケットに食べかすが残りますね…。あまり放置したくないな。これが要因で齲蝕してしまっても困るしなあ…。それと…若干の色素沈着がありますね。あれ? もしかして、ターコネルさん、結構お酒飲まれます?」

「ん? なんだって? 嬢ちゃんが酒飲み? おい、あんた歳はいくつなんだ?」

「は、は、恥ずかしいです…。そ、そう、そうですね。かじ、果実酒を、しょ、少々…」

(意外だけど、少々という量ではこの短期間でここまで色素沈着は起きない気がする)

「そうか、理解しましたよターコネルさん。歯並びはさておき、虫歯が少ないと思ったんですが、ターコネルさんは甘いものが苦手なんですね」

「なんだと? 甘いものが苦手な人間が、この世界に存在するのか?」

「ギルド長さん、酒豪の人は、大抵、甘いものが苦手ですよ」

「は、は、はい…。わた、わたしは甘いものは、あ、あまり食べないですね…。おさ、お酒は、好きです…はずかしいな」

「だからワインを蒸留してアルコール濃度を高めるなんて事を思いついたんですね」

「あ、あく、あく、アクア・ヴィテは、い、飲料では、な、ない、ないですけど…つよ、強すぎて…」

「歯科治療が一段落したら、今度はターコネルさんと組んでウィスキーかブランデーの醸造所でも作りますか。さて、じゃあ、ワイヤーを外して行きますよ…。あ、キルベガンさん、僕が指示したら、長椅子を持ち上げて、回転させてくださいね。陽の光が差し込む向きに」

「おうよ。今回はブラケットを外さないだろ? 俺の役割はそんなだと思ったよ」

「よし、ワイヤーを外しました。ブラシがないので、スケーラーとかで簡単に掃除だけしておきますか…。あ、カネマラさん、このブラケットという小さな部品はキルベガンさんのスキルで固定させています。歯科矯正の理屈は簡単で、このブラケットという固定子とワイヤーで歯を締め上げて、正しい位置に持っていくんです」

「…なんだか、痛そうね…」

「そ、そん、そんな事はありませんでしたよ。は、はじ、はじめの数日は少し違和感がありましたけれど、すぐ、すぐに慣れました」

「ただ、カネマラさんの場合は、この矯正をする前に、虫歯の治療が必要になりますから、まずはそれからですね。…じゃあ、ワイヤー取り替えていきますね。口を開けていてください」

「ああ…ん」

「よし…。順番にやっていきますよ」

「そういえば奴隷氏よ。このタイミングで話すのはなんだが、件のドリルが完成したぞ」

「おお、素晴らしい。ぜひ、後で見せて下さい。動きはどうですか?」

「悪くないと思うが、お前は口うるさいからな…。お前の目で確かめて判断してくれ」

「ええ、そうさせていただきますよ。これで、虫歯の治療ができるようになるし、歯ブラシも作れるようになるかもしれない。少なくとも、僕の患者の分は歯ブラシをちゃんと作ってあげたいですね」

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