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個人的お気に入り

マシュマリン・ポップ

さすってみて               裂いてみて


サラッサラの表面             サラッサラの表面


あったかい雪               中身は

                      

みたいでしょ               もうこんなに濡れてるよ



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


中年の刑事さんが唸る

  「うーん、どういうことだ」



少年の探偵さんが答える

  「そんなに焦らなくても事件は解決しますよ」



      にっこり、にっこり


      世界はまわる





 9月15日未明

 事件は起こった

 被害者Aさん(51歳無職)さんが大切にしていた真っ白なマシュマロが

 ブラックコーヒーの中に浮いていたのだ


 無惨にもマシュマロは溶けていた

 体は泡のようにちぎれていた



Aさんは語る

  「私のマシュマロは中身が赤いんです。血のような赤です。外から中に向かって徐々に赤くなって行くので、外からは赤は透けて見えません。外から見ると、純白なんです」


中年の刑事が聞いた

  「イチジクのようにですか?」


Aさんは事情徴収に答えた

  「イチジクは純白ではありませんよ」


  「すみません……」

中年の刑事は謝った


Aさんは可哀想だと思ったのか、

  「いえ。しかし、純白なイチジクがもしあったなら、私のマシュマロに似ているでしょうね。純白な外側から、中へ向かって行くほどに、徐々に、徐々に、赤くなって行くイチジクだ」


少年の探偵が口を挟んだ

  「それがブラックコーヒーの中に浮いていた。それは溶けた。きっと、だんだんと赤い血が広がるように」


中年の刑事が感想を述べた

  「想像してみるとなんかエロいな」


少年の探偵はうなずいた

  「まるで黒人の大男に、白人の少女が包み込まれ、溶けて行くようなエロさですよね。少女は推定13歳です。大男は彼女を抱き、渦を巻くように彼女を動かし、やがて彼女は真っ赤になって、花びらを巻き散らすように溶けたんだ」


  「うっ……!?」


  「どうしたんですか、刑事さん?」


  「ちょっとズボンの前が固くなってしまってね」


  「まさか……。ちょっと見せてください」

それを目にした少年の探偵は、一大事のように叫んだ。

  「これは……!

   ちんちん勃起症候群だ!」



【ちんちん勃起症候群とは】


 それは成長した男性のみならず、男ならば赤ん坊でも罹りうる病気である。普段は羊の皮をかぶっているおちんちんが、外界からの刺激を受けると発作を起こし、皮をめくって亀の頭をした狼が姿を現す。こうなると手がつけられない。なんとか狼を優しく愛撫して収めてあげないと、おちんちんの主は気が狂ってしまうのである。



  「大変だ! なんとかして収めてあげないと……!」


 少年はきょろきょろと辺りを見回し、中年刑事のおちんちんを愛撫できるものを探した


 草むらの陰にマシュマロが隠れているのを見つけた

 ピンク色のそのマシュマロは、空気に触れているのにとても柔らかそうだった


  「君、中年刑事さんを愛撫してくれるかい?」


 少年が聞くと、マシュマロは嫌そうに首を振った


  「あなたがしてあげたらいいじゃない。

   あなたならきっと気持ちの悪いことにはならないはずよ。

   口紅さしたらまっキラキラのお化粧施してね。

   星がきらめくほどの美少女になれるはずよ」


 一時間メイクして、振り返った少年を見て、中年刑事は言った


  「もう、収まったよ」


  「せっかく美少女になったのに……」


  「しかし女の子の出て来ない世界だな。これまでに登場したといえば、マシュマロ、Aさん(51歳無職)、俺、そして気持ちの悪い君だけだ」


  「泣きそうになります」



 その時、ブラックコーヒーの上に浮いていたマシュマロが、完全に溶け、黒をミルク色に変えきろうとしていた



 ピンク色のほうのマシュマロが、それを見送りながら、弔辞を贈るように、呟いた


  「ましゅまりん・ぽー……」


  「なんだって?」


中年刑事がそれを聞いて、言った


少年探偵も、女装をしたまた、言った 

  「なんて言ったんだ?」


ピンク色のほうのマシュマロはもう一度、今度はみんなに聞こえるほどの声で、言った

  「ましゅまりん・ぽー」


  「ましゅまりん・ぽー……」

放心した顔でAさん(51歳無職)がそのことばを繰り返した


  「ましゅまりん・ぽー……」

中年刑事もうわごとのように繰り返した


  「ましゅまりん・ぽー……」

少年探偵も口紅をつけた口で繰り返した


  「ましゅまりん・ぽー……」

  「ましゅまりん・ぽー……」

  「ましゅまりん・ぽー……」



 マシュマロのように白い太陽がだんだんと東の空から昇りはじめた



    世界はにっこり、にっこり


    まわりつづけた



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